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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6章 ガゼンランの塔再び
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(10)泉の秘密?

 ガゼンランの塔にきて一番の大忙しは間違いなくシルヴィアである。

 といっても、四六時中働いているわけではなく、空いている時間を使って壁画の研究なども行っていた。

 考助からすれば、それも仕事(?)の範疇に入りそうな気もするが、本人にとっては趣味の一環のようだ。

 適当に空いた時間を見つけては、壁画の研究に勤しんでいる。

 そちら方面の手伝いをしているのは、意外というべきかむしろ当然というべきか、フローリアだった。

 一国の王女として生まれたフローリアは、歴史の勉強もしている。

 国家の歴史というのは、神話と表裏一体のところがある。

 そのため、神官や巫女ほどではないにせよ、神話についても学ぶことになるのである。

「これは・・・・・・で、・・・・・・だから・・・・・・」

「いえ。おそらく・・・・・・なので、・・・・・・・だと思います」

 こんな感じで、壁画を前にしながらシルヴィアとフローリアの会話がされていた。

 

 そんな中で考助は、採取活動に勤しんだり、素材加工に励んだりしていた。

 魔法陣は、自らの魔力や神力だけで作るだけではなく、素材を使って作る方法もある。

 特に魔道具に関しては、素材を使って魔法陣を維持するのがほとんどなので、素材は重要な位置を占めているのだ。

 ここに来ているのは、新しい化粧品の開発のためとはいえ全ての素材を利用できるわけではない。

 残った素材は、考助の魔法陣開発に使われることになる。

 

「お。フリージアの根だ。シルヴィア! これ使って良い?」

 素材置場に置かれている素材を見ていた考助は、端の方に避けられている素材の中から使えそうなものを見つけてシルヴィアに確認を取った。

 考助と同じように素材の整理をしていたシルヴィアは、考助が手に持っている素材を見ながら頷いた。

「ええ。それは大丈夫です。・・・・・・これは、一度ちゃんと整理したほうがよさそうですね」

「そうだねえ」

 考助とシルヴィアは、辺りを見回しながらお互いに頷いていた。

 今ふたりの周囲にあるのは、ここ四日分の採取の結果である。

 神殿の周囲は、特に薬草の類が非常に豊富に存在しているため短期間であっという間に素材が集まっていた。

「じゃあ、僕はしばらく採取は控えて、在庫の管理でもしようか」

 どんな素材がどれくらいあるのかをきちんと管理しないと、必要のない素材まで取ってきてしまい、最終的には腐らせてしまう等、勿体ないことになってしまう。

 もっとも、コウヒかミツキのアイテムボックスにしまえば、そうしたことも起こらないのだが、気分の問題である。

 さらにいえば、アイテムボックスにしまっておく場合でも、何がどれくらいあるかを把握しておかないと、死蔵してしまうことになりかねない。

「そうしてもらえると助かりますわ」

 シルヴィアとしても素材の管理は反対する理由がないので、すぐに同意してきた。

 個人個人がそれぞれ管理している場合はあまり必要ないのだが、複数人で使うとなるときちんと記録して管理したほうが分かりやすい。

 反対する理由など見当たらないのである。

 

