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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 勾玉
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(14)新たな作戦

 二回目に神具を逃したあと数日後に、ユッタから神具の居場所を捕捉したという連絡があったが、フローリアたちは探索するのをやめていた。

 それは、前回のことで下手に追い詰めると暴走する危険があると判断したためでもあるが、別の理由もある。

 その理由をユッタに話したところ、彼女(?)も快く神具を捕捉し続けることを請け負ってくれた。

 別に神具を回収することを諦めたわけではない。

 次はどうするかと話し合っているときに、考助がとあることを思いついたのだ。

 それは、二回目と同じように神具を追い詰めてもまた同じように逃げられてしまうということを話していたときのことだった。

 

「それで、どうする? このまま同じように神具のところに行っても、また同じように警告されて逃げられるだけになるぞ?」

 フローリアの言葉に、シュレインとシルヴィアは顔を見合わせたあと、首を左右に振った。

 もっとも、答えを持っていないのはフローリアも同じなのだ。

 下手に追い詰めれば暴走される危険があるというのは、それを防ぐ手立てがない以上、神具にとっての最高の盾になっている。

「どうしようもありませんね。少なくとも暴走を防ぐ手立てがない以上、私たちでは回収は不可能ですわ」

「・・・・・・認めるのは癪じゃが、そうだの」

 シルヴィアが首を左右に振りながら、シュレインがため息をつきながらそう言う。

 前回のワンリのことがなければ、それこそ気付かずに暴走を起こしてしまっていたかもしれない。

 それを考えれば、ワンリがいてくれたことで被害が出ずに済んだといえる。

 だが、そもそも本当に暴走が起きていたのか、検証する術がないともいえるのだ。

 暴走に巻き込まれて、よくて大けが、悪ければ二度と会うことができなくなってしまうことを考えれば、警告を無視して無理やり回収するわけにもいかない。

 正直に言えば、考助としては神具の暴走でシュレインたちが命的にどうこうなるとは考えていないのだが、わざわざ大けがをするようなことをさせるつもりは毛頭ない。

 

 手詰まり感が漂う雰囲気の中、考助がポツリとこぼした。

「いっそのこと、このまま放置しておくか。いや、力を蓄えている可能性がある以上、それもよくないか」

「せめてコウスケが近づけて、神具の目的とかがわかればいいのじゃがの」

「もう一回行ってみる? 一回目のときはたまたまだったかもしれないし」

 一縷の望みをかけて、という考助の考えは、あっさりと女性陣に見抜かれたのか、一斉に首を左右に振られてしまった。

 神族が来るかどうかわからないのに、神具はわざわざ最初から罠を用意していたのだ。

 次に行ったときにそれが無いと考えるのは、楽観にすぎるだろう。

 

 考助を含めて四人が黙ってしまったのを見計らって、珍しいことにコウヒが口を出してきた。

「・・・・・・私が出ましょうか?」

 珍しいその言葉に、シュレイン、シルヴィア、フローリアの三人が驚きの表情になった。

 コウヒがこうしたことで自ら動くことを提案することは、ほとんどないのだ。

 だが、その三人に対して、考助は驚きもせずに首を左右に振った。

 考助は、一回目のときのこともあって、コウヒがそう言いだすのではないかと多少予想していたのだ。

「駄目だよ。コウヒが無理やり回収しても、そのあとが困るから」

「かしこまりました」

 考助が拒否をすると、コウヒも納得したように頷いて少しだけ後ろに下がった。

 もし考助が認めるなら自分が出てもいいと考えていたコウヒだが、考助の考えを押しのけてまで出る気は全くない。

 あくまでもコウヒにとっては、考助の考えが一番なのだ。

 

 完全に黙り込んでしまった中、シルヴィアが何とはなしにつぶやいた言葉を考助が拾った。

「回収するのは無理としても、どこにあるかだけでも捕捉できるようになればいいのですが」

 今はセウリの森内にとどまっているからいいのだが、将来神具が目的を達成するために森を出ないとも限らない。

 そうなったときのことを考えれば、常に神具を捕捉できる手段があればいい。

 シルヴィアはそう考えて言ったのだが、考助はそのセリフを聞いて、ふと何かを思いついた表情を浮かべた。

「どこにあるのかを捕捉・・・・・・。そうか、そういうことなら何とかなるかもしれないな」

「何とかなるのか?」

 今のところ神具に触れることさえできていないのだ。

 それなのにずっと神具を捕捉した状態に置くことなど可能なのか、とフローリアが疑問の表情になった。


 それに対して考助は、はっきりと頷いた。

「できるよ。というよりも、今の不安定な状態をはっきりさせればいいんだから、やりようはある。というのも・・・・・・」

 そう前置きをして話しだした考助に、一同は今までの表情を一転させて明るい表情になった。

 考助の提案は、神具を即回収できるものではなかったが、それでも今の状態を多少改善する内容だったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 三回目の神具捕獲作戦は、これまでとは違った様相を呈していた。

 というのも、そもそも今回は、神具を回収する目的で来たわけではないのだ。

 シュレインたちは、その「目的」を達成するために、神具を囲むように四方に分かれて待機していた。

 モンスターが出る森でひとりずつに分かれるのは危険ではあるのだが、今回はシュレインたちだけではなく、エルフの協力も得ていた。

 シュレインたちがとある仕掛けを施す間は、エルフたちが彼女たちをモンスターから守る役目を負っている。

 幸いにして、シュレインたちが四方向に分かれてからは、モンスターに襲われることなくすべての準備が整っていた。

 あとは、神具に逃げられる前に仕掛けを作動するだけの状態になっていた。

 

『ワンリ、シルヴィア、フローリア、準備は大丈夫かの?』

『うん、大丈夫』

『大丈夫ですわ』

『ああ、いいぞ』

 神力念話でシュレインが確認をとると、それぞれから返事が返ってきた。

 その後、シュレインがもう一度神具を所持している狼の様子を確認するが、これまでと同じようにとある木の麓でこちらに気付いた様子も見せずに寝そべっている。

 それを確認したシュレインは、このまま進めて大丈夫と判断して別の方向に待機している三人に指示を出した。

『よし。では計画通り進めるかの』


 シュレインからの合図を皮切りに、四か所に散らばっている女性陣が動き出した。

 考助から預かっていた道具をシュレインが起動させるとほぼ時を同じくして、それぞれの箇所から光の柱が一瞬だけ立ち上がった。

 一瞬だけ狼がそれに気づいたような動きを見せたが、すでにそのときには遅かった。

 四か所で昇っていった光が上空で一か所にまとまり、そのまま狼のいる場所、正確には神具のところに落ちていった。

 さすがの神具(を持っている狼)も避けることができずに、光は狼へと降り注いだ。

 といっても、その光は攻撃をするためのものではなく、考助が作ったとある仕掛けを神具に施すためのものだ。

 ただ、しばらくうろうろと周辺をうろついていた狼だったが、その場にいては駄目だと判断したのか、やがてその場を離れていった。

 

 狼が去って行った方向とは逆の場所に集まったシュレインたちは、作戦の成功に手を合わせていた。

「これで、あとは考助の結果待ち次第か」

 フローリアの確認に、シュレインとシルヴィアが頷く。

 ただ、正確に神具のもとに光がたどり着いていたようなので、この時点でシュレインたちは失敗したとは考えていなかった。

 考助が作った道具で、失敗になるということは今までなかった。

 だからこそ、今回も成功しているのだろうと、シュレインたちは考えているのであった。

考助が作った仕掛けがどんなものかは次話で話します。

今回の話に入れるには長くなるので、無理でした><

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