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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6章 ガゼンランの塔再び
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(19)周辺調査その2

 シェリルはガゼンランの塔に入るためのカードを作成せずに、素通りで第七十層へと向かった。

 カードなしでも持っている人が一人でもいれば、転移門が使えることは既に確認済みである。

 また来るのであれば作っておいても無駄にはならないが、そもそもシェリルがここに来ることはもうないだろうと判断した。

 第七十層へと着いた考助たちは、すぐに神殿へと向かう。

 まずはシュレインたちが作った地図もどきを見てもらってから、実際に調査に赴いてもらうことになっている。

 さらに、アマミヤの塔へと戻ったのは考助とミツキだけだったので、寄り道をしている余裕が無かったのもある。

 ただし、いくら真っ直ぐに神殿に向かったとはいえ、転移門からはそれなりに距離がある。

 魔法陣を使って転移でも出来るようにしておけばよかったと後悔しつつ、それでも半日も掛からずに神殿に着くことが出来た。

 

 神殿に着いた考助たちは、すぐに地図のチェックをというわけではなく、のんびりと休んでいた。

 周辺の調査に関しては、別に急ぐ必要もない。

 それに、旅慣れている考助ならともかく、普段は里とドリーの樹の間を往復するくらいしかしていないシェリルにとっては、転移門から神殿の間の道もかなりの強行軍だった。

 流石に上級モンスターが頻繁に出てくる階層を移動するのは初めてだったので、結構な神経を使っていたように見て取れた。

 そのためにもまずはゆっくりと休んでもらうことにしたのである。

 

 と、いうわけで、シェリルは休憩を取ったあとで、シュレインたちが作った地図を確認した。

 そして、その地図を目にすると同時に、驚きの声を上げた。

「これは、凄いですね。よくここまで詳細に・・・・・・」

「そう言ってくれるのはありがたいがの。目についたものを書き連ねていっただけじゃ。あとは、ワンリの鼻のおかげだの」

 シュレインは、そう言いながら狐の姿になっているワンリを撫でた。

 狐の姿になっているのは、別に人型になれることを隠そうとしたわけではなく、たまたまシェリルが来たときはその姿だっただけである。

 機会があれば人の姿になることもあるだろう。

「それに、あくまでも群生している物だけを書いているからな。他に重要な野草とかもあるかも知れない」

「確かに、それはそうですね」

 フローリアの付け足しに、シェリルも頷いた。

 場合によっては、そうした細かい植生も影響を与えている可能性もある。

 流石にそうした物までは、地図上に反映することは不可能だ。

 そんな物まで記載していると、いつまでたっても調査が進まないことになってしまう。

 

 ジッと地図を見ていたシェリルだったが、やがて首を左右に振った。

「駄目ですね。やはりきちんと現地を見てみないと、分からないことが多いです。・・・・・・申し訳ありません」

「何。これはあくまでも目安でしかない。これだけの情報で全てを知ろうなんて、無謀なことは考えておらんよ」

 シェリルの言葉に、シュレインが苦笑しながら答えた。

 自分たちが作った地図は、あくまでも目安のものでしかないことは、よくわかっている。

 何より、地図に載せているのは、表に出ている部分だけである。

 そもそもの目的を考えれば、地下水や水脈の状況など他にも見るべきところはたくさんあるだろう。

 

 シュレインもフローリアもそれが分かっているため、地図では情報が足りないと言われても特に怒ったりはしない。

 むしろ、足りない情報を付け足すことが重要だと分かっている。

「そういうことだ。それで? 今日はどうする? 時間に余裕はあるが、別に焦る必要はないぞ?」

「いいえ。折角ですから、この神殿の近くだけでも確認したいです」

「そうか。それじゃあ、準備をしよう」

 いくら神殿周辺とはいえ、出てくるモンスターは上級のものだ。

 いくらミツキかコウヒがついてくるとはいっても、準備なしに外に出るような無謀なまねはできない。

 考助やシェリルは、先ほど階層を横切ってきたため今の状態でも大丈夫だが、シュレインやフローリアは完全に部屋着になっている。

 そのためフローリアは、そう言って立ち上がり、準備をするため自分の部屋へと向かうのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 神殿の外へ出たシェリルは、まずその周辺をぐるりと回って歩いていた。

