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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 塔に向かおう
7/1358

(5)初遭遇

20時に2話分投稿しています。前話読んでいない方は、前話をお読みください。

本日投稿はここまでです。

 考助がアースガルドに来てから五日目。

 三人はコーたちから降りて、徒歩でリュウセンの街へ向かって歩いていた。

 コウヒによると後半日もせずに街に着くとのことだった。

 コーたち飛龍は、一緒に行くと目立ってしまうので、途中の山の麓で放してある。

 考助がコーに呼びかければ、かなりの距離離れていてもコーが気づいて飛んできてもらえるようになっている。ここまでの移動の間に試してみて、そういったことが出来るのがわかったのだ。

 移動の最中も神の左目は、使いまくっていた。

 だが、残念ながら大したことはわかっていなかった。

 見る対象が植物とか鉱物(石など)ばかりに偏っていたので、これはしょうがないと思っている。

 なにせこの五日間、コウヒとミツキ以外の誰にも会わなかったので、どうしようもない。

 街に行けば多少の進展はあるだろう。

 というか、ここまで人に会わないとは思わなかった。

 話には聞いていたが、ほんとにこの大陸はほぼ未開の地なんだということを実感した。

 空を飛んでいる間、街道らしきものすら全く見当たらなかったのだ。

 最後の山を越えて、視界の先に海が見えたその手前に、ようやく道らしき道を確認することができたのだ。

 今はその道を通って、街に向かって歩いている。


 歩きながら草やら虫やらを左目で確認しながら歩いていた考助は、コウヒとミツキが視線を交わしているのに気付いた。

「なんかあった?」

「いえ、どうやらこの先で戦闘が起こっているようです」

「・・・戦闘? ・・・ああ、あれ?」

 考助の視力では言われて初めて、なんか起こってるかな?、程度のことしかわからない。

「・・・どんな状況かわかる?」

 基本こういう時は、二人は自分から動くことはないのが分かっているので、先に聞くことにしていた。

「うーん・・・馬車らしきものがあって、それを魔物が襲ってるって感じかな?」

「襲われてる方が、わずかばかり劣勢でしょうか」

「そうねー」

 それを聞いた考助が、イベント来たー、と思ったのは、どう考えてもそういうものに毒されている、と言われても仕方がないだろう。残念ながらそれを突っ込む者はここにはいなかったが。


 わずかばかり考えて考助は、ミツキへ指示をした。

「ミツキ、間に合う?」

「大丈夫よ」

「じゃあ先に行ってきて。・・・あ、翼は無しでね」

「はーい。じゃあ、行ってくるわ」

 この世界は人族以外もいるというが、さすがに翼を持った種族はいないということなので、翼は出さないように言う。ちなみに飛龍たちから降りた時点で、二人は翼を消して行動していた。

 ミツキを先に行かせて、考助たちも先を急ぐ。

 コウヒは考助の護衛である。途中で魔物が出ないとも限らないからだ。

 ちょっとの間くらい、というのが甘い考えであるのは、この数日間で学習した。

 もっとも考助が二人ともに行くように指示したとしても、絶対にどちらか一人は残っただろう。


 考助とコウヒが現場へ着いた時には、戦闘はすでに終わっていた。

 馬車の護衛らしき数人で、片づけ(主に魔物からの素材取りなど)をしている。

 ミツキは、二人の人物と話をしていた。

 考助は、ミツキに近づこうとして、作業をしていた男に止められた。

「お前ら何者だ? ・・・グェ!?」


(あー・・・いきなり剣なんて向けてくるから・・・)


 剣を突き付けてこちらを警戒した人が、コウヒに投げ飛ばされていた。

 さすがにその音でこちらに気付いた男たちが、殺気を飛ばしてきた。

「やめなさい!」

 男たちへミツキの一喝が飛んだ。

「ミツキ殿、お知合いですか?」

 ミツキと会話をしていたうちの一人がミツキへ問いかけた。

「私の御主人様よ」

 ミツキがそういった瞬間、周囲の雰囲気が今までとは別の種類の殺気に変わった気がする。


(・・・気のせいだよ、気のせい・・・・・・いや、現実逃避はやめようか)


