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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6章 塔の地脈の力を使ってみよう
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(13) 神託と神力

 シルヴィアたちが出て行った部屋の中では、ローレルたちが話し合っていた。

「・・・ずいぶんと愚かな真似をしましたね。祭祀長」

 ローレルが、コウヒの名前を呼んだ男を見てそう言った。

 祭祀長と呼ばれた男は、唇をかんで俯いている。

 それに対して助け舟を出したのは、もう一人の男、神官長だった。

「しかしローレル神殿長。名前を呼んだことはともかく、対話を試みようとしたこと自体は、間違ってはいなかったと思いますが?」

「そうね。・・・いえ、それも無駄だったと思いますがね」

「・・・どういう事でしょう?」

 疑問の表情を浮かべた神官長に、ローレルは一つため息を吐いてから彼女自身も先ほど届いた情報を話した。

「彼の方が来ていなければ、先に貴方たちにも伝えていたんですがね。・・・各地の神殿に神託が降りたそうよ」

「神託・・・ですか?」

 世界中の神殿を探してみても、実際に神から神託が下される人材は、非常に貴重な人材になっている。

 その神託が受け取れる人材がいる神殿は、現在の世界では非常に重要な位置づけにあるのだが、それらの神殿で神託が降りたという連絡が、ミクセンの神殿にも届いた。

 その内容は、第一級の情報として全ての神殿に届けられていた。

「ええ。アマミヤの塔の関係者は、神々の庇護下にあるそうよ」

 ローレルの言葉に、祭祀長と神官長の二人は固まった。

 神殿の者達にとって、神の庇護下にある者達というのは、不可侵を意味している。

 簡単に言えば、触らぬ神に祟りなしということだ。

「しかし・・・なぜ、今その話をされたのですか?」

 疑問を口にしたのは、神官長の方だ。

 最初からその話を知っていれば、祭祀長とて妙な口出しをしなかったかもしれないのだ。

 ローレルは、それを聞いてため息を吐いた。

「私もその情報を受け取ったのは、ついさっきだったのよ。貴方たちを呼んで話そうとしたところに、彼の方が来たと言われてね」

 先に対面を優先したところ、それが裏目に出てしまったということだ。

「・・・そういう事ですか」

「ですが、いくら焦っていたとはいえ、あのような暴挙に出るとは思いませんでしたよ、祭祀長」

「・・・・・・申し訳ありません」

「過ぎてしまったことは、しょうがないわ。それよりもこれからのことよ。・・・と言っても、こちらの対応は一つだけだけど」

 ローレルの言葉に、祭祀長は顔をあげた。

「・・・・・・どうされるのです?」

「どうもこうもないわ。彼らの要求通りにしましょう」

 ローレルの続く言葉に、祭祀長がわずかばかりの反論をしたが、先ほどのシルヴィアたちの話合いと、届いた神託のこともあり、神殿側は神殿長の通りの対応を取ることになった。

 そして、翌日には神殿から、アマミヤの塔とリラアマミヤに対して、一切の干渉を行わないことが、正式に発表されたのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「・・・・・・馬鹿な! どういう事だ!?」

 ある屋敷の一室で、男の声が響き渡った。

 男は、手に手紙を携えていた。

 その内容は、簡単に言えば男に対して協力することが出来ないという内容が書かれていた。

 男とて勝算があるからこそ、話を持ち掛けたのだが、その目論見は完全に当てが外れたことになる。

 加えて先日神殿から発表された内容のこともある。

 完全に男の予想とは、違った流れになってきていた。

「奴らを放置すれば、どれだけ危険か、何故理解できない!?」

 男が打った手は、全て裏目に出ていた。

 自分が持つあらゆる伝手を頼って、リラアマミヤに対して反発するように持ち掛けてきたが、その悉くが失敗に終わっている。

 伝手には神殿に通じるものもあったが、先日の発表でそれも無駄になってしまった。

 男とて、全ていい方向に行くとは思っていなかったが、まさか全滅という結果が出るとは思っていなかった。

「このままいけば、間違いなく奴らの勢いにつぶされるというのに・・・! 目先の利益にしか目がない馬鹿共が!」

 男は、そう言って机に拳をたたきつけたが、その音だけが空しく部屋に響いた。

「・・・・・・まあ、いい。だが、いずれ尻尾を掴んで、化けの皮を剥がしてやる」

 男はそう呟いて落ち着きを取り戻した。

 そして、また新たな手段がないかを考え始めたのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 一方その頃の考助と言えば・・・。

