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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第5章 塔のあれこれ(その13)
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(5)魔力の使い方

 第五層にできた魔力供給施設は、無事に稼働が出来ている。

 ただし、現状生産した魔力を供給できているのは、大量に魔力を使う魔道具生産を行っている工房や屋敷内で大量の魔力を使う魔道具を使っている大口の顧客くらいだった。

 どうすれば一般の家庭にまで利用が広められるか、悩むラゼクアマミヤとクラウンの者たちが、管理層の会議室に集まっていた。

「・・・・・・というわけで、出来れば知恵をお借りしたいのです。父上」

 現状の説明を終えたトワが、考助を見てそう言った。

 王国内やクラウン内で、今後をどうするのかという会議が行われているそうだが、何分初めての大規模施設なので、どのように広めればいいのか、決定的な意見が出てこないらしい。

 それならばいっそのこと考助の意見を聞いた方が早いだろうと、こうして雁首揃えてお伺いに来たのだ。

「うーん。知恵・・・・・・貸すのはいいけれど、本当に良いの?」

 考助は首を傾げながらそう言った。

 

 別に自分が持っている知識をトワやクラウンのメンバーに差し出すのは構わない。

 ただ、そうすることによって、いつも自分を頼ってくるようになると困る。

 それだけではなく、与えられた知識だけを使って国の維持管理をして行くと、自分たちで考えようとする意識が働かなくなる。

 常に発展や繁栄を目指して行かなければならない国家としては、それは如何なものかと考助は考えているのだ。

 そうした考助の考えを見抜いたのか、トワは頷きながらこう答えた。

「父上の懸念はよくわかりますが、そもそもの発端が父上だったのです。これくらいは問題ないでしょう」

 トワがそう言うと、クラウンの三部門の部門長も同時に頷いた。

「今のままでもクラウンとしても国としても十分に収益が出ております。ですが、そもそもコウスケ様が望んでいたのは、この形ではないでしょう?」

 シュミットにまでそんなことを言われてしまっては、考助としても黙ってはいられない。

 確かに、今の状態で施設の利用がとどまってしまっては、最初に考助が目論んだ物とは全く違った利用の仕方になってしまう。

 そもそも元の世界でも一般の家庭にまで電気が広まったのは、かなりの年数が経ってからだ。

 付け加えれば、田舎にある家庭にまで光が届いていた国など数えるほどしかない。

 そう考えれば、考助が持っている元の世界のやり方も、本当の意味で正しいのかどうかは分からないのだ。

 

 そこまで考えた考助は、難しい顔になって言った。

「それならいいんだけれど、そもそも僕が教える方法が正しいことなのかは分からないよ?」

「それは分かっています。だからこそ、あくまでも内輪の話ということで、限られたメンバーで来たのです」

 トワはそう言って周囲を見回した。

 今回の会議に参加しているメンバーは、トワとクラウンの部門長三人に加えて、ラゼクアマミヤの宰相となぜかルカだった。

 この場にルカがいるのは、トワに「ルカ以上に魔法陣に詳しい者を知らない」といわれて、半ば無理やりに引っ張ってこられたからだ。

「まあ、それならいいか。一応提案するけれど、そっちでもちゃんと話し合ってよ? こっちのやり方に合っているかもよくわからないし」

「当然です」

 代表してトワがそう言い、他の者たちは頷いて了承した。

 

 考助がまず話したのは、魔力を売る契約の仕方だ。

「話を聞いた限りでは、多くの魔力を扱う所としか契約できていないみたいだけれど?」

 考助の疑問に頷いたのは、シュミットだった。

「はい。施設を維持するには、どうしても大口の契約が先に来てしまうのと、小口の契約はまとまった消費がされませんから、どうしても魔力の消費量が読めません」

 魔力供給施設では、多くの魔力を作り出すことにより、安く魔力を提供できるようになっているが、小口の契約だとそのメリットが失われてしまう。

 たとえ小口であっても安定した供給が見込めるのであればある程度の量の魔力を作り出せばいいのだが、初めてのことでうまく見積もりが取れないという問題がある。

 さらに付け加えると、各家庭にどうやって魔力を運ぶのかという問題もあるのだ。

 今は大口の契約の為、多少の魔力の損失があったとしても、それを無視するだけの利益を得ることができる。

 それが、小口契約となると、魔力の損失は無視できないものになってくるのだ。

 

