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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6部 第1章 水鏡
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(5)占い

 おばばの使いに呼び出されたふたりは、すぐに考助たちがいる部屋にやってきた。

 ピーチは同じ屋敷にいたが、長であるジゼルは別の場所にいたので多少の時間がかかっている。

 その間考助は、おばばからピーチの幼少期のころの話を聞いていた。

 途中からはピーチも混ざったおかげで、「おばば様、それは~」という悲鳴に近い声が何度か聞かれた。

 例の魅了の力のおかげで、普通ではない幼少期を過ごしていたピーチではあるが、彼女なりに生活をしていたのだと知れて、考助にとっては楽しい時間だった。

 勿論、過去のことを笑い話にして話すことができるのは、今のピーチがあるからだということはおばばもわかっている。

 あるいは、考助との出会いがなければ、ピーチの人生は非常に芳しくないものになっただろう。

 もっともそれは、一族全体にも同じことがいえるのかもしれない。

 

 長が来るまでそんな時間を過ごしていたため、彼がやってきたときに首を傾げられた。

「はて。ずいぶんと楽しそうですが、何かございましたかな?」

「なに。ピーチの昔の話をしておったのじゃ」

「なるほど。それは楽しそうですな。では、私も・・・・・・」

 ノリノリで話に加わろうとしたジゼルを、慌ててピーチが止めた。

「も、もういいでしょう! それよりも占いの話に戻りましょう!」

 そう言って慌てる一児の母を見て、他の三人の笑い声が部屋に響くのであった。

 

 若干赤面しているピーチを見ながら、おばばが占いの結果について話し始めた。

「それで、ふたりに来てもらった理由なんじゃが、『近しい者に話を聞くこと』と出てきてな」

「近しい者?」

 首を傾げる考助に、おばばが頷いた。

「そうじゃ。この場合近しい者といえば、このふたりが一番適任だと思って呼んだのじゃ」

「なるほど」

 おばばの説明に考助は頷いたが、当のピーチとジゼルは首を傾げていた。

「さて、話といわれても、思い当たるものがないですな」

「そうですね~。よくわかりません」

 そもそもピーチの場合は、おばばに出てきてもらう前に考助と話をしているのだ。

 もし何かわかっていることがあれば、そのときに話をしている。

 

 首をひねるふたりに、おばばがさらに言葉を続けた。

「こういった場合は、神具の話を直接思い浮かべるのではなく、何か近しい話はなかったかを考えればよい」

 おばばはそう言いながら、一族の者たちが集めた情報すべてを掌握している長を見た。

 勿論、言われた長もそのことはわかっている。

 それでも思い当たるものがないのは、あまりにも集まっている情報が多くて、絞り切れないためだ。

 そんなジゼルに、ピーチがふと何かを思いついたような顔になって言った。

「ここのこれ、占いのことだと思うのですが~?」

 そういいながら、おばばが出した結果の一部を指さした。

「ああ、そうじゃの」

「この場合、おばば様のことを指しているのではなく、何かの噂に関してではないでしょうか~?」

「それは・・・・・・いや、待てよ。うーむ・・・・・・」

 ピーチから指摘されたおばばは、うむむとうなったまま考え込むような顔になった。

 

 そして、ピーチの横ではジゼルが同じように考え込むような顔になっていた。

「占い師に関する噂か。うーむ。何かあったような気もするが、いまいちピンとこないな」

 そもそもサキュバスの一部の者たちは、占いを生業にしている。

 当然調べる噂の中には、その町の占いや占い師に関してのものもある。

 

 悩める三者を前にして、おずおずと考助が口を挟んだ。

「あの~。何やら難しく考えすぎているようなんですが、他の道具よりもちょっと力が強いとか、変な性質を持っているとか、そういった噂でもいいんですよ?」

「そうか!」

 考助のその助言(?)にそう声を上げたのは、おばばだった。

「やれやれ。儂もまだまだ未熟じゃの。若いふたりに教えられるとは。いや、さすが神を名乗るだけあるというべきかの?」

 そういって自分を見てきたおばばに、考助は照れた様子で手を振った。

「そんなことは。自分なんて神としてはまだまだ新参者ですよ」

 それは、考助の掛け値なしの本音だ。

 そんな考助を見て、他の三人は顔を見合わせてから笑うのであった。

 

