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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第7部 第1章 塔のあれこれ(その15)
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(4)便利な道具

 ナナが連れてきた白狼王は、テンと名付けられた白い狼だ。

 本来のナナの姿には敵わないが、やはり種族名に「王」と付くだけあって、威風堂々とした風格を漂わせている。

 アマミヤの塔にあっては、ナナやワンリといった存在がいるために埋没しがちだが、別大陸の平原に放り込めば、間違いなく一帯の王者として君臨するほどの実力がある。

 そのテンが、クロの監視役(?)として付くことになったことは、聞く者が聞けば一体何の冗談だと思っただろう。

 ただ、管理層の他のメンバーにテンが紹介されたときは、歓迎の意を示すだけで、それ以上の反応は示していなかった。

 彼女たちもまた、いい意味でも悪い意味でも考助のすることに慣れてきたといえる。

 テンが来たことに合わせて、管理層の改装も行った。

 これまでも子供たちのために部屋を増やしたりはしていたのだが、今回はテンとクロのための部屋を新たに作ったのだ。

 従魔部屋と名付けたその部屋は、転移門がある部屋のすぐ隣に用意した。

 その位置に部屋を作ったのには、きちんとした理由がある。

 テンとクロのために作った部屋は、体育館(バスケットコートふたつ分くらい)ふたつ分くらいの広さがあるが、大型のモンスターがストレスなく過ごすには十分とはいえない。

 そのため、テンに管理者としての権限を持たせて、塔の特定の階層で狩りができるようにしたのだ。

 転移門のある部屋と従魔部屋は、テンが自由に扉を開けられるように魔力紋を登録してある。

 こうすることによって、クロが自由に管理層の他の場所に入り込まないようにしたのである。

 二匹が狩りを行うタイミングは、完全にテンの好きにさせている。

 考助は、自分が変に口を出すよりもはるかによさげなときに行ってくれるだろうと期待していた。

 

 考助の一連の作業をミアも最初から最後までしっかりと見守っていた。

 ミアはテイマーとしての力が無いのはわかっているが、自分の眷属たちを育てていくうえで何か参考になるのではないかと考えたのだ。

「これでテンに任せることになったのですが、大丈夫なのでしょうか?」

「ん? どういう意味で・・・・・・ああ、狩りの移動のときか。それは大丈夫だと思うよ。ナナからも言ってもらっているし、何よりも<言語理解(眷属)>のスキルがあるからね」

 たとえ種族が白狼王であっても、全ての個体にこのスキルがあるわけではない。

 ナナが考助のところにテンを連れてきたのは、そうした理由も含まれているのだ。

 ナナがどうやってテンのスキルのことを知っているのかは分からないのだが。


「・・・・・・なるほど。言語理解のスキルですか。・・・・・・私にも眷属たちのスキルがわかれば・・・・・・」

 そのミアの呟きを聞きとがめた考助が、キョトンとした顔になった。

「あれ? ミアは知らなかったの? 相手のスキルを覗ける魔道具作ってあるよ?」

 今となってはもうだいぶ前の話になるが、女性陣がまだ進化を果たす前、色々と奮闘するときに使っていた道具の中に、そういう物も含まれていたはずだ。

「し、知りませんでした」

 考助の言葉に、ミアが愕然とした表情になったあと、全身の力が抜けたかのように脱力した。

 そんな便利な道具があるのであれば、とっくに使っていた。

 今のミアは、眷属それぞれを見分けるのにも苦労していた。

 せめて数十頭くらいであれば何とか違いも分かるのだが、それが数百頭単位、しかも種族も変わってくるとなるとお手上げの状態だったのだ。

 それが道具で解決できるとなれば、今までの苦労は何だったのかということになる。

 ミアが脱力するのも当然といえば当然だ。

 