 考助が素材管理を担当することになったので、神殿周辺への素材の採取や討伐は、シュレインやフローリア、ワンリが担当することになった。

 それに、コウヒかミツキのどちらかが付くことになる。

 といっても、今は素材が過剰にあるので、そんなに頻繁に外に出ているわけではない。

 むしろ、フローリアの戦闘能力を上げるためにモンスター狩りに行っているといった方が正しい状態だった。

「コウスケ、どうだ!」

 フローリアが「戦果」を掲げながら、考助に見せびらかしに来た。

「ん? おお! 伴悌鼠じゃないか。ひとりで狩れたの?」

「勿論!」

 まだ戦闘時の興奮が冷めていないのか、フローリアは多少鼻息が荒くなっている。

 それを苦笑しながら見ていた考助だったが、ふとワンリへと視線を向けた。

「ワンリはどうだったの?」

「えっ!? えーっと・・・・・・」

 考助に問われたワンリは、チラチラとフローリアを見ながら困ったような顔になった。

 それだけで事情を察した考助は、ポンとワンリの頭に手を置いた。

「うん。まあ、それぞれが頑張ればいいよね」

「・・・・・・それで、フォローしているつもりか?」

 考助のフォローになっていないフォローに、フローリアの目が鋭くなった。

「い、いやほら。そもそもの地力が違うんだし、ちゃんと上級ランクのモンスターが狩れるようになったフローリアは凄いよ!」

「そうだろう!」

 必死に言い訳をする考助に、フローリアはころりと態度を変えた。

 勿論、先ほどまでの態度はただの演技で、本気で怒っていたわけではない。

 考助も分かってはいたが、敢えて付き合っていたのである。

「ほれ。いつまでも遊んでないで、きちんと処理をしたらどうかの?」

 二人の茶番を傍で見ていたシュレインがそういうと、考助とフローリアのふたりは、肩を竦めてそれぞれの仕事に戻るのであった。

 

 その日の夕食。

 考助はシルヴィアに問いかけた。

「それで、水の効能の詳細は分かったの?」

 その考助の言葉に、シルヴィアの表情が曇った。

「それが・・・・・・どうにもよくわからないのです」

「え? どういうこと?」

 『ラスピカの水』と『スジャルの水』はともかく、『アエリスの水』は広く知られている素材である。

 考助は、ある程度の効能は知られていると考えていたのだが、シルヴィアの表情を見る限りでは、どうやらそうではないらしいことがわかった。

「『アエリスの水』を使った美容液のレシピは比較的有名なので私でもすぐに作ることが出来ました。ですが、他の素材を別のものに置き換えると、全く違ったものが出来てしまうのです」

 普通であれば、似たような素材で置き換えれば、効果が落ちたとしても同じような効果を持つ物が出来るはずである。

 しかしながら、『アエリスの水』を使っていると、それとは全く違った効果が出てくるのだ。

 そのため、シルヴィアのここ数日は、それらの変化を確かめるだけで手一杯の状態になってしまっている。

 そうした変化をきちんと掴めないと、そもそもの目的である化粧品など作ることなど不可能だ。

 手当たり次第に適当な素材を使って作っても良いが、それはまぐれ当たり狙いになってしまう。

 まさしく今のシルヴィアは、急がば回れ状態なのである。

 

 シルヴィアから話を聞いた考助は納得したように頷いた。

「なるほどねー。これは、一つ目を完成させるまでに、かなり時間がかかるかな?」

「恐らく。申し訳・・・・・・」

 謝ろうとしたシルヴィアに、考助はひらひらと手を振った。

「いや、シルヴィアが謝ることじゃないから。そもそもここの水を使おうと決めたのはみんなだしね。その結果時間がかかるのは、別に構わないよ。変に妥協するよりも」

「そうだな」

 考助の言葉にフローリアが同意して、シュレインも頷いている。

「シルヴィアはしっかりと時間をかけて作っていけばよい。別に今すぐに欲しいというわけでもないんじゃろ?」

「う、うん!」

 シュレインから視線を向けられたワンリが、大きく頷いている。

「それに、もしかしたらこの辺りに薬草の類が多いのも、その辺が関係しているのかもね」

 考助の言葉に、シュレインが驚きの表情を向けた。

「と、言うと?」

「もしかしたら周辺にある薬草とか野草とかの成分が溶け出して混ざったものが、ここの泉として湧き上がっているんじゃないかなとか、考えていたんだよね」

「・・・・・・それは、十分に考えられますわ」

 勿論、少し離れた範囲だけではそんなことは考えにくいだろう。

 だが、階層全体がそうした状況になっていれば、もしかしたらそうしたこともあり得るかもしれない。

「階層全体に計画的に効能のある物をきっちり配置して、この神殿に地下水が集まるようにして泉が作られている・・・・・・と考えるのは、不自然じゃない気がしてるんだよね。作った相手が相手だけに」

 既に壁画の確認をしているシルヴィアたちは、考助が言ったのが誰であるかはすぐに理解できた。

 相手が三大神よりもさらに上の存在であれば、そうしたことも出来たかもしれない。

 「彼女」は、そう思わせるのには、十分すぎるほどの存在なのであった。

今回は泉の秘密に迫ってみました。

実際に当たっているかどうかは、まだわかっていませんw

あくまでも今回はただの推論です。

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