 言うまでもなくミツキはスタイル抜群の美人である。そんな人物が、先のような言葉を言えば、どうなるかは想像に難くない。

 しかも隣には同レベルのコウヒまでいる。

 いまさらながらに考助は、そんな二人を連れ立って町で歩き回る危険性に気が付いた。だからと言ってもどうしようもないのだが。

 それはともかく、コウヒと共に考助の方へ近づいてきた人物がこの集団の中心人物のようだ。

 左目で確認してみた。


 固有名:シュミット・アナーキー

 種族名:人族

 固有スキル:計算LV4 商人LV4 短剣LV1 他(未開放)

 天恵スキル:幸運LV3

 称号:商売の加護


(おおう。なんかすごい商人向きの人だ)


 とか考えていたら、向こうから自己紹介された。

「初めまして。シュミット・アナーキーと申します。この商隊の隊長をしています。といっても商人は私だけで、後の者たちは雇った護衛なんですが」

「どうも、初めまして。考助と申します。ミツキとはパーティーを組んでいます」

「先ほどミツキ殿から聞きました。貴方が私どもを助けるように指示されたとか。おかげで助かりました」

「いえいえ。間に合ってよかったです」

 笑顔で挨拶をかわしながら考助はシュミットが探るようにこちらをうかがっているのに感づいていた。

 さすが商売人である。

「ミツキ殿にもお話ししたんですが、今回の謝礼について伺ったところ貴方様に伺ってくださいとのことですが、いかがいたしましょうか?」

 言われた考助は、しばし考えた。

 そもそも相場などわかるはずもない。

 考助個人としては、自分が動いたわけでないので謝礼など必要ないのだが、ミツキは確実にこの商隊を救っているので後のことを考えると何かしらの物をもらった方がいい。


「そうですね・・・そうだ。二つほど頼みたいことがあるんですが、いいでしょうか?」

「伺いましょう」

「一つ目はリュウセンまで私たちも馬車に乗せてもらえないでしょうか、ということと、もう一つは素材をある条件で買い取ってもらいたいんです」

「馬車の方は問題ありません。素材を買い取るのも問題ありませんが・・・条件ですか?」

「ええ。ちょっと事情がありまして・・・私たちから仕入れたことが分からないようにしてほしいんです」

「ああ、なるほど。そういうことですか。そういうことでしたら特に問題ありません・・・が、それですと私のほうの利が大きい気がしますが?」

 これに考助は苦笑した。

 商人にしては正直すぎる。

「そうなんですかね? ・・・正直この辺の相場というものがよく分かってないんですよ」

 考助の様子に気が付いたのか、シュミットが笑顔になって、

「今回のことは、確かに私どもだけでも対処はできたでしょうが、さすがに今のように無傷とはいかなかったでしょう。それを考えれば金銭などの支払いも当然と考えますが?」

「・・・なるほど」

 なんとなくシュミットも考助たちが訳ありなのに気が付いたのだろう。

 この場で決めるのは避けることにした。

 いつ魔物の襲撃があってもおかしくないのだから。

 幸いにして、馬車の同行を言われてるのでその中で話をすればいいだろう。

「わかりました。とりあえず、馬車に入って話をしませんか? いつまでもここにいると危険でしょう」

「そうですね。よろしくお願いします」

 考助が頷くのを見てからシュミットが、周りで働いていた者たちに出発をすることを告げた。


 シュミットが指示を出している間、考助は護衛のリーダーらしき男へ話しかけた。

「すみませんでした。あなた方の商売の邪魔になってませんでしたか?」

 男は一瞬面をくらったような表情になり、ワハハと笑って考助の肩をポンポンとたたいた。

「気にすんなや。俺たちゃ固定で金をもらってるからな。何匹倒したとかは関係ないのさ。それに、助けてもらわなけりゃ犠牲が出たろうしな」

「そうですか。それはよかったです」

「おうよ。それにしてもお前さん、律儀だな」

「そうですか?」

「まあな。普通はそんなこと言ってくるやつなんていねーぞ」

 その言葉に考助は、苦笑を返すことでごまかした。

 自分がこの世界で一般的な考え方をしていないことは、これから先いくらでも自覚することになるのだろう。


 そんなことを話していると、シュミットが来て馬車に乗るよう促された。

 考助達とシュミットは同じ馬車である。

 さっそく先ほどの商談の続きをするつもりなのであろう。

 ついでに今話しかけた男も同じ馬車に乗り込んできた。

 予想した通り護衛のリーダーで、ゴゼンとシュミットから紹介された。

 こうしてようやく考助達を含めた二台の馬車が、リュウセンへ向けて出発したのであった。

次話投稿は翌日20時投稿。


2014/5/22 誤字脱字修正

2014/6/3 誤字修正

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