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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 神具の力
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(3)力の移譲

 考助は、常に神具の感情を読めるわけではなく、当然ながら読めないときもある。

 むしろ、読めていないときのほうが多いとさえ考えている。

 もしかしたら、神具が感情を読んでほしいと思っているときだけ考助に伝わってくるのではとも考えているが、真偽のほどはわからない。

 要するに何が言いたいのかといえば、水鏡のくぼみに勾玉を入れたときに、何が起こるのか水鏡から知ることができていないということだ。

「えーと、それじゃあ、行くよ?」

 勾玉をはめる役を押し付けられた考助は、そんな理由からおっかなびっくりの状態で勾玉を水鏡のくぼみへと押し付けた。

 ちなみに、こういうときはコウヒやミツキが口を出してくることはない。

 そもそも神具が起こすくらいの規模の爆発で現人神となった考助がどうこうなるとは思っていないのか、単に面白がっているのかは考助にもわかっていない。

 

 考助が勾玉を水鏡にはめ込むと、爆発が起こることもなく丁度いい感じでくぼみに収まった。

「・・・・・・あれ?」

 多少身構えていた考助は、爆発どころか特に何も起こらないのを見て、首を傾げた。

「・・・・・・何も起きませんね~?」

「・・・・・・違う物をはめるのでしょうか?」

 ピーチとシルヴィアもそれぞれに首を傾げてそう言った。

「いや、大きさもぴったりだったから、何か起こると思うんだけれど?」

 実際に勾玉をはめた考助は、入れるときの感覚に違和感がなかったこともわかっている。

 勾玉を入れたときの感覚は、間違いなくそのくぼみが勾玉を受け入れるためのものだということを示していた。

 

 一同が首を傾げる中、考助が勾玉を水鏡のくぼみに入れてから一分ほどが経った。

 その間、特に変化もないまま時が過ぎ去っていた・・・・・・と思われたのだが、沈黙を破って考助が声を漏らした。

「・・・・・・あれ?」

 部屋の中は静まり返っていたため、考助のその声に注目が集まる。

 その視線を感じながら考助はピーチを見た。

「ピーチだったら見えないかな?」

「何がでしょうか~?」

 唐突な考助の言葉に、ピーチが首を傾げる。

「うーん、見えないか。勾玉が蓄えていた神力が、少しずつ水鏡に移動しているんだけど」

「・・・・・・・ええ~っと・・・・・・あれ? ・・・・・・何となく?」

 考助の言葉にピーチが目を凝らして神具を見ていたが、やがて小さく首を傾げてそう言った。

 ピーチの目には、勾玉がほんのりと光って、その光が水鏡のほうに流れていくのが見えた。

 といってもその変化は非常に小さなもので、言われなければわからないといった程度だ。

 

 力の流れを見ていたピーチは、考助を見て問いかけた。

「これは、力の移動が起こっているのでしょうか~?」

「だろうね。ほんとに少しずつだけれど」

 今起こっている力の移動は、考助が作った勾玉から移した力に比べれば、本当に小さな力でしかない。

 ただ、それは比較対象が悪いのであって、クラウンカードを作る神能刻印機で使われている量と同じといえば、それなりの量であることがわかる。

 力の移動は一度だけではないので、全部を合わせればそれなりの量になるだろう。

「どれほどの量が移動することになるのでしょうか?」

 シルヴィアの疑問に、考助が神具を見ながら答えた。

「少なくとも、フローリアが舞の儀式で発生させた神力全部ではないことは確かだね。いっても四分の一くらいじゃないかな?」

「それでもかなりの量ですね」

 フローリアが舞ったときに発生した神力の量は、もしあれがすべて攻撃の力として転換されれば甚大な被害が出たであろう量だった。

 それを考えれば、四分の一でもシルヴィアが言った通りかなりの量といえる。

 

