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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 勾玉
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(1)話のできる木

 ダナにとっては二度と経験したくもない、素晴らしい(?)日から数日たったある日のこと。

 いつものように占いの店を開いていたダナのもとに、子供を抱いたピーチとシルヴィアがやってきた。

 ふたりを見て思わず身構えてしまったダナに、シルヴィアが苦笑をした。

「そんなに構えないでください。今日は普通に占いをしてもらいに来ただけですから」

「ほ、ほんとうですか?」

 それでもなお疑うダナに、ピーチが真顔で頷く。

「本当ですよ~。コウスケ様の水鏡を使って占ってもらうために来ました」

 そのピーチの言葉でようやくダナがホッと息を付いた。

 

 シルヴィアよりもピーチの言葉のほうが信用されるという珍しい光景だったが、前のときのことがあるのでこれは致し方ないだろう。

 ついでにいえば、ダナは自分と同じく占いをするというピーチに親近感を抱いているところもある。

「わかりました。それで、今日は何を占いますか?」

「他の神具の行方について占ってください~」

 さらりと告げられた言葉に、ダナの頭は真っ白になった。

「・・・・・・ハイ?」

「他にも神具があるのですが、コウスケ様がそれを探しているのです。その神具の場所を占ってみてください~」

 あまりにもあっさりと言われた言葉に、ダナは頭の中でもう一度反芻したが、意味を理解したあとは、顔を真っ青にした。

「ししし、神具って?」

「神の力が宿った道具、ですわね」

「前までダナも使っていたじゃないですか~?」

「あああ、あれは! 私は、知らなくて! じゃなくて! 神具の行方って、他にも何かあるんですか?」

 プチパニックになっているダナに、シルヴィアとピーチは顔を見合わせて苦笑した。

 今のダナの反応が、ごく普通の反応だということに気付き、自分たちがいかに考助の影響を受けているのかを再認識したのであった。

 

 神域から失ったとか、女神からの依頼だとか、そういった部分は省いて、シルヴィアがダナに考助が神具を探していることを話した。

 その探している神具について占いをしてほしいのだということも強調する。

 考助自身は積極的に動かないので、あくまでも占いの対象になるのは、シルヴィアたちになることも付け加えている。

「し、神具を探しているって、大変なこと何じゃないのですか?」

「そうですね。割と大変ですね」

「・・・・・・その割にはずいぶんとのんびりしている気がしますが?」

 そう言って首を傾げるダナに、シルヴィアが首を縦に振った。

「ダナ。神々の感覚を普通で考えてはいけませんよ。数年単位で見つかればいいや、程度にしか考えていませんから」

「あ~、なるほど。そういうことですか」

 様々な神々の逸話を思い出しつつ、ダナは納得して頷いた。

 

 そんなダナに対して、シルヴィアが今度は首を左右に振った。

「だからといって安心はできませんよ?」

「え? なぜですか?」

 神からの依頼ということで身構えていたダナが、そんなに焦っているわけではないとわかって安堵していたため、シルヴィアの言葉に首を傾げた。

「神具の中では比較的穏やかとされる水鏡で、あれだけの騒ぎになったのですよ? もしあれが武器の類だったらどうなっていたと思います?」

 シルヴィアの問いかけに、ダナは再び神具にまつわる逸話の数々を思い出していった。

「ま、まさか・・・・・・?」

 ダナが知っているそれらの逸話の中には、神具が大暴走したものやそれを巻き込んで大騒動に発展したものが多数存在している。

 そういった騒動が、この世界のどこかで起こるかもしれないと、ダナはようやく思い至った。

 

