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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6部 第1章 水鏡
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(2)依頼

「以前に、あそこに保管してある道具たちの話をしたこと覚えている?」

 アスラはそういいながら、執務室のある一角を指さした。

 そこは、考助が何度もお世話になっている屋根裏部屋がある場所だった。

「うん。覚えているよ。・・・・・・って、まさか?!」

「そう。想像している通りだと思うわよ。あそこにあった道具がいくつか行方不明になっているのよ。ついでに、いつの間にかその紙が置かれていたというわけ」

「うわー・・・・・・」

 アスラはさらりと言っているが、考助は思わず頭を抱えてしまった。

 以前アスラから話を聞いた、あの部屋に保管されている道具のやばさを思い出したのだ。

 だが、そんな考助に、アスラは首を左右に振った。

「そんなに深刻な事態ではないから大丈夫よ。行方不明になっている道具も、そこまで危ないというわけでもないから」

 そんなことを言ったアスラに、考助は疑いのまなざしを向けた。

 アスラは、世界を支える女神だけあって、考助から見ても普通の感覚とはずれていることがある。

 この場合にアスラが言う深刻な事態というのは、大陸が半壊したり劇的な環境変化が起こったりするようなことだったりする。

 

 これまでの付き合いでそのことを見ぬいた考助は、念のためどの程度のものなのか確認することにした。

「ちなみに、その道具が暴走して起こると思う最悪の事態は?」

「さあ? 今までそんなことになったことがないからよくわからないわ。でも、せいぜい半径百キロくらいにクレーターができるとかじゃないかしら?」

 あっけらかんとそう言ってきたアスラを見て、考助はすぐに回収に向かおうと決意した。

 管理層ではさんざん人との違いを言われている考助だが、アスラはそれ以上に感覚がずれている。

 もっとも、これくらいの感覚を持っていないと、一つの大きな世界の管理者などできないといえるのかもしれない。

「なるほどね。それで? その道具はどこにあるの?」

「さあ? わからないわ。一か所にまとまっているわけでもないみたいだし」

「・・・・・・・・・・・・ん? ちょっと待って」

 アスラの言葉に、自分との認識がずれていることを自覚した考助は、こめかみに右手の人差し指を当てた。


「まず聞くけれど、なくなった道具がどこにあるかは、アスラにもわからないということ?」

「そうよ。というか、わかっているんだったら、そもそもあそこから無くなっているのもすぐに気付けたでしょう?」

「えーと、それはつまり、道具が無くなってからそれなりの期間が経っているということ?」

 考助の確認に、アスラが一度だけ頷いた。

「そうよ。ただ、二カ月以上前ってことはないわ」

「うん? それは何で?」

「簡単な話よ。前にあそこを掃除したのが、二か月前だったから」

 今回道具が無くなっていることに気付けたのも、アスラがあの部屋の掃除をしていたからだった。

 考助が避難場所に使っている屋根裏部屋に関しては、アスラ以外誰も手をつけることができないので、彼女自身が掃除を行うことにしているのだ。

 

 アスラの簡単な推理に、考助は頷いてからさらに質問を続ける。

「あとは、一か所って言っていたけれど、なくなったのは一つじゃない、とか?」

 できれば否定してほしいと願う考助だったが、これまたアスラはあっさりと頷いた。

「そうよ。全部で三つね。というよりも、そこにちゃんと書いてあるじゃない?」

 アスラは、考助が持っている紙を指さした。

 慌ててもう一度その文面を確認した考助は、確かにそこに「×3」と書いてあるのを再確認した。

 あっさりとスルーしていた考助もうかつだったが、まさかそういう意味だとは思っていなかった。

 この文書を残した者(物?)の性格がなんとなくわかる表現方法である。

 どの道具がこの文面を残していったのかはわからないが、なんとなく先行きが思いやられる事態に、考助はため息を吐くのであった。

 

