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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第7部 第1章 塔のあれこれ(その15)
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(13)加護の影響

 くつろぎスペースでだらけていた考助は、珍しく管理層に姿を現したとある人物を見て目を丸くした。

「あれ? ハク、どうしたの?」

「う、うん。ちょっとね」

 そう答えたハクは、何かを探すようにきょろきょろとしていた。

 何かを探しているのかと聞こうとした考助だったが、すぐに何を探していたのかが分かった。

 表情の変化に乏しいハクだが、わずかに笑顔がこぼれたのだ。

 その視線の先には、ちょうど管理層へとやってきたルカがいた。

「ああ、ルカ。今日は、仕事は休み?」

「あ、うん。せっかくだからハクと遊ぼうと思って・・・・・・」

 微妙に歯切れの悪いルカだったが、考助は気付かなかったふりをしながら頷いた。

「そう。まあ、ハクが一緒なら特に何もないと思うけれど、あまり危ないことはしないようにね」

「わかってるよ」

 考助の言葉にわずかにホッとした表情を見せたルカは、すぐにハクの手を取って転移門のある部屋へと取って返した。

 

 はたから見ていれば何ともくすぐったい様子のふたりを見送った考助は、思わずその場でぽつりとつぶやいた。

「・・・・・・若いねえ」

「何を言うのですか。コウスケさんだって、十分に若いですよ」

 考助の言葉を聞きとがめたシルヴィアが、小さく笑いながらそう言ってきた。

 ハクとルカの様子は、シルヴィアもばっちり見ていたようだった。

「うん、ありがとう。まあ、でも何か、気分的にというか、ね。来年には、もうおじいちゃんになっているわけだし」

 トワとダニエラの子供が無事に生まれてくれば、考助もついに祖父ということになる。

 すでに考助がこの世界に来てから、二十年以上が経っている。

 見た目や実態はともかくとして、年だけで考えれば、若いとは言えない環境にはなっているのだ。

 

 考助の言葉に何か言おうとしたシルヴィアだったが、考助の後ろから近づく人物に気付いて止めた。

 そして、その人物フローリアは、考助の背後からぬっと腕を伸ばして、考助の頭を自分の胸元へと引き寄せた。

「それは、何か? 私も若くないと言っているのかな?」

 考助がおじいちゃんなら、フローリアは間違いなくおばあちゃんになる。

 フローリアの口調も表情も楽しそうなことから怒っていないことは考助にもすぐにわかったが、首を左右に振った。

「いや、まさか、とんでもない! フローリアは、今もあったときからまったく変わっていないよ」

 美人だ、と実際に口に出すのはためらわれるので、微妙に濁して言った考助だったが、フローリアにはしっかり伝わったようだった。

「そうか、それはうれしいな」

 フローリアは、相変わらず考助を抱きしめながら、笑みを浮かべた。

 

 その様子を横で見ていたシルヴィアが、珍しいことに参戦してきた。

「あら。コウスケさん、私はどうなんですか?」

「うえっ!? 勿論、シルヴィアだって今も昔も変わっていないよ!」

「そうですか」

 それだけの答えで満足したのか、シルヴィアも頷きながら小さく微笑みながら右腕を組んできた。

 くつろぎスペースではいちゃいちゃ禁止のルールは未だに生きているのだが、ミツキを除けば、今はフローリアとシルヴィアしかいない。

 ふたりは、抗議する人もいないため、久しぶりに存分に考助といちゃつくのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 存分にいちゃついて満足したのか、十数分後にはフローリアもシルヴィアも考助から離れた。

 そして、組んでいた腕を離したシルヴィアに、考助が気になっていたことを聞いた。

「そういえば、何か聞きたいことでもあったんじゃないの?」

 考助は、フローリアが参戦してくる前に、何か言いたそうにしていたことを思いだしたのだ。

 少しだけ目を見開いて驚きを示したシルヴィアは、少しだけまじめな表情になった。

「はい。コウスケ様がどうお考えなのか、聞きたいことがあったのです」

 シルヴィアが考助を「様」付けで呼ぶときは、決まって現人神としての意見を求めているときだ。

 考助も気を引き締めて、シルヴィアの話を聞く態勢になった。

「うん。何?」

「以前にもお話ししましたが、コウスケ様は加護持ちが増えるだろうと考えていらっしゃるのですよね?」

 シルヴィアが言ってきたのは、サラサに加護を与えたときにも話した話題だった。


 今の状態を考えれば、神々の加護を持っている者は、増えることはあっても減ることはないと考助は考えている。

「うん。そうだけれど?」

 シルヴィアがなぜまたこの話題を出してきたのか分からずに、考助は首を傾げた。

「それは、祝福などを含めて、でしょうか?」

「ああ、うん。そうだね」

 神々が<加護>と呼ぶものには、加護に限らず祝福やお気に入りなど、様々なものがある。

 神託を得たりする意味で、一番神とのつながりが強いのは加護になるが、それ以外のものも神に目をかけてもらっているという意味では変わらない。

 加護に比べて、それらのほうが授けやすいので、むしろ増えるのはそういった名前の<加護>のほうになるだろうと考助は考えていた。

 勿論、そうした話も考助はしっかりとシルヴィアに伝えてある。


 シルヴィアが確認したかったのは、それらの加護に関してだ。

「例えば、祝福とかの場合は、クラウンカードには表示されるのでしょうか?」

「ステータスに? ・・・・・・ああ、それは表示されるだろうね」

 考助もシルヴィアが何を懸念しているのか察して、大きく頷いた。

 クラウンカードができたばかりの頃は、称号の欄に意味の分からない名称のものが出ていて情報が錯綜したことがあった。

 女神たちの名前を冠した称号が増えてくると、同じようなことが起こるかもしれない。

 

 ふたりの話を聞いていたフローリアもそのことに気付いたのか、話に加わってきた。

「確かに、称号に神の名が表示されれば騒ぎにはなるだろうが、そこまで面倒なことになるか?」

 加護によっては、効果が微妙なものもたくさんある。

 それを考えれば、大きな騒ぎにはならないだろうとフローリアは考えたのだが、シルヴィアが首を左右に振った。

「それは、私たちが効果の大きくない加護もある、ということを知っているからですわ。普通の、とりわけ神殿の者たちは、そんなことは知りません」

「むっ・・・・・・。それは、確かにそうだな」

 シルヴィアが懸念しているのは、まさにその点で、単に女神の名前の称号があるからといって、その人物の囲い込みに走りまわることがあり得るのではないか、ということだ。

 きちんとした情報が出回れば、そうしたことも起きないだろうが、問題はそうした称号が出回り出したばかりのときだろう。

「そうなると、きっちりとした情報を出した方がいいだろうな」

 すぐにそう結論付けたフローリアは、シルヴィアと考助を交互に見た。


 そのフローリアの視線の意味を理解したシルヴィアが、考助に向かって言った。

「出来れば、コウスケ様の名前でその辺りの情報を出したいのですが・・・・・・」

「ああ、なるほど。そういうことね。うーん・・・・・・」

 できるだけ起こり得る混乱を抑えたいというふたりの意図は、考助にもわかる。

 自分の名前を使ったくらいでそれが抑えられるのなら、いくらでも使っていいと言いたいところだが、何分他の神々のこともある。

 いくら考助といえども即答はできなかった。

「わかった。エリスあたりに相談してみるから、それで許可が出てからだね」

 考助以外の神々が関わることだ。

 シルヴィアもフローリアもそれがわかっているので、それ以上は何も言わずに頷くのであった。

前半いちゃいちゃ、後半まじめ回でした。

たまにはこんな構成もいいかなと。

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