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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6部 第1章 水鏡
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(23)お披露目?

 ミクセンにある三神殿のうちジャミール神殿にある広間に、聖職者たちが集まっていた。

 その広間は、一般に公開されている場所ではなく、普段は神官や巫女が修行の場として使っている場所になる。

 そこに、普通の巫女や神官だけではなく、神殿長をはじめとした役職もちも集まっていた。

 彼らはこれから始まるものを今か今かと待っていた。

 そして、その彼らの視線を一身に集めているのが、部屋の中央にいるアデルモだった。

「皆さま、ご覧ください。こちらが久しぶりに発見された、正真正銘の神具です!」

 そう言ってアデルモが示した水鏡に、集まった者たちの視線が集まった。

 中には「おおー」という声を上げている者もいた。

 

 その反応に満足げな顔になったアデルモは、懐からさらに別の道具を取り出した。

「では、これが神具だということを皆様に証明して見せましょう!」

 アデルモが取り出した道具は、対象の道具が神具であることを証明するために使う物だ。

 資格のある者が見れば、それが神力を基本にして作られている神具だというのがわかるのだが、そうした力を持たない者たちのために作られている。

 神殿が神具を管理するうえで、その道具はある意味で必須の物となっているのだった。

 意気揚々とその道具を水鏡に向かって使ったアデルモだったが、その表情が変わったのは次の瞬間だった。

「・・・・・・あれ?」

 本来であれば、目の前にある道具が神具であれば、手元にある小さな水晶が青く光るようになっているのだが、それが何の反応も示さない。

 使い方をミスしたのかと、慌ててもう一度起動させてみたが、それでもまったく反応しなかった。

「え、なぜ? そんな馬鹿な!?」

 幸い小声だったので、そのつぶやきを誰かに聞かれることはなかったが、アデルモが焦っている様子は誰にでもわかった。


「どうしたね?」

 高位にある神官のひとりがそう聞いてきたが、アデルモはその問いには答えらえなかった。

 道具を使っての確認を諦めて、きちんと自分の力で確認してみることにした。

 だが、何度確認しても本来あるはずの反応がまったく返ってこなかった。

 以前にこの水鏡を見たときは、間違いなくあった神具としての反応がまったくなかったのだ。

「な、なぜ!?」

 呆然とした表情でそう言ったアデルモだったが、この場にはその問いに答えられるものは、誰もいなかった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 広間の中央で醜態をさらすアデルモに、いよいよもって集まった者たちがしびれを切らし始めたころ。

 三人の神殿長のうちの一人が発言をした。

「もう、そろそろ諦めたらどうだね?」

 そういったのは、エリサミール神殿の神殿長であるローレルだった。

 この世界では、すでにかなりの高齢といえる年になっているローレルだが、未だに健在で神殿長として神殿を取り仕切っている。

「いえ、そんなはずはないのです! 水鏡は間違いなく本物で・・・・・・あっ! あの小娘が小細工を! 今すぐとってきますから、少々お待ち・・・・・・」

「いい加減にせんか!」

 そのローレルの一喝に、アデルモがびくっと体を揺らして、他のふたりの神殿長が訝し気な表情を向けた。

「ローレル神殿長?」

「何かご存じなのですか?」

 さすがにローレルの様子を見て、事情を知っているのだろうと察したのか、ふたりの神殿長がそう聞いてきた。

 

 そのふたりに、視線だけで頷きながら、ローレルは腰かけていた椅子の傍においていた包みからとある物を取り出した。

「あっ・・・・・・!」

 その取り出された物を見て、思わずといった感じでアデルモが声を上げた。

 もちろん、他のふたりの神殿長だけではなく、周囲で見ていたものたちもそれぞれが驚きを示していた。

 ローレルが出した水鏡が、アデルモが神具だと言っていた水鏡と似ていたのだ。

「私はこの水鏡の持ち主から話を聞いたが、そなたは一体どういうつもりだ?」

「ローレル神殿長?」

 ローレルの言葉に首をかしげたのは、隣に座っていたジャミール神殿の神殿長だった。

 

