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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 勾玉
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(3)結界の揺らぎ

 シュレインたちとの話し合いのあとで、考助はセウリの森にあるエルフの里を訪ねた。

 正確には里の中心にある世界樹であるユッタに会いに来たのだ。

 占いの結果に出た「話の出来る木」がユッタかどうかはわからないが、もし森に異変があったとすれば、彼女に聞くのが一番いい。

 里のエルフたちも森のことには精通しているが、やはり神具が絡むとなるとエルフでは心もとない。

 逆に森に異変がなかったとしても、それはそれで結果のひとつとして受け止めればいいのである。

 今回考助と一緒についてきたのは、コウヒやミツキは当然として、コレットとシルヴィア、それからシュレインだ。

 コレットはエルフとのつなぎ役、シルヴィアは神具に関係するため、シュレインは単に興味本位のためについてきた。

 フローリアもついてきたがったのだが、さすがに大人数になるために今回は遠慮してもらっていた。

 

 里を訪ねた考助の歓迎ぶりは、相変わらずだった。

 といっても前に来たように大勢のエルフが出迎えに来たというわけではなく、突然来た考助を遠巻きに見ながら敬意を示しているだけだ。

 そんな視線を浴びながら考助たちはシオマラへ事情を話して、すぐに世界樹のふもとへと向かう。

「考助様、ようこそいらっしゃいました」

 考助が世界樹に近づいてくるなり、ユッタが姿を現して頭を下げてきた。

「突然来てごめんね」

「考助様ならいつ来てもいいのですよ?」

 ユッタがそんなことを言うと、後ろで控えていたシオマラも大きく頷いている。

 

 そんなふたり(?)に内心で苦笑をするしかなかった考助は、それには答えずさっそく本題に入ることにした。

「ありがとうございます。それで、今回来た理由なんですが・・・・・・」

 考助はそう前置きをしてから神具のことについて話をした。

 ただ、神具が神域からなくなったということは説明から省いて、単に神具を探しているということだけを話す。

「・・・・・・というわけで、占いの結果にそう出たのですが、ユッタは何か心当たりはある?」

 考助にそう聞かれたユッタは、しばらく考え込むようにうつむいていたが、やがて顔を上げて言った。

「・・・・・・二カ月ほど前ですが、森の結界の揺らぎを感じたことがあります。時間も短くてすぐに元の通りに戻ったので、単に気のせいだと思っていたのですが、もしかしたらそれがそうかもしれません」

 神具が森の中に入り込んだことで結界に何らかの影響を与えたのであれば、十分に考えられる。

 すぐに元に戻ったというのが気になるところだが、調べる価値は十分にあるだろう。

「なるほど。確かに調べる価値はあるけれど、ね」

 ユッタの説明を聞いてすぐに考助は頷いたが、同時に渋い顔になった。

 

 その考助の表情の意味を正確に理解できたのは、この場にいる者の中ではユッタだけだった。

 コウヒもミツキも表情には出していないが、なぜ考助がそんな表情になったのかはわかっていない。

 ふたりでさえそうなのだから他の者たちは、猶更わからなかった。

 その中でコレットが首を傾げながら聞いてきた。

「それらしい当たりが付いたのだから喜ぶべきだと思うのだけれど、何かあるの?」

「ああ、それはね・・・・・・」

 コレットの疑問に、考助が頷きながら今の状態で考えられることを話した。

 

 森の結界で揺らぎが生じた理由が本当に神具のせいであれば、神具が結界に対してそれだけの力を発揮する力を持っていることになる。

 それだけならまだいいのだが、問題になるのはそのあとのことだ。

 ユッタが揺らぎを感じたのが少しの間だけだったというのが、神具の能力に関係する可能性がある。

 森の中に神具が揺らぎを生じさせたというのはまだわかる。

 ただ、そのあとに何の変化もなく元の通りに結界が戻ったということは、神具が結界をもとの状態に戻して隠れることができる力を持っていることも考えられる。

 勿論、結界の揺らぎに乗じて誰かが森の中に入り込んで、その場から神具を持ち去ったということも考えられる。

 だが、そんな偶然というよりも奇跡に近い状況で神具が持ち去られたと考えるよりは、神具が自らの力で結界に影響を与えないように隠れたと考えたほうが確率は高い。

 そして、その場合、もう一つ大きな問題が出てくる。

 

 考助の話を頷きながら聞いていたシュレインが、首を傾げて聞いてきた。

「問題というのはなんじゃ?」

「結界の中にもぐりこんで、しかもその結界に影響が出ないようにできる力があるんだから、僕が近づいたら見つからないように隠れてしまうと思わない?」

 考助がそう言うと、集まった者たちの顔が先ほどの考助と同じように渋いものになった。

 確かに、考助の言う通りそれは十分にあり得る話だと理解したのだ。

「では、どうするのじゃ? 吾らが森の中を探しに行くのはかまわんが、神具かどうかなんて見分けは・・・・・・ああ、そうでもないのか?」

 見分けがつかない、と言いかけたシュレインだったが、途中で首を傾げながらシルヴィアを見た。

 そのシュレインの視線を受けたシルヴィアは、難しい顔になる。

「・・・・・・道具を目の前に出されれば、神具かどうかの見分けはつけられるでしょう。ですが、その場所に神具があるかどうかを探るのは、難しいかもしれません」

 そう言ったシルヴィアに、一同は納得しつつも難しい顔になった。

 そもそも神具がどういうものかもわかっていない以上、ある程度の当たりがついているとはいえ、広い森の中を探し出すのは中々に難しいものがある。

 

 悩ましい顔になる一同を見て、考助がとりあえずの提案をした。

「まあ、神具の力がどうであれ、とりあえず結界に揺らぎが出たというところは見に行ってみるよ」

「へえ。逃げるかもしれないのに良いの?」

 首を傾げるコレットに、考助はコクリと頷いた。

「うん。そもそもその揺らぎが、本当に神具のせいなのかどうなのかは調べないといけないからね」

「確かにそうね」

 そのもっともな理由に、コレットも頷いた。

 考助が調べたところで詳細がわかるかどうかは不明だが、まずは調べないことには何にもわからない。

 逃げられる可能性はあったとしても、そこに神具があったとわかるだけでもこれから先の展開がだいぶ変わってくるのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助の意思を確認したことで、まずは全員で結界に揺らぎがあった場所へと向かうことになった。

 考助がいるので問題ないとはいえ、一応許可をとったうえで森の中へと入っていく。

 ただし、森の中で結界が今も働いているので、案内役のエルフが考助たちの先を歩いている。

 結界自体がかなりの大きさで、ユッタが揺らぎを感知した場所は、結界の外側にあるのでどうしても案内がいるのだ。

 実際、目的地に着いたのは、考助たちが里を出てから三日ほど経ってからのことだった。

 ちなみに、移動に数日かかるのはわかっていたので、子育て中のコレットは塔の里に戻っている。

 

「この辺りが聞いた場所になります」

 案内役のエルフがそう言うと、考助はその周囲を見回し始めた。

 この辺りに神具があるか、もしくはあったのだとすれば、神気を感じ取ることができるはずだ。

 ただし、森の中は普通の樹木を始めとして様々な気配を感じ取ってしまう。

 その中から神具の神気だけを探し出すという難しさに、考助は深々とため息を吐くのであった。

ユッタが結界の揺らぎを感じていました。

ユッタにとってはほんのわずかな変化だったため、考助に聞かれるまで忘れていました。

そして、現場についた考助は、苦労をしています。

続きは次回!w

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