「それで、肝心の占いはどうなのでしょう~?」

 話を引き戻すようにピーチがおばばへと聞くと、ひとつ頷いてからおばばがジゼルへと顔を向けた。

「儂も神がかかわっておると気負いすぎていたようじゃの。この場合は、単純に変わった占いをしている占い師の噂がないかを聞くべきじゃったようだ」

「変わった占い? ・・・・・・ううむ」

 おばばにある程度限定された問いかけをされたジゼルは、長として受け取った情報の中から当てはまるようなものがないかを思い出しはじめた。

 ここで紙に書かれた書類で確認しないのには、きちんとした理由がある。

 紙で書かれた情報から取捨選択をすると、どうしても先入観や思い込みなどが混ざることがある。

 大本が占いの場合は、自分の頭に残っている情報だけを頼りにするというのが、サキュバスの昔からの習慣なのだ。

 

 腕を組んで悩むジゼルに、さらにピーチが付け加えてきた。

「もしかしたら、変わった道具を使ってする占い師、とかはどうでしょうか~?」

 そのピーチの言葉で、ようやくジゼルはようやく一つの噂を思い出した。

 占いという性質上、変わった方法で行う者は数多あまたいるが、変わった道具を使うとなるとかなりの数が絞り込まれる。

 その中からさらに、考助が探しているような道具を使う者となると、今のところジゼルにはひとつしか思い浮かばなかった。

「そういえば、そういった噂がひとつあったな」

「おお!」

「本当ですか~? それはどんな?」

 ジゼルの言葉に考助が喜び、ピーチがそれを抑えるようなしぐさをしてジゼルに問いかけた。

「なんでも巫女たちが使う水鏡を道具に占いをしておるという話だったな」

 巫女や神官が使う道具は、基本的に神託を得たり、魔法の媒介にするために使われるものがほとんどである。

 それらは、神たちが作ったか神たちから授けられたという意味の神具とはまた違った意味で神具と呼ばれている。

 

 神具を探している考助の話を聞いていたのに、ジゼルがなぜすぐに思い出せなかったのかといえば、単純な理由がある。

「ただ、占いの腕に関しては、ごくごく普通だという話だったんだが・・・・・・」

 そういって首をひねるジゼルに、ピーチが首を左右に振った。

「何かの理由でわざとそうしているということも考えられます。調べてみる価値はあると思いますよ?」

「そうだね」

 ピーチの言葉に、考助も同意するように頷いた。

 というよりも、すでに考助はその占い師を訪ねてみる気になっていた。

 別に何かの勘が働いたとかそういうわけではない。

 せっかくジゼルやおばばが動いてこの結果が出たのだから、一度は調べたほうがいいだろうと考えてのことだった。

 

 考助の表情からすでに行く決意をしたと察したピーチは、ジゼルを見て訪ねた。

「それで、その占い師がいるというのは、どこなのでしょう~?」

「それがなあ・・・・・・」

 ピーチに視線を向けたジゼルは、いったん言葉を区切ってその占い師がいる町の名前を告げた。

 その町の名前に、考助もピーチも目を丸くした。

「それはまた、よくもまあ堂々と商売できているなあ」

「ですね~。妨害されているとかは、ないのでしょうか?」

「その辺はうまくやっているといったところなんだろう。言われてみれば、腕が平凡というのもそのあたりのことが関係しているのかもしれん」

「なるほど。確かにありそうですね」

 ジゼルの説明に、考助は頷くと同時に決断するのであった。

 まずは、今ジゼルが言った占い師を訪ねてみよう、と。

ようやく、次に向かうべく足がかりを得ました。

町の名前は次話で発表ですw

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