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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 サキュバス
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(7)計画

 考助が王子からの依頼を受けて、草原の上で寝そべっている時とほぼ同時刻。

 とある場所に向かって一人の女性が歩みを進めていた。

 その女性が歩いている場所は、スラムとはいかないまでもごろつきたちが集まるようなところだ。

 普通であれば、女性ひとりでそのような場所を歩くことはあり得ない。

 ただし、その女性は慣れた様子でその場所を歩いている。

 昼間にもかかわらずたむろっていた男たちの視線が集まるが、その態度に絡むべきか放置しておくべきか決めかねていた。

 男たちの顔見知りであれば、襲ったりなどは当然しないのだが、少なくともその場にいた男たちは今まで見たことがない顔だった。

 そもそも女性は、美しい顔立ちをしているので、頻繁にこの場所を出入りしているのであれば、覚えていないはずがない。

 明らかに場違いといえるのだが、女性の持つ雰囲気が男たちの行動を押える要因になっていた。

 女性にとって幸いしたのは、今この場にいたのが、雰囲気を読み取れる実力がある男たちだったことだ。

 ただのごろつきであれば、間違いなく複数の男たちに絡まれていただろう。

 もっとも、その手の輩であれば、蹴散らすだけの自信が女性にはあったからこそ、その場を歩いているのである。

 

 男たちの不躾な視線を集めながら歩いていたその女性は、遂に目的の建物の前へとついた。

 そして、なんの躊躇いもなくその扉を開けて中へ入っていく。

 入った先は、小さなカウンターといくつかのテーブルが並べられている酒場だった。

 まだ真昼間にもかかわらず、何人かの男たちが酒を飲んでいる。

「なんだ、ねーちゃん。ここは、あんたみたいなのが来る場所じゃないぜ!」

「客引きする場所を間違えてないか!?」

 下品な声で口々に男たちが話しかけてきたが、女性は全てそれを無視してカウンターへと近づいた。

「ヘイブントロックあるかしら?」

 女性がそう言うと、カウンターの中にいたマスターはピクリと反応し、それまで囃し立てていた男たちは静かになった。

「・・・・・・ああ」

 マスターは短くそういうと、カウンターの一部の板をはずして女性を中に招き入れた。

 先ほど女性が言った言葉は、相言葉のようなものだったのだ。

 女性はそのままカウンターの奥にあったドアを開けて、奥に入って行った。

 奥は下に続く階段になっており、その先には酒が並べられている小さな酒蔵があった。

 女性はそれも無視してさらに奥に進み、とある場所で突然しゃがみ込んだ。

「ここかしら? ・・・・・・ああ、あったわ」

 女性がそう言って手を動かすと、パカリと床の一部が動いてさらに下へと続く階段が現れた。

 

 さらに階段を下った先は小さなスペースがあり、そこには二人の男が立っており、扉を守っていた。

 女性が近付いてくるとその二人は警戒するような視線を向けて来た。

「連絡員よ」

 女性はそう言って、懐から一枚のカードを出して、男たちに見せた。

 そのカードを見た男たちは、女性にその場で待つように言って、扉の奥に話しかける。

「ボス。本部からの連絡員が来ました」

「通せ」

 その声が奥から聞こえてくると、男の一人が扉を開けて、女性に向かって頷いた。

 女性はその部屋に入る前に、懐に手を入れて一枚の封筒を取り出して男たちに見せながら入口を通った。

「そこで止まれ」

 女性が部屋に入ると机と椅子に座った男が、そう指示して来た。

 女性も素直にその場に止まる。

 手に持った封筒を見てから、女性の顔に視線を移した男は、フンと鼻を鳴らした。

「・・・・・・その綺麗な顔で連絡員か。いっそのこと俺の傍に来ないか? 苦労はさせないぜ」

「あいにく既に予約が入っているわ」

 そっけない女性の返答に、男は再びフンと鼻を鳴らした。

「手紙はそこの床に置いていけ。金はカウンターで受け取ればいい」

「わかったわ」

 男の言葉に素直に頷いた女性は、封筒を床に置き部屋を出ていった。

 

