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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 勾玉
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(13)神具の目的

 考助から話を聞いたコレットは、難しい表情を浮かべた。

「またずいぶんと難しい話を持ってくるわね。答えを言ってしまえば、精霊から自主的に動くことはないわけではないわ。相手がワンリならありえるでしょうね」

 あっさりとそう言ってきたコレットに、考助は目を瞬いた。

 すぐに答えた割に、浮かべている表情がそれとは合っていないと感じたのだ。

「そうか。あり得るのか。だったら何で、そんな顔になっているの?」

「問題はそっちじゃなくて、精霊が神具の指示に従ったのか、それとも独自に動いたのか、見分けが付かないことよ」

 そうはっきり断言したコレットに、考助が不思議そうな表情を浮かべた。

「そうなの? てっきりすぐに分かるものだと思っていたんだけれど?」

「精霊を動かしているのが、人とか動物とかなら分かったんでしょうけれどね。今回は神具、道具が相手でしょう?」

 何かの生物が精霊を動かしたのであれば、何らかのアクションがあるのですぐにわかる。

 例えば人の精霊使いが何かを命じるときは、呪文を唱えたりなどだ。

 同じような理由で植物が精霊を動かしたとしても、一流の精霊使いであれば、見分けることができる。

 だが、道具が独自に意識をもって精霊を動かすことなどまずありえないため、どんな精霊使いであっても、その道具が精霊を動かしたのかどうかはわからない。


 ここで間違えてはいけないのが、人が道具を使った場合ではなく、道具そのものが勝手に動いた場合に限定されていることだ。

「普通は人なり何なりの『意思』があって精霊が動くんだけれど、道具の場合はその『意思』を見分けることができないからね。結果としてどっちが原因でワンリが動くことになったのかはわからないってわけ」

「うーん、なるほどね。そういうことか」

 コレットのその考察に、考助は納得して頷いた。

「・・・・・・僕が行けるなら道具が動いているかどうかは分かると思うんだけれどね」

 神として道具作りもその権能のひとつとしている考助であれば、神具が精霊に何らかの働きかけを行っているかは見分けができる。

 そう言い切るだけの自信は、珍しく(?)考助にもあった。

 だが、残念ながら今の状況では、考助が一緒に行くことはできないため確認はできない。

 

 何とも手づまりな状況にどうしようもないと言いたげな表情を浮かべた考助に、コレットがふと思いついたように言った。

「確かにそうだろうけれど、そもそも重要なのは何がワンリに知らせたのかではなくて、何故その知らせが届いたかじゃないの?」

 神具にせよ精霊にせよ、何かがあるからこそワンリに精霊を使って攻撃を止めさせたのだ。

 今重要なのはそちらの方ではないのかというコレットの言葉に、考助がごまかすような表情を浮かべた。

「ああ、うん。それは、フローリアたちにも言われたよ」

「やっぱりね」

 そっぽを向く考助を見て、コレットが呆れたような表情になった。

 考助が本筋から外れて、自分の興味の赴くままに突っ走るのは、今に始まったことではないのである。

 

 神具が精霊を通してワンリの行動を止めたのか、それとも精霊が何かに気付いて独自に止めたのか、どちらにせよそれは重要なメッセージが含まれている。

 特に精霊が独自に動いたのであれば、何か重要なことがあると考えていい。

「まあ、恐らく神具が暴走しようとしたのを知らせようとしたというのが、可能性としては一番大きいと思うけれどね」

 ワンリの感じた感覚とそのときの状況を合わせれば、それが一番の理由として考えられる。

 もっともそれは、あくまでも想像の範囲でしかないのだが。

 神具が精霊を操ったと考えた場合はもっと簡単だ。

 精霊を通して、暴走する意思を示したと考えればいい。

 勿論、暴走だけではなく、単に脅すために精霊を使ったとも考えられるが、ワンリの力を考えれば、その可能性は低い。

 ワンリとて、神族にはなっていないが九尾狐という最高位の種族になっているのだ。

 相手がいくら神具とはいえ、そんな簡単に騙されるわけはない。

 さらにいえば、ワンリは加護も持っているので精霊を使ってだますのは容易ではないのだ。

 

