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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第6章 塔の地脈の力を使ってみよう
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(4) 工芸部門部門長

 フリエ草を第二層に設置したことを報告するために、考助はガゼランを訪ねていた。

 設置してから冒険者たちが気づくまで放置しておくつもりだったのだが、いつまで経っても第二層を訪れる気配がないので、直接報告することにしたのである。

 ちなみに、管理メニューから転移門がどれくらい使われたか、確認することが出来る。

 第四層から下の層は、出てくるモンスターが弱いせいか、冒険者たちには不人気らしく、転移門自体がほとんど使われていない。

 フリエ草の群生地をわざわざ下層に設置したのも、きちんと冒険者たちが下層でも活動するようにするためでもある。

 とはいえ、第二層に誰も来ないということは、当然ながらその場所にフリエ草があることにも気づかれるわけもないのだ。

 そのために、フリエ草が第二層にあることを、ガゼランに教えに来たのだ。

 

「よう。今日はどんな用だい?」

 ガゼランの執務室に考助が訪れると、右手を挙げて挨拶をしてきた。

 特に仰々しいことはしなくていいと言ってあるので、基本的にフランクな関係になっている。

「フリエ草が塔の階層にありますので、伝えに来ました」

 実際には、塔の機能で設置したのだが、そこまで詳しいことは教えるつもりはない。

「・・・・・・なに? マジでか!?」

「マジです」

「どこにだ・・・!?」

「第二層です」

 考助の端的な答えに、ガゼランは額に手を持って行った。

「・・・っかー、マジか・・・!」

 ガゼランにしてみれば、完全に盲点だったという感じなのだろう。

 塔の上層に行くほどいい素材が手に入るのだから、現在下層に関しては、誰も目を向けていない。

 以前に下層に向かったパーティもいたが、せいぜい第三層くらいまでで引き返しているのだ。

「マジですね」

「・・・・・・そうか・・・」

 ガゼランは考え込むように、目を閉じて腕を組んだ。

「しかし・・・参ったな。どうすっか・・・」

「? 何か問題でもありましたか?」

「いや、何。第二層となると、たどり着くまでにかなりの距離があるからな。せっかく採取したとしても採算が合うかどうか・・・」

 わざわざフリエ草だけを採りに行くためのパーティが、まずいない。

 割に合わないのだ。

 ただし、ガゼランの考えでは、である。

「高レベルの経験者だけで組めばそうでしょうが、低レベルの冒険者たちではダメなんですか?」

「そりゃ、お前・・・・・・」

 ひよっこに任せてもすぐやられてしまう、と言おうとしたガゼランは、ふと考えを改めた。

 確かに、考助の言う通り、目的はフリエ草の採取なのだ。薬草の採取さえできれば、そこまで戦闘能力は高くなくてもいい。

 下層というのは、その程度のモンスターしか出てこないのだ。

 最初の内は、高レベルの冒険者少数と、低レベルの冒険者を組ませてもいいだろう。

「そういう事か。・・・しかし、自由に採取させるってのもまずい気がするな」

 やりようによっては儲けることが出来ると分かれば、冒険者たちはこぞって採取に向かうだろう。

 だが、物が物だけに、勝手気ままに採取させていいかどうか判断に悩むところだった。

 いっそのことクラウンで採取場所を押さえてしまった方がいいかもしれない、とガゼランは考えて、それを考助にも伝えた。

「そうですね。まあ、どうやって運用していくかは、そちらに任せますよ。流通にも絡むことですので、シュミットさんにも相談したほうがいいと思います」

「そうだな。そうしよう」

 考助の提案に、ガゼランも頷いた。

 いっそのこと拠点を作ってしまった方がいいかもしれない。

 とは言え、わざわざフリエ草の為だけにそこまでするのは、どうかとも思うガゼランであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 フリエ草以外の冒険者部門について、色々話を聞いているときに、ワーヒドとシュミットが部屋に入ってきた。

 二人以外にも、もう一人男性が付いてきていた。

 代表してワーヒドが、話しかけて来た。

「失礼します。考助様、今お時間よろしいですか?」

「大丈夫だよ?」

 考助は、ガゼランが頷くのをみてから、そう答えた。

「でしたら、今のうちにダレスを紹介します」

 ワーヒドは、そう言って男性の方を指し示した。

 ワーヒドに紹介されたダレスが、考助に向かって頭を下げる。

「初めまして、ダレス・パレスといいます。今度、クラウンの工芸部門の部門長を任されることになりました」

「・・・ああ、なるほど。考助と言います。よろしくお願いします」

 ダレスの挨拶で、考助は空席だった工芸部門の部門長だと分かった。

「なんだ。結局、ダレスに決まったのか」

 そう言ってきたのは、今まで考助と話をしていたガゼランだった。

 ダレスは、最初期のころから村での建築に携わってきた職人だ。

 建築ラッシュが続いていて、クラウンの話を打診されても返事を保留にしてきたのだ。

 とは言え、ここまで村が大きくなってきたら、いつまでも保留にしておくわけにもいかないと思ったので今日返事をしに来たのだ。

「なんだとは何だ。何か、言いたい事でもあるのか?」

「ないない。逆にお前さん以外に、誰がいるのか教えてほしいくらいだった。まあ、お前さんに決まったんだから今更だな」

 ダレスの挑発(?)に、ガゼランは右手をひらひらとさせた。

 二人の様子に、思わず考助はワーヒドの方を見た。

 なにやらそりが合っていない気がするのだ。

 見られたワーヒドは、そんな考助に苦笑を返した。

 その表情を見る限り、まあ、心配はないのだろうと安心(?)した考助であった。

 

 ダレスに対しては、今のところ大きく伝えることもないので、頑張ってくださいというだけで終わってしまった。

 他に伝えることもないので帰ります、と言おうとしたところで、シュミットが来ていたので、ついでにフリエ草のことを伝えた。

「・・・そういうわけですから、ガゼランと話し合って、どう運用していくか決めてください」

「かしこまりました」

 シュミットが頷くのを見た後に、考助はミツキを伴って管理層へと戻って行った。

 それを見送ったダレスが、ポツリと呟く。

「あれが、この塔の管理長か・・・」

「見えないかい?」

 ガゼランが含むように笑いながら、ダレスの方を見た。

「はっきり言えば、そうだな」

「まあ、そうだろうな。俺も最初はそうだった」

 ダレスの返答に、ガゼランとシュミットが頷いている。

「だが、まあ引き受けたからには、しっかりと見たほうがいいさ。なかなか面白い物が見れると思うぜ」

「全く同感です」

 ガゼランの忠告に、シュミットが同意した。

 シュミットの考助に対する印象は、最初に会った時とは様変わりしている。

 強い二人に守られたごく普通の青年、という感じだったのだが、今はそんなことは思ってもいない。

 やり手の商人であるシュミットと、まぎれもなく冒険者たちの中で強者の一角を担ってるガゼランの言葉に、ダレスは神妙な顔で頷くのであった。

ガゼランは、塔の機能で建物が建てられることを知りません。

考助は、ガゼランが知らないことを知りません。

だからこそ、拠点を塔の機能で作ることは、どちらからも提案されることはありませんでした。


2014/5/24 誤字修正

2014/6/14 誤字訂正

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