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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6部 第1章 水鏡
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(6)神具との繋がり

 ダナはミクセンの町外れの一角で占いをしている占い師だ。

 もともと孤児だったダナは、何が気に入られたのか占いの師匠に引き取られて、その技術を叩き込まれた。

 その師匠から何度も聞かされていた言葉が「お前は才能がないねえ」というものであり、なぜ師匠が自分を引き取ったのかダナはいまだにわかっていない。

 そのことを聞くと、師匠は決まってごまかすか口を閉ざすかのどちらかだった。

 その師匠はすでに亡く、結局理由は聞けずじまいだった。

 師匠が無くなってからすでに一年が過ぎようとしている。

 その間ダナは町を転々としながら師匠の教えを守って生きてきた。

 何とか食べていけるだけの稼ぎを出して行けたのは、間違いなく師匠から教わった占いのおかげである。

 

 そんなダナにちょっとした変化が訪れたのは、ちょうど二カ月ほど前のことだ。

 行商の馬車に混ぜてもらってミクセンに向かう途中の野営場所で、少々薄汚れた水鏡を見つけたのだ。

 ただ、汚れていたのは外側だけで、きちんとした手順で磨けばきれいな光沢が出てきた。

 その水鏡を占いの道具に使おうと思い立ったのは、ちょっとした偶然からだ。

 大きなお皿のような水鏡を洗っているときに、ふと水をいれた状態で占いの道具として使えないかと思い立ったのだ。

 水鏡の本来の使い方は、水を入れた状態で神託を得るという話を聞いたことがある。

 その神託の代わりに、占いの結果が出てくれば、と考えてのことだった。

 ためしにやってみれば、見事に占いの結果が水の上に出てきたというわけだ。

 

 それがわかってからは、毎日のように占いの道具として使っていた。

 珍しい道具を使っているということで、噂にもなり、以前いた町よりも稼ぎはよくなっていた。

 ただ、変に当たりすぎると目をつけられるということもわかっているので、当たりすぎず外れすぎずを狙っている。

 そのおかげか、当初珍しい道具を使ってする占いという噂は、今では他と変わらない変わった占いという認識に変わっていた。

 自分がいる占いの世界では、特に個人でやっている場合は変に目立っては駄目だというのは、よくわかっているのである。

 

 ダナは、ミクセンに来てからは、いつもとある街角にある建物の一室を借りて占いを行っている。

 その建物には、他にも占い師が占いを行っているスペースがいくつかある。

 基本的に個人で占いを行う者は、流れで次々と町を転々とすることが多いので、こうしたスペースを貸し出している場所もある。

 そうした共有の建物は、大きな町には必ずと言っていいほど存在しているのだ。

 

 その日ダナは、いつも通り借りているスペースへと赴いて、占いの看板を出した。

 そして、いつも通りやってくるお客に占いの結果を示していると、何組目かで乳飲み子連れの夫婦がやってきた。

 その組み合わせは特に珍しいお客というわけでもない。

 占いの内容も「この子の行く先を占ってほしい」という、ごくごくありふれた内容だった。

 強いて言えば、ご婦人のほうが美人すぎる容姿だったのが普通ではないといえたが、単にそれだけだ。

 だが、占いの最中も含めて、なぜかダナはその夫婦のことが気になった。

 そして、それは占いが終わってからも続いたのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 噂になっている占い師がいたのは、占い宿と呼ばれている流れの占い師たちが集まって運営されている建物の一室だった。

 ミクを連れてピーチと一緒に来たのは、彼女が占いに詳しいというのと、子供を連れているということで変に警戒されないようにするためだ。

 その効果があったのかどうかは不明だが、ごく普通に占いをしてもらうことができた。

「どうだった?」

「う~ん。ごく普通の占いでしたね。特に変わったところもありませんでした」

 わざわざ子育て中のピーチに来てもらったのは、噂の占い師が行っている占いを直接確認してもらうためだ。

「水鏡を使った占いは、他にはないんだよね?」

「そうですね~。でも、占いというのは基本的なところは同じですから。あとは、使っている道具とかで得た結果をどう読み取っていくか、です」

 考助は占いに関しては全くのど素人だ。

 専門家であるピーチがそういうのであればそういうものなのだろう、と納得して頷くのであった。

 

 そんな考助に、今度はピーチが聞いてきた。

「それで、肝心のあの水鏡はどうだったのですか~?」

「ああ、あれ? 間違いなく、神域から無くなった神具だね」

 あっさりとそういった考助に、ピーチは目をぱちくりとさせた。

「あれれ? 回収するために来たんじゃないのですか~?」

「うーん。そのつもりだったんだけれど、少し様子を見ようかと思って」

 そういった考助に、ピーチは小首を傾げる。

「様子見、ですか」

「うん。どうも見た感じだけれど、すでにあの持ち主と神具に繋がりができているみたいだからね。無理矢理に取り上げても意味がないと思ったんだよ」

「なるほど~。そういうことですか」

 あくまでも考助がなんとなく感じた程度でしかないが、ここはその感覚を信じることにしたのだ。

 そして、問いかけを投げかけたピーチは、その考助の感覚を疑うようなことはしなかった。

 ピーチではまったく感じ取ることができなかった両者の繋がりを感じ取っている時点で、考助の感じたことを否定するつもりはない。

 付け加えれば、そのつながりに不用意に触れれば、どういったことになるかも明らかだった。

 場合によっては、それこそ神具の暴走にも繋がりかねないのである。

 

 下手に取り上げれば、それこそ本末転倒の結果になりかねないということがわかっただけでも、考助にとっては収穫があった。

 あとは、あの神具が変な騒ぎに巻き込まれないように見ていればいい。

 そんなことを考えていた考助だったが、隣を歩いているピーチが途中から妙な顔になっているのに気が付いた。

「ん? ピーチ? どうかした?」

「えーと、そうですね~。なんでしょうね、これは」

 ピーチ自身もよくわかっていないのか、首を傾げながらそう返した。

「何か、こう・・・・・・妙な胸騒ぎがするというか、落ち着かないというか、不思議な感じです」

「もしかして、加護の力でも働いている?」

 ピーチに与えた考助の加護は、今のところ予知や占いといった方面に働いている。

 それ以外にも特殊な能力は過去に発揮しているが、あれはごく限定的な力だった。

 

 ピーチの加護が今回の件で何かを感じているのだとすれば、悠長に様子を見ているだけというのはまずいかもしれない。

 そう考えた考助だったが、こちらから迂闊に手を出せない以上、とれる方法は限られてくる。

「さて、どうしたものか」

 思わずそう言葉に出して呟いた考助をピーチが困り顔で見た。

 自分の言葉が考助を悩ませているということがわかっているのだ。

 だが、そんな顔をしているピーチに、考助は首を左右に振った。

「そんな顔をしなくてもいいよ。むしろこれからも、何か感じたらどんどん言ってもらわないと」

「はい~」

 考助のその言葉に、ピーチは嬉しそうな顔になって頷いた。

 

 ひとまず噂の占い師を見るという目的を達した考助たちは、塔の管理層へと戻った。

 初っ端から目的の物を見つけることができたのは、望外の結果と言っていいだろう。

 ピーチの様子からしても、今後のことはなるべく早く決めておいたほうがいいのだが、考助は管理層で落ち着いてから考えるつもりになっていた。

 流石に一日二日で事態が急変するとは考助も考えていない。

 それであれば、他のメンバーに相談してから決めてもいいだろうと考助は考えたのであった。

占い師ダナの登場です。

あえて本文には書いていないですが、ダナはヒューマンです。

サキュバス以外にも占い師ちゃんといます。

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