 何とか脱力から復帰したミアが、お菓子のおねだりする子供のような顔になる。

「そ、それで、その道具は貸していただけますか?」

 そのミアの顔にほんの少しだけ噴出した考助は、すぐに頷いた。

「それは勿論。けど・・・・・・」

「え? 何かあるのですか?」

「いや、道具がいまどこにあるのかがよくわかってないんだよね」

 シュレインたちに貸し出しをしたところまでは覚えているが、そのあと返してもらった記憶がない。

 もっとも十年以上前のことなので、単に忘れているだけという可能性もある。

 考助は、ステータスを直接自分の目で見ることができるので、あまり重要視している道具ではないのだ。

「そ、そんな・・・・・・」

 考助の説明に再び落ち込んだミアを見て、考助が慌てて手を振った。

「いや、フローリアとかに聞けば分かるはずだから!」

「そ、そうですか! では、さっそく行きましょう!」

 フローリアは塔の管理をするために、制御室にいるはずだ。

 勢いよく立ち上がったミアは、考助の腕を引っ張りながらフローリアのいるところへと向かうのであった。

 

 

 フローリアに事情を説明して、道具がどこにあるかわかるか尋ねるとすぐに答えが返ってきた。

「・・・・・・ああ、あの神具か。さて、いまは誰のところにあるかな?」

 道具のことはすぐにわかったフローリアだが、誰のところにあるかまではわからなかった。

「五日ほど前までだったら私が持っていたんだがな」

 フローリアたちにとっては、眷属を管理するのに非常に便利な道具なので、お互いに譲り合いながら使っているのだ。

「そ、それで今は誰が持っていますか?」

「さて、シュレインに渡したところまではわかるが、その先は聞かないと分からないな」

「すぐに行きましょう!」

 フローリアの答えを聞いたミアは、再び考助の腕を引っ張ってシュレインのいる場所へと向かった。

 

「ああ、それなら吾が持っておるぞ?」

 駆け込むように制御室に入ってきたミアを見て目を丸くしていたシュレインだったが、話を聞いてすぐに頷いた。

「ほ、本当ですか!? 私にも貸してください!」

「ああ、それは勿論かまわんが・・・・・・」

 考助に視線を向けたシュレインは、考助が頷くのを確認してからミアに向かって首を傾げた。

「じゃが、その様子を見る限り、今まで使っておらんかったのか?」

「そうですね。こんな便利な物があるのも先ほど知りました」

 シュレインから道具を受け取りながら、ミアが苦笑しながらそう言った。

「なんとまあ・・・・・・。いや、吾らも迂闊と言えば迂闊じゃったかの?」

 そもそも考助は道具の存在自体忘れかけていた。

 そして、そのことをわかっていた女性陣は、敢えて考助に教える必要もないと考えていたところがある。

 同じように塔の管理をしているミアがこの神具を使いたがるのは、考えればすぐにわかる。

 それにもかかわらず誰もミアに言い出さなかったのは、そのことを忘れていたのと、誰かが言っているだろうと勝手に思い込んでいたためだ。

 ミアにしてもそういった道具があるかどうか確認しなかったという非はあるので、それに関してどうこう言うつもりはない。

「いえ、それはいいのです。それよりもこれからのほうが大事ですから」

「うむ。それもそうじゃの」

 前向きなミアの言葉に、シュレインも笑顔になって頷いた。

 

 そして、これまでの一連の流れを見てきた考助がぽつりと呟いた。

「そんなに使い勝手が良いんだったら、もうひとつふたつ作ろうか?」

 そのつぶやきを聞いたシュレインとミアが、同時に考助を見た。

「できるのかの?」

「できるのですか?」

 その勢いに思わず少しだけ身を引いた考助は、頷きながら答えた。

「いや、一度は作っている道具だから、材料さえあれば作れるけれど?」

「作ってください!」

「材料はなんじゃ? すぐに用意するぞ?」

「とりあえず、研究室で材料を確認するからちょっと待っててね」

 考助は、そう答えながらふたりの様子にそこまでかと考えて、すぐに道具を用意することを決意するのであった。

女性陣の中では、ほぼ必須になっているステータスを確認する道具の話でした。

ミアが仲間外れになっていたのは、別に意図してそうしていたわけではありませんw

これでミアも多少はやりやすくなると思います。

眷属の見分けが付くというのは大きいですからね。(スライム含w)

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