 女性が出て行ったあと、封筒を拾って男は中を確認した。

「フン。本物のようだな」

 手紙の中に押されている押印とサインを見て本物だと確認した男は、改めて文章を確認する。

 全ての文章を読んだ男は、顔にわずかに笑みを浮かべた。

「そうか。いよいよか。・・・・・・ククク」

 これまで入念に準備を進めて来た計画が、ようやく実行へと移せると知って、男は歓喜の小さく笑い声をあげた。

 いい加減「待ち」の状態でいるのも飽きてきていた所だったので丁度いい頃合いだった。

 ひとしきり笑った男は、準備を進めるため、外にいる男たちに声をかけるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 夜。

 完全に日が沈み、月明かりしかなくなった王都の一角に、とある集団が集まっていた。

 集団の中に魔法を使える者がいるので、明かりはその魔法使いが出した光が頼りになっている。

 勿論、何かあった時のために代わりのものを用意してあるが、こういった場合は基本的に魔法使い頼りになる。

 集まった者たちもそれが当然とばかりに、この状況を受け入れていた。

 そんな中、一人の男が注目するように手を三度合わせて音を鳴らした。

 集まった者たちの注目が集まったのを確認したあと、男は話を始めた。

「いよいよ今晩、計画を進めることになる。既に我々は、十分に待った。だが、相手が乗ってこなかったのだから仕方ない。あいつらに我々の力を見せつけてやろうではないか!」

「「「「「おおっ!!」」」」」

 男の言葉に、集団の声が響いた。

 その反応に気を良くした男が、更に話を続けようとしたその時、異変は起こった。

 夜の闇を照らしていた光が突然消えたのだ。

 男はすぐに傍にいた魔法使いに話しかけた。

「おい、何をしている!」

「だ、駄目だ! 魔法が発動しない!」

 その言葉を聞いた男は、小さく舌打ちをした後で、すぐに声を飛ばした。

 その場は、急に暗くなったことで、騒めきだしていた。

「落ち着け! 魔法が無くとも火を付ければいいだろう! それから、襲撃に備えろ!」

 その言葉で落ち着きを見せた者たちが、すぐに対応し始める。

 とはいえ、ライターもマッチもない世界なので、火をつけるのには多少の時間がかかるのだ。

 

 火がつくまでに最低でも数分はかかる。

 それまで何か変化がないかと辺りを見ていた男たちの一部が、その異変に気が付いた。

 なにか遠くの方から飛んでくる音が聞こえたのだ。

 周囲に注意を促そうとした者たちは、だが残念ながらそれには間に合わなかった。

 それは、正確に急所を狙って飛んできたため、一瞬でその場に沈められることになったのである。

 同時に数名の人間がその場に倒れ込めば、流石に周囲の者たちが異変に気づく。

「おい! 何か飛んできているぞ! 早く火を付けろ!」

「無茶を言うな!」

 集まった者たちの何割かが慌てた様子を見せる中、一部の者たちは冷静に動き出していた。

 騎士と違って盾のようなものは持っていないため、近くにあった盾になりそうなものを集めて外周を守り始める。

 それでもしばらくは礫のような物が飛んできていたが、それもやがて止まった。

 そんなことをしている間に、火の用意は出来ており、辺りの様子も確認できるようになっていた。

 残念ながら、かなり遠くからの攻撃(?)だったためか、相手の姿を見ることは出来なかった。

 わざわざ魔法を封じるような手段を持っている相手が、たった数十人を倒しただけで攻撃を終えるとは思えない。

「おい、お前ら油断するなよ! 誰だか知らないが、間違いなくここを狙って来るだろうからな!」

 最初に声を上げた男が、周りに聞こえるようにそう指示を飛ばした。

 既に、周囲を確認するために何人かを引き連れて確認に行っている。

 今の状況が分かるのももうすぐだろう、と男は冷静にそんなことを考えているのであった。

ちなみに、今話では書けませんでしたが、男たちが集まっているのは一カ所だけではありませんw

ここで書くなという話ですが、文字数が増えそうだったので書けませんでした><

次話で書きます。

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