 目を細めたまま力の移動を見ていたピーチは、ふと思った疑問を口にした。

「ですが、この分だとかなり時間がかかりませんか~?」

「やっぱりそう思う?」

 今の移動している量を見ていれば、もし考助の言っていることが当たっていれば、一時間程度で終わることは推測できる。

「途中で外すこともできそうだけれど、どうする?」

 考助が様子を見ている限りでは、最後まで待たずに勾玉を外してしまっても問題なさそうに見える。

 ただ、その場合は、当然ながら水鏡に移動する神力は、中途半端な量ということになる。

 考助の言葉に顔を見合わせたシルヴィアとピーチは、揃って首を振った。

「折角なので、最後までこのままにしましょう」

「そうですね~。問題は私たちではなく、ワンリでしょうか~?」

 今まで黙って話を聞いていたワンリは、突然ピーチに振られて慌てた様子を見せた。

「わ、私は大丈夫です!」

「本当に~? 用事があるならあるって言わないと駄目よ?」

 そう念を押してきたピーチに、ワンリは首を縦に二度ほど振った。

「本当に大丈夫ですから」

 実際ワンリは急ぎの用事があるわけではない。

 というか、そんな用事があるのであれば、そもそも考助と一緒に管理層には来ていない。

 

 ワンリのそうした雰囲気を感じ取ったシルヴィアが、笑顔になって頷いた。

「そう。だったら申し訳ないですが、少し待っていてもらえるかしら?」

「はい」

 ワンリが傍から離れると、勾玉がどんな反応を示すかわからない。

 コレットに渡している間、ワンリが離れていても何かが起こったことはないが、用心するに越したことはない。

「そうだね。まあ、でも管理層を移動するくらいなら構わないと思うよ?」

 考助の言葉を聞いたワンリは、パッとミツキを見た。

 折角時間ができたのだから、料理を教えてほしいと顔に書いてあった。

 

 結局、勾玉から水鏡への神力の移譲は、考助の予想通り一時間ほどの時間がかかった。

 その間ワンリは、ミツキからしっかりと新しい料理を学んでホクホク顔になっていた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 水鏡に力の移譲が行われている間、同じ人がずっと張り付いていたわけではない。

 ただし、目を離したすきに何かあってはいけないということで、誰かしらはその部屋で様子は見ていた。

 入れ替わり立ち代わりで水鏡を見ていたわけだが、変化が現れたことに気付いたのは、ちょうど作業を終えて部屋に戻ってきたワンリだった。

「お、お兄様! 水鏡が光りました!」

 ちょうど、ソファでゴロゴロしていた考助をワンリが呼びに来た。

「お、終わったのかな? 行ってみようか」

 考助がそう言ってソファから立ち上がり、水鏡のある部屋へと向かった。

 

 考助が水鏡のある部屋に行くと、ピーチとフローリアも揃っていた。

「どう?」

「完全に止まっているみたいですね~」

 考助が様子を聞くと、ピーチが頷きながらそう言った。

 考助も同じように水鏡を見ると、確かに先ほどまで行われていた勾玉を水鏡への力の移譲は行われなくなっている。

 それを確認した考助は、水鏡にはまっていた勾玉を取り出した。

 一度水鏡から取り出した勾玉をジッと見た考助だったが、すぐにそれをワンリへと手渡す。

「こっちは特に何も起こってないみたいだね。移動した分の力が減っているくらいだよ」

 当たり前といえば当たり前だが、水鏡に移動した分の力が減っているのはわかった。

 それ以外には特に大きな変化は見受けられない。

 それは水鏡のほうも同じで、移動してきた力が増えている以外には特に大きな変化は起こっていない。

「・・・・・・水鏡も同じだね。あとは、これを使って何か変わったことが起こるかどうか、かな?」

 神力が蓄えられた状態で、どんなことができるようになったのか、調べるのはシルヴィアやピーチになる。

 考助の言葉を聞いたふたりは、神妙な顔で頷くのであった。

劔で力を発生させて、勾玉に蓄えておいて、水鏡で使う。

この流れをようやくお目見えさせることができました。

水鏡で神力がどういう使われ方をするのかは、そのうち触れます。(いつになるかは未定w)

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