 いづれにしても、あくまでも推測ではあるが、神具の暴走が関係して精霊が動いたと考えられる。

 そうであるならば、ワンリがフローリアの行動を止めたのは、間違いではなかったと言える。

「・・・・・・推測でしかないのが難しいところよね」

「それは仕方ないよ。神具の意思なんて確認しようがないんだから」

「コウスケ以外には、でしょ?」

 からかうようにそう言ってきたコレットを見て、考助は肩をすくめた。

「いくら確認できる力があっても、実際に役に立てなかったら何の意味もないからね」

 こういうときは、現人神であることが煩わしく思う、と考助がため息をはいた。

 その考助を見たコレットが笑いながら言った。

「何を言っているのよ。現人神であることの方が、メリットが大きいんでしょ?」

「それは認める」

 そう言いながら真顔で頷いた考助に、コレットがさらに笑うのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 コレットとの話を終えた考助は、管理層に戻ってメンバーと情報の共有を行った。

 といっても、事前に予想していた内容とほとんど同じだったので、精霊の部分に関しては推測が確定に変わったくらいだ。

 話をしたときの反応も、やはりそうか、といった感じで、驚きのようなものはなかった。

 そして、話を聞き終えたフローリアが、考助を見ながら聞いてきた。

「もうそろそろ、コウスケが考えている神具の目的を教えてもらえないか? ある程度知ったうえのほうが、作戦が立てやすいのだが?」

「あ~。やっぱりそう来る?」

 フローリアもあてずっぽうで考助に言ったわけではない。

 考助が何かしらの推測ができているのではないかと考えての発言だった。

 そして、そのフローリアの予想通り、今の考助にはいくつかの推測が頭の中に浮かんでいる。

 

「完全に推測になるけれどいい?」

 そう前置きをした考助は、フローリアたちが頷くのを見てから自分の考えを話し出した。

「今のところ思い浮かんでいるのは、ふたつ、かな? ・・・・・・ひとつは、世界樹の麓で力の回復を図っているのか、もうひとつは、自分にふさわしい持ち主が来るのを待っているのかどちらか。勿論、他にも何かあるかもしれないけれど、今思いつくのはそれくらいかな?」

 セウリの森に落ちてきたときの衝撃でできた傷跡を直したときに使った力は、かなりのものになるはずである。

 その力を回復するために、精霊が豊富に存在している世界樹の森にあえて残っているのが一つ。

 もう一つは、力がどうこうというわけではなく、単にめぼしい者が来るのを待っているのではないのか、というのが考助の推測だ。

 どちらの場合も、神具が森にとどまっている理由になり得る。

 勿論あくまでも推測でしかないため実際のところはどうなのか、考助にもわからない。

 もし、本気で神具の目的を知ろうと思うのなら、どうしても直接目にする必要がある。

 贅沢をいえば、直接触れることができればなおいい。

 もっとも、現状ではそんなことをする機会はないので、状況を見ながら推測することしかできないのである。

 

「確かにありそうだな。だが、力の回復を図っているという場合は、暴走するだけの力が残っていないともいえるのではないか?」

 フローリアのその疑問に、考助は首を左右に振った。

「残念ながら、神具が暴走するときって、蓄えた力とかは関係ないんだよね。一言でいえば、火事場の馬鹿力みたいなものだから」

「なるほどのう。そうそう甘くはないということか」

 神具から力が失われているのであれば、暴走もしないと見込んで追い詰めることができないかと期待したのだが、残念ながらそう甘くはないのであった。

何か中途半端な回になってしまいました><

考助が神具に触れられない以上、正確な答えなど出せないので、これで勘弁してください。

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