 そんなダナの顔を見て、シルヴィアがコクリと頷いた。

「神々の感覚では割と大したことがなさそうに思えますが、私たちにとっては非常に大きなことが起こる可能性があるかもしれません」

「シルヴィア、そんなに脅しては、ダナの占いに影響が出ますよ~」

「あ、あら? そんなつもりは・・・・・・」

 ない、と続けようとしたシルヴィアだったが、ダナの顔を見てピタリと言葉を止めた。

「あ、あら。ごめんなさい。脅かすつもりはなかったのですが・・・・・・?」

「ど、どう考えても脅されているようにしか、聞こえなかったです!」

 少しばかりしまったという顔をするシルヴィアに、ダナが若干涙目になりながら返事を返した。

 

 

 ダナが落ち着くのを待ってから、占いをすることになった。

 シルヴィアとピーチのふたりがかりで、「絶対に結果を出す必要があるわけではない」とか「気楽にやればいいんです~」と説得をした結果だ。

「・・・・・・やっぱり何か騙されている気がします」

 水鏡を前にして、ダナはポツリとそう呟いた。

「占い師として店を持っている方に占いを依頼するのに、騙しているということはないですよ~」

「ううう、そう言われると返す言葉もないです」

 いつもののほほんとしたペースでピーチが言うと、ダナがそう返して諦めたように気合を入れた顔になった。

 ようやく踏ん切りがついて占いをする気になったのだ。

「ただ、相手が神具ですから、きちんと占えるかはわかりませんよ?」

「それは承知の上です。そもそも正確な位置などがわかるとは思っていませんから」

「・・・・・・何かそうはっきり言われると、それはそれでプライドが傷つくというか・・・・・・」

 ダナがボソボソとそう言ったが、シルヴィアもピーチも、その言葉は聞こえなかったふりをすることにした。

 

 いかに気が引けていても、プロとして店を出しているダナだ。

 一度始めてしまえば、あとはいつものように占いに集中した。

「うーん・・・・・・」

 そして、出た結果を見て、ダナが首を傾げた。

「駄目ですか~?」

「それが、よくわからないんですよね。おふたりは、言葉の話せる木なんてご存知ですか?」

「言葉の話せる木?」

 意味がわからずに首を傾げるピーチに、ダナがさらに付け加える。

「正確には、大きな木に聞けと出ているのですが、木が言葉を話せるわけ・・・・・・あれ? 何か心当たりでも?」

 自分の言葉の途中で、シルヴィアとピーチが表情を変えたことに気付いたダナは、まさかという思いで確認した。

 言葉を話す木なんて存在は、少なくともダナは聞いたことがない。

 

 そんなダナを見て、シルヴィアが曖昧に笑いながら答えた。

「まあ、ないわけではありませんね」

「・・・・・・本当ですか?」

 疑わしい視線を向けるダナに、今度はピーチが答える。

「本当ですよ~。でも、それが正しいかどうかは、聞いてみないとわからないですね」

 ピーチもシルヴィアもダナの占いの結果を聞いて、思い浮かべた存在がいる。

 ただ、それが正しいかどうかは、それこそ占いの通りに本人に聞いてみなければわからない。


 そんなふたりの様子を見て、ダナはため息を吐いた。

「・・・・・・やっぱり神様の近くにいらっしゃる方々は、いろんなことを知っているのですねえ」

 半分は呆れて、残りの半分は感心するような顔になったダナに、シルヴィアとピーチは一度顔を見合わせてからダナを見て言った。

「たぶん、ダナもそのうちそうなると思いますよ~?」

「その水鏡を使っている以上、私たちと縁が途切れることはないと思いますよ」

 その冷静な(?)意見に、ダナは愕然とした表情になった。

 今更ながらにそのことに気付いたという顔だ。

「え、ええと・・・・・・ご遠慮したいというのは・・・・・・」

「諦めてください。そのうち慣れていきます」

「無理ですね~」

 容赦のない二人の撃に、ダナは占い用のテーブルの上に突っ伏すことになるのであった。

ダナ大活躍!

果たしてダナは、考助に慣れる日が来るのか!?

ちなみに、ダナは考助を忌避しているのではなく恐れ多すぎて腰が引けているだけですw

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