 アスラから聞いた話をまとめると、二か月前に部屋の掃除をしたはずの道具が、今日同じように掃除をしようとして無くなっていることに気が付いた。

 よくよく部屋を見回すと、今考助が持っている置手紙が置かれていたというわけだ。

 無くなった道具は、全部で三つ。

 屋根裏部屋に何気なく置かれていた道具だが、それはアスラだからこそで、アースガルドの世界にあっては、その価値は計り知れないものになる。

 そもそもアスラが直接管理している道具なのだから、それは当然のように神具となる。

 もしそれが神具と明るみになれば、間違いなくそれだけで騒動の種となるだろう。

 考えるだけで頭の痛くなる状況だった。

 

「そういえば、なんで今回みたいな呼び方をしたの?」

 話を聞けば、神域から無くなった道具を探しに行くだけのことだ。

 考助にしてみれば、別にエリスにまで隠しておくようなこととは思えなかった。

 だが、そんな考助にアスラは首を左右に振る。

「何を言っているの。もし、このことがばれて、あの子たちがどう言い出すか、想像してごらんなさい」

 アスラにそういわれた考助は、目を閉じてそのときの状況を脳裏でシミュレートした。

 

 まずは、エリス。

 アスラから報告を受けたエリスは、すぐさまその道具を捜索する手配をとろうとするだろう。

 慎重な彼女のこと、さすがに自ら動いて探そうとはしない。

 となれば、当然彼女が普段仕事の手伝いとして使っている他の女神たちに依頼をすることになり、そこから他の女神に伝わり・・・・・・あとはなし崩し的に神域は大騒ぎになる。

 たとえエリスが口止めをしても無理だろう。

 何しろアスラからの依頼という大義名分があるのだから。

 そうなってしまうと、さすがのエリスも彼女たちを止めることはできなくなる。

 下手をすれば、何人かの女神がアースガルドに降臨するなんてこともあり得るかもしれない。

 

 続いてスピカ。

 彼女の場合は、エリスと違って誰かにこの話を漏らすということはしないだろう。

 ただ、この場合に問題になるのは、彼女自身が動くことになるということだ。

 アースガルドの世界において三大神のうちの一柱に数えられる彼女の降臨。

 はっきり言えば、三つの道具が無くなったことよりも事態は大げさなものになってしまう。

 

 最後にジャル。

 ・・・・・・だったが、彼女の場合は想像するまでもなく駄目だろうと、考助もすぐにわかった。

 間違いなく大騒ぎをして周辺にまき散らしてしまうだろう。

 繰り返しになるが、アスラからの依頼という大義名分があるために。

 下手をすれば、エリスのとき以上の騒ぎになる。

 もしくは、スピカのパターンと同じで、自分自身がアースガルドの世界に降臨するか。

 どちらにしても、あまり考えたくない事態に発展するのは間違いなかった。

 

 三人の行動パターンを想像した考助は、首を左右に振った。

「ああ、うん、はい。ごめんなさい。僕が間違っていました」

「でしょう?」

 短くいったアスラに、考助は苦笑を返すことしかできなかった。

 そんな考助に、アスラがさらに重要なことを言ってきた。

「それに、今回の件はあなたも多少は関係あるからね」

「はい?」

 身に覚えのない言葉に、考助は首を傾げた。

「どうやら隠れ場所として使っているうちに、あなたとの繋がりを持ってしまったみたいなのよねえ」

 考助が来る前は、アスラが掃除をするためだけに出入りしていた部屋だ。

 それが、考助が何度かその部屋を使っているうちに、いつの間にか繋がりができてしまっていたのである。


 意識していなかったこととはいえ、自分にも原因があると分かった考助は、大きくため息を吐いた。

 誰に頼むのが一番いいのかを置いておくとしても、やはり自分が回収するのが一番いいと思う考助なのであった。

アスラからの依頼(?)内容でした。

今回の件は、考助にも原因がありますw

ようやく伏線が回収できました。

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