 時折しゃがみ込んでは、土を触ったりしている。

 そして、神殿の周囲を一周しおわってすぐに、考助のところに近寄って来た。

「あの・・・・・・コウスケ様は、エセナ様と連絡はとれますか?」

 シェリルは元世界樹の巫女だ。

 出来ることと出来ないこともある程度知っている。

 考助とエセナの関係は、巫女とは違うが、それ以上のことができることは分かっている。

 そのため、離れた場所にいるはずのエセナと連絡が取れるかどうかを聞いてきた。

「エセナと? うーん。ちょっと待ってね。・・・・・・エセナ、今大丈夫?」

 実は、考助もどういうタイミングでエセナが答えるかは分かっていない。

 エセナにも世界樹としての役目があるので、好き勝手に出て来れないというのは分かっているが、その時々によってまちまちなのだ。

 考助が、エセナに用事があるときに呼びかけると、大抵のときは出てきてくれるが、出てこないときもある。

 

 幸いにして、今はエセナも重要な作業をしていたとかではないようで、すぐに考助の目の前に現れた。

「コウスケ兄様、どうされました?」

 すっかり大人びた姿になっているエセナが、僅かに首を傾けながら聞いてきた。

「ああ、突然ゴメンね。実は、僕じゃなくて、シェリルが何か聞きたいことがあるみたいだ」

 考助はそう言ってシェリルへと視線を向けたが、その当人は予想外のことに目を見開いていた。

 シェリルとしては、話ができるかどうか聞きたかっただけで、まさか世界樹の妖精当人がこの場に現れると思っていなかった。

 そもそも世界樹の妖精は、世界樹から離れることはできないというのがシェリルにとっての常識だったのである。

 

 考助から水を向けられたシェリルは、ハッとした表情になり、慌てて頭を下げた。

「申し訳ありません! まさかエセナ様がいらっしゃるとは思ってもおらず・・・・・・!」

「それは良いですから、なにか用があったのですよね?」

「は、はい! あ、あの・・・・・・この辺りの地脈の状況はお分かりになりますか?」

 恐る恐るといった様子で聞いてきたシェリルを見てから、エセナはぐるりと周囲の様子を見渡した。

「・・・・・・この神殿の周りでいいのですか?」

「ああ、そうだね。お願いしていい?」

 自分から頼んだ方が良いだろうと考えて、考助はエセナに向かって言った。

 エセナはそれに頷き、もう一度辺りを見回す。

 考助たちからすれば、ごく普通の風景が広がっているように感じるが、エセナにはなにか他のものも見えているのだろう。

 

 エセナに頼まれて一度だけぐるりと神殿の周辺を回った。

 そして、元の場所に戻ってきてからエセナが口を開いた。

「シェリル。貴方が想像した通り、この場所には地脈の交点があるようです。あと、それに重なるように水脈も集まっているようです」

「やはり、そうでしたか」

 エセナの言葉に、シェリルは頷きを返した。

 さらに、シェリルが知りたかった地脈の交点についてだけではなく、水脈の状況まで教えてくれた。

「へえ? やっぱりそうなんだ。じゃあ、神殿の中にある泉は、その水脈からくみ上げたもの?」

「はい。そうです」

 考助の問いかけに、エセナははっきりと頷いた。

 これで、少なくとも神殿にある泉は、単純にその場で湧いているのではなく、周辺から集まった地下水ということがわかった。

 最初からエセナに聞けばよかったと思わなくもない考助だったが、そもそも彼女に聞くという発想が思い浮かばなかった自分が悪い。

 これは、考助だけではなく、シュレインやフローリアも同じだった。

 それに、これから先の調査は、どうしてもエルフの知識が必要になる。

 色々な意味で、シェリルを連れてきて正解だったと思う考助なのであった。

エセナ登場!

すっかりおとなになったエセナです。

彼女は世界樹としての役目があるので、頻繁には出て来れません><

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