 問われたアデルモは、顔をゆがめていた。

「接収で神具とされる道具を回収したのはまだいい。それこそ神具が暴走しないようにするためのものだからの。だが、その本来暴走を防ぐための決まり事を使って、逆に暴走を起こしそうな騒ぎをおこすとは、一体どういうことだ!」

 ローレルの一喝に、集まった者たちは肩をすくめたりしたが、当のアデルモはわざとらしく首を左右に振った。

「神殿長がなにを聞いたのかはわかりませんが、何か誤解されているようです」

「ほう? 誤解とな?」

「そうですとも」

「その結果が、持ってくるはずの神具と間違えて、個人のものを持ってきたというわけか」

 呆れたようなローレルの言葉に、アデルモは「ぐっ」と言葉を詰まらせた。

 アデルモの傍にある水鏡が、神具ではないことは明らかだからだ。

 

 ローレルとアデルモの会話でなんとなく事情を察したのか、残りのふたりの神殿長も呆れたような視線をアデルモに向けている。

「そ、それよりも! そちらが本来神殿で預かるべき神具です! ぜひともジャミール神殿の保管庫に・・・・・・」

「必要ない」

 ここぞとばかりに自分の考えを主張しようとしたアデルモを、ローレルはバッサリと切って捨てた。

「はい?」

「この神具はすでにあるべき所にお返しすることになっている。今は私が預かっているだけだ」

「し、しかし!」

 それでも反論をしようとするアデルモを、ローレルはぎろりとにらんだ。

「なんだ? そなたは、私に意見をするつもりか? 何かきちんとした理由があるのなら述べてみせよ」

 そのローレルの言葉に詰まったアデルモだったが、目に光を宿してローレルを見た。

 

 せっかくベニートを裏切ってまで、そして接収という手段を使ってまで手に入れようとした神具なのだ。

 このくらいで諦めるわけにはいかない。

 そんな思いから、適当な言い訳がアデルモの口からついて出てきた。

「私が神具を接収しに向かったときには、その神具は間違いなくあの場にありました。ということは、許可証のある私の意見のほうが、効力があるはずです。よって、あとから所有権を主張されてもそれは無効になります」

 そのアデルモの言葉に、ローレルが肩眉を上げた。

「ほう? あくまでも自分の正当性を主張されると?」

「勿論です!」

 そのアデルモの言葉は、ローレルがあの場にはいなかったからこその強弁だった。

 接収の場にいた他の神官たちは、自分と繋がりのある者たちばかりである。

 余計なことは言わないという確信があったからこそ、神殿長を相手にして強気な態度に出ているのだ。

 残念ながら、このときのアデルモには、あの場にいた者たちについてのことは、すっかり頭から抜けていた。

 たとえ後から呼ばれたとしても、神殿に所属している神官である自分の意見が優先されると信じて疑っていないのだ。

 

 強気に出てきたアデルモを見て、ローレルは小さく笑った。

 それをみたアデルモの胸に小さな不安が灯ったが、それでも視線を逸らすことはなかった。

 アデルモから視線を外したローレルは、奥に続くドアを見た。

「・・・・・・だ、そうですよ」

 その言葉に合わせるように、そのドアから一人の巫女が現れた。

 そのときの周りの反応は、驚きを示すものと訝し気なものと二分した。

 前者はその巫女が誰なのかよくわかっているため驚き、後者は初めて見るその姿に戸惑ったのだ。

 ちなみに、アデルモは前者だったが、これは先日接収を行ったときに見た巫女で、なぜこの場所にという疑問が出たためだ。

 他の者たちとは全く事情が違っている。

 驚きを示した者たちは、その巫女であるシルヴィアのことをよく知っている者たちだったのである。

 勿論それは、現人神の巫女として、ラゼクアマミヤの女王であるフローリアに助言をする姿を見ていたからであった。

アデルモが持って行った水鏡は、考助作の水鏡でした。

あ、もう察していましたか、そうでしたか。(バレバレですねw)

そして、最後にシルヴィア登場です。

次回はシルヴィア無双かな?w

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