 第七層の狼達と戯れていた。

 理由は単純で、ある程度顔を出さないと、信頼度が下がりそうだと考えている。

 実際には、そこまで頻繁に顔を出す必要はないので、完全に考助の趣味が入っているのだが。

 それはともかくとして、狼達に囲まれて幸せそうな顔をしている考助を見たピーチが、考助に問いかけて来た。

「コウスケさんは、この子達はどうするつもりなんですか~?」

「・・・どうしようか? っていうのは、半分冗談で、できれば上級モンスターを倒せるようになってくれれば、万々歳と思ってるけど?」

「半分ですか~」

「半分です」

 はっきりきっぱりと言い切った考助だ。

 そもそも最初は、召喚陣がどういう物かを試すために召喚したのだ。

 ナナの存在が無ければ、ある程度だけ召喚して、そのまま放置するということもあり得たのだ。

 あるいはペットとして、そのまま管理層で飼うということしか考えてなかった。

 それがふたを開けてみれば、現在はいい感じで中級モンスターを倒している。

 おかげで、得られる神力もいい感じで増えている。

 出来れば、黒狼やナナ以外の進化も見てみたいと思っているが、そこまで都合のいい話は無かった。

 まあ考助にしてみれば、思いがけず召喚獣たちが稼ぎ頭になっているので、彼らの進化は、今となっては嬉しい誤算という位置づけなのだ。

「上級モンスターですか、倒せるようになるんでしょうかね~?」

「さあ、どうだろ? そもそもまだ召喚陣も出てきてないから、当分先の話になると思うけど?」

 現在の塔LV7では、上級モンスターの召喚陣は出てきていない。

 LV8からになるのではないかと、考助は予想している。

「それに、流石に上級モンスターを倒すとなると、牙とか爪とかだけだと厳しいよね。せめて魔法的な何かが使えるようにならないと」

「そうですね~」

 上級モンスターは、物理的な攻撃だけでは、一筋縄ではいかないモンスターばかりなのだ。

 いくら召喚獣が強いと言っても、中級モンスターの討伐をしていた方が効率が良かったりする可能性もある。

 とはいえ、上級モンスターが召喚できない以上、推測でしかないのだが。

「それにしても、魔法ですか~」

「ん? 魔法がどうかした?」

「いえ~。最初にも話しましたが、私は魔法の類が苦手ですから」

「ああ、そういや、そんなこと言ってたっけ」

 高い身体能力を持つピーチだが、魔法が使えないおかげで、コウヒたちには及ばないという話だった。

 もっともその身体能力は、抜群に高いのだが。

「・・・・・・だったら、神力の使い方でも覚えてみる?」

「・・・え・・・!?」

 完全に予想外だったのか、珍しくピーチが間の抜けた声を発した。

「い・・・いえいえ。流石にそれは無理でしょう~?」

 ピーチにしてみれば、魔力もまともに使えないのに、神力なんて使えないというのが常識なのだ。

「いや、そんなことないと思うけど? 第一僕だって、魔法はまともに使えないよ?」

「そ・・・そう言えば、そうでした~」

「・・・ね? まあ、神力使えるようになるからって、魔法的な物が使えるようになるとは限らないけど」

 考助が、現在神力を使って出来ているのは、左目の力と神具の作成くらいだ。

 これは、神力が魔法や聖法のように体系化されていないため基本的に独学になってしまう。

 今までは時間が無くて、研究に時間が割けなかったのだ。

「というわけで、ピーチも神力の使い方を覚えて、一緒に研究しよう!」

「・・・なるほど~。そういう事ですか。・・・でも、神力が使えるようになるのは魅力的ですね」

「そうだよね?」

「はい~。それでは、ご教示、よろしくお願いします」

「わかったよ。じゃあ管理層に戻ろうか」

 考助はそう言って、ピーチを連れて管理層へと戻った。

 結局この後、神力の使い方自体は、シルヴィアと同じように、すぐに覚えてしまったピーチだった。

 といっても、神力を魔法や聖法のように力として発現できるようになるには、更なる研究が必要なのであった。

2014/5/11 誤字脱字修正

2014/6/14 誤字修正

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