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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その12)
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(4)神域

 リトルアマミヤの塔から転移門を使ってアマミヤの塔に繋がっている転移門がある空間に移動したミアは、同行していたミカゲの言葉を聞いた。

「・・・・・・いつも思いますが、不思議な空間ですね」

 周囲に他の者がいる場合は言葉数が少ないミカゲだが、ミアと二人でいるときはこうしてよく声をかけてくる。

 今日は階層に行く予定もなかったので、考助の眷属も付いてきていない。

 そのミカゲの言葉を聞いたミアは、改めて今いる場所を見渡した。

 白い壁で囲まれたその場所は、どこかの部屋というよりもミカゲがいった通り「空間」と呼んだ方がしっくりとくる。

 転移門が二つ並んでいるだけの場所なのでさほど広くはないのだが、逆に二つの転移門が置かれているだけの場所にしては広すぎる。

 しかも、この転移門を使っているのは、今のところ両手を使って数えても十分な人数でしかない。

 最初は不思議に思っていたミアだったが、毎回使ううちに慣れてしまっていた。

 だが、改めてその空間を見ると、どういった場所なのか、不思議になってくる。

「そうですね。・・・・・・少し調べてみましょうか?」

 どうやらミカゲが興味を持っているらしいと気付いたミアは、彼女にそう提案した。

「いいのですか?」

「まだ食事までは時間があるもの。大丈夫ですよ」

 ミアがそういうと、ミカゲは小さく口の端を上げた。

 最初は無表情だと思っていたミカゲだが、それなりの期間を一緒に過ごす間に彼女なりの感情表現を見つけることができるようになっている。

 今のも他者にとってはほとんど分からないような変化だったが、ミアにはしっかりと見抜くことが出来た。

 たまにはミカゲの為に動くのもいいだろうと、ミアはその空間を調べることにした。

 

 誰もいないことをいいことに、二手に分かれて空間を調べたが、特に何も出てこなかった。

「・・・・・・駄目ですね」

 ミアの呟きに、既に部屋を調べ終えて近くに来ていたミカゲがコクリと頷いた。

 何の素材で出来ているのか分から無い壁は、継ぎ目のようなものさえ見当たらなかった。

 そもそもこの空間には出入り口というものが存在しないので、完全に密閉されているということになる。

 これ以上は調べても何も見つからないと判断したミアは、諦めてアマミヤの塔へと戻ることにした。

「戻りましょう。父上に聞いた方が早い気がします」

「聞くのですか?」

「ええ。元々聞こうと思っていたのですが、管理に夢中になってすっかり忘れていました。折角なので、戻ったら聞いてみます」

 ミアがそういうと、ミカゲは小さくコクリと頷くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アマミヤの塔の管理層に戻ったミアは、昼食の席で空間のことを考助に聞いた。

 少しだけ隠される可能性もあるかと思っていたミアだったが、意外にもあっさりと考助から答えが返って来た。

「ああ、あの場所は、僕が魔法陣とか魔道具を使って作った場所だよ」

「へー、そうだったんですか」

 軽く答えが返って来たために、さらりと受け流しそうになったミアだったが、少し遅れて言われたことの重要性に気付いた。

「えっ!? 作ったって、全く新しい空間をですか?」

「そうだけど?」

 不思議そうな顔をして自分を見てくる考助に対して、ミアは反論をしようとして、周囲の様子を見てからそれを思いとどまった。

 シュレインやピーチは何を今更という顔をしているし、シルヴィアはいつも通りの顔で黙々とご飯を口にしている。

 そして何より、フローリアがミアのその様子を見て、一度ため息を吐いてからこう言った。

「ミア。コウスケのやることに一々驚いていては、身が持たないと何度もいっているだろう?」

「え? それはひどくない?」

 あまりの言いように考助が突っ込んだが、周囲にいた者たちでそれを助けようとする者はいなかった。

 それを見た考助が何となくすすけた雰囲気になったが、いつものやり取りなので、特に慰める者もいなかった。

 

 一方、フローリアの助言(?)を聞いたミアは、一度大きく深呼吸をしてから気を落ち着けた。

 子供の時は何とはなしに聞いていたことだが、こうも何度も驚かされるとは思ってもいなかった。

 それから考助が先ほど言ったことの意味を改めて考える。

「魔法陣とか魔道具ということですが、魔力で出来ているのですか?」

「いや、違うよ?」

 ミアの問いに、すすけた状態からあっさりと立ち直った考助が、すぐに答えを返す。

「え? では聖力ですか?」

「いや。神力を使っているんだよ」

 その考助の答えに反応したのは、フローリアだった。

「待て。それは聞いていないぞ?」

「あれ? そうだったっけ? 管理層に自分用の空間を作った時に言っていなかったっけ?」

 子供たちが出来た時点で、管理層に出入りする者が増えることがわかったので、考助は塔の機能で作った部屋とは別に、限られた者たちだけが出入りできる場所を作っていた。

 リトルアマミヤの塔の管理層へつながった転移門がある空間とその場所は、同じようにできている。

 

 神力で出来ているということを聞いたフローリアは、一度眉間に手を当ててからそれを口にした。

「・・・・・・神力で出来ているということは、もしかしなくとも神域ということにならないか?」

 そのフローリアの言葉に、それまで聞き流すような雰囲気だったのが一変した。

 流石に神域に当たるような空間だとは思っていなかったのだ。

 ただし、一名を除いて。

「いや、まさか。そんな大げさなものじゃないよ」

 考助は笑いながらそういったが、シルヴィアが首を左右に振ってそれを否定した。

「以前にエリサミール神に確認を取りましたが、間違いなく神域だそうですわ」

「え?」

「コウスケ様が知る神域よりも遥かに規模は小さいそうですが、間違いなく神域と呼んでいい空間だそうです」

「そ、そうだったのか・・・・・・」

 考助にとって神域というのは、間違いなく[常春の庭]のことだ。

 いかに神力を使って作った空間とはいえ、まさか自分が作った二つの空間が神域と呼ばれるような場所だとは考えてもいなかったのである。

 

 シルヴィアが神域だと断定した時にザワリとしたが、彼女の落ち着きぶりに一度だけで収まった。

「ふむ。コウスケが神域を作ることは、問題視されておらんのか?」

 誰が問題視するのかは言うまでもなく、神々の事だ。

 自分たちが住んでいる空間以外に、神域があることなど認められないといってくる可能性が無いわけではない。

 シルヴィアは、その問いに首を縦に振った。

「それも合わせて聞きましたが、特に問題はないそうですわ」

 そのシルヴィアの答えに、緊張していた空気が緩んだ。

 出来ている物がものだけに、万が一のことを誰もが考えていたのだ。

「それは何より。まあ、もしコウスケが神域を作ることを認めないのであれば、とっくに本人に伝えているだろうしの」

「そうですわね」

「本人の気づかないところで厄介ごとを起こすのは、流石というところだな」

 シュレインの言葉にシルヴィアが頷き、フローリアが苦笑しながら考助を見た。

 実際にフローリアの言った通りなので、考助は何も言わずに視線をそらした。

 勿論、考助を責めるつもりではなかったフローリアも他の二人もそれ以上は突っ込みはしなかった。

 

 一方、考助たちの会話を聞いていたミアはというと、何も言わずに食事をしていた。

 横でそれを見ていたミカゲはのちに、全てを諦めたような顔をしていたと述懐したのであった。

ようやく作った空間の秘密(?)の話が出せました。

実は神域でした、という話は以前から決めていたのですが、ようやくお披露目です。

・・・・・・何となく今話は考助にきつく当たっている気もしなくはないですが、気のせいですw

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