 現状どのように運営しているのかを聞いた考助は、思いつく限りの事を話した。

「まずは、魔力を送る方法ですが、送魔率の高い素材を使って物理的につないでしまいます」

「送魔率・・・・・・というと、魔力石辺りですか?」

 素材の利用方法に詳しい工芸部門長のダレスが確認してくるが、考助は首を左右に振った。

「この場合は、距離のあるところに送る必要があるので、魔力石は向きません。何より加工するのにコストがかかるでしょう?」

「確かにそうだが、だったら何を使えば?」

「この場合は、アネモーの糸でも十分だと思いますよ? 加工がしやすい上に、何よりコストが安い」

 考助の言葉に、ダレスはもとよりシュミットも驚きの顔になった。

 アネモーの糸は確かに魔力伝導率が高いと知られていたが、元はただの糸なので素材としてはいまいちだったのだ。

 魔力を送るのには向いていても、溜め込むことは出来ないので、加工した服で装備とすることもできなかった素材なのである。

「確かにあれが使えれば、こちらとしても助かりますが、大丈夫なのですかな?」

「それはそれこそ加工と設置の仕方次第じゃないかな? あとは、国の出番になるかと」

 シュミットが懸念しているのは、加工がしやすい分盗まれやすいということにもなることだ。

 それに関しては、窃盗罪になるので、国の出番となる。

 

 考助の言葉に、トワと宰相が難しい顔になった。

 話を聞く限りでは、それだけのために警備員を回さなくてはならなくなる。

 とてもではないが、いくら人がいても足りなくなってしまう。

「父上、それはあまりにも・・・・・・」

「いや、いくらなんでも町中に警備の目を常に光らせろなんて言わないよ」

「というと?」

「それこそ魔法があるんだからいくらでもやりようはあるんじゃない? 現物を持っている場合は、辿れるように簡単な細工をしておくとか」

 単純に目印になるような素材で糸をコーティングしておけば、それだけでも十分に抑止力になる。

「加工次第というわけですな」

 考助の言葉に、ダレスが顔を輝かせた。

「そう。折角安い素材を使っているのに、加工で高くなってしまったら意味がないけれどね」

「それこそ、こちらで考えるべきことでしょう」

 これまでも何も考えてなかったわけではないので、考助がちょっとしたきっかけを与えれば、ダレスの頭の中では色々と思い浮かんでいるようだった。

 

 後はダレスに任せておけば大丈夫だろうと、魔力を各場所に送る方法は横に置いて、次は契約の方法についての見直しだ。

 これは単純に、計測器を作って契約した場所に設置することを提案しておいた。

 ここで役にたったのが、トワが無理やりに連れて来たルカだ。

 考助がさらさらと書いた魔法陣を見て、目を輝かせて話に加わって来た。

 この魔法陣を使って簡単に誤魔化されないような計測器を作り、使った分だけ料金を取るように切り替えていくのである。

 ついでとばかりに、基本使用料を払ってもらい、それを超えた分は個別にさらに払ってもらうやり方も教えておいた。

 これには、シュミットが食いついていた。

 考助が提案した方法は、それぞれ長所もあれば短所もある。

 第五層の街での適した契約方法というのもあるだろう。

 考助としても、自分が提案した方法が使われるべきだなんてことは主張するつもりはない。

 結局、この会議室に集まった者たちも、なにかきっかけが欲しかっただけのようで、考助がいくつか提案した話からさらに色々な方法を思いついていた。

 今後は、それらの話をまとめつつ、どんな方法が適しているのかを議論していくことになるのであった。

魔力供給施設のその後でした。

そういえば、まだ通信具(携帯電話)の話を出してませんね。

ただ、今回の話からも分かる通り、まだもう少し先になりそうな気がします><

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