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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 塔のあれこれ(その12)
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(3)眷属の区別

 第八十三層に追加した拠点は、敢えて神社を選んで、地脈の交点の上に建てた。

 百合之神社と同じようになることも期待しているが、それよりも周辺のモンスターのレベルによって違いが出てくるかの確認もある。

 そのため、出来るだけ第八層と同じ条件になるように、三種類の欠片シリーズも同じ拠点内に設置しておいた。

 狐のいる階層には設置してあったが、狼のいる階層では設置していなかったので、三種類の欠片が狼に影響を与えるのかも確認できるだろう。

 色々詰め込み過ぎて、どれが影響することになるか分からなくなりそうだが、取りあえず今回は進化に影響することだけ確認できればいい。

 もし進化が確認出来れば、後で個別に分けて対応することも可能なのだ。

 ついでに、神社を設置したので、ワンリに頼んで人化の出来る狐たちを数匹と数十体の人化の出来ない狐たちを連れて来た。

 人化の出来る狐は、神社の維持をするために必要となる。

 その他の狐たちは、狼たちだけに囲まれると過ごしずらいだろうと配慮したのだ。

 何気にアマミヤの塔では複数種類の眷属が同じ階層に、しかも同じ拠点内で過ごすというのが初めての試みになる。

 基本的にはナナがいるのと、人化する狐がいるので、大事には至らないと考助は考えているが、しばらくはちょくちょく顔を出して様子を見ることにした。

 

 第八十三層に狐たちを置いてから数日たったある日。

 考助は神社の縁側で首をひねっていた。

「う~ん・・・・・・」

「お兄様、どうかしましたか?」

 今日は、狐たちの様子を見るために、ワンリも顔を出している。

「いや、思ったよりも早く慣れてしまったなあ、と思ってね」

 考助の視線の先には、じゃれ合っている狼と狐がいた。

 しかも一組だけではなく、あちこちで似たような光景が繰り広げられるている。

 今は狼たちも周辺の狩は行っていないため、ほぼ全部が拠点に戻ってきていた。

 ちなみに、ナナは神社の庭先で陽の光を浴びながら寝そべっている。

 

 考助の言葉に、ワンリは少しの間だけ首を傾げた。

「何か問題でもありますか?」

「いやいや、問題とかじゃなくてね。種族が違うのに、こんなに簡単に仲良くなって大丈夫なのかと思っただけだよ」

「えっ!?」

「え?」

 突然、小さく驚きの声を上げたワンリに、考助もまた驚いた。

 考助は、なぜワンリが驚いたのかが分からなかったのだ。

「あの・・・・・・私たちがお兄様の眷属であることはすぐに分かるので、むしろ仲が悪くなることはないと思うのですが・・・・・・」

 勿論、個別に馬が合わないなどの問題は当然起こるが、それは同じ人間同士でも起こることだ。

 考助が今問題にしているのは、種族的な壁があるために争いが起こるのではないかという事だった。

 だが、ワンリの言葉に、今度は考助が驚いた。

「えっ!? お互いに眷属同士って分かっているの?」

 今更といえば今更な考助の反応に、ワンリは目を丸くした。

 ついでに、二人の会話を聞いていたミツキも口を挟んでいた。

「何を言っているのよ。アマミヤの塔はともかく、他の塔は同じ階層に違う眷属を召喚しているじゃない」

「いや、そうなんだけれど、あれは単にお互いに縄張りを守っているだけかと思ってた」

 考助のその言い方に、お互いに齟齬があると感じたミツキは、少しだけ考えた様子を見せた。

「・・・・・・考助様は、眷属だから争わないと考えていたのではない?」

「いや。眷属だからというのはあっているんだけれど・・・・・・何と言えばいいのかな」

 自分の中で感じているモヤモヤをどう言葉にすればいいのか、考助はしばらく悩んだ。

 

 一分ほど首をひねっていた考助は、やがて右手をグーの形にして左手の掌に合わせた。

「ああ、そうか。眷属は眷属なんだけれど、単に争ったらダメと刷り込まれているだけで、眷属として仲間意識があるという事までは考えていなかった・・・・・・といえばいいかな?」

 その説明にワンリとミツキが首を傾げ、しばらくしてからミツキが反応した。

「『考助様の』眷属としてではなく、単純に同居している仲間のような関係だと思っていたということ?」

「そう、かな?」

 何とも曖昧な考助の返事だったが、自分の考えていることが上手く言葉にできない以上どうしようもない。

 これ以上の説明を放棄した考助は、さっさと意識を切り替えてワンリに視線を向けた。

「それじゃあ、他の眷属・・・・・・例えば、コーとかもちゃんと僕の眷属として見分けができるということ?」

「勿論です」

 以前にもワンリはコーたちと交流(?)したことがあるが、その時もきちんと分かったし、相手のコーたちもきちんと眷属として認識していた。

「別の塔の眷属は?」

「勿論、分かります」

「そうだったのか・・・・・・」

 改めて、今更ながらの事実に考助は、感心したように頷いた。

「それで? 眷属として認識していたら、なにかあるのかしら?」

「いや、特に何かあるわけじゃないんだけれどね。ちょっと気になったんだよね・・・・・・。ん? あれ? もしかして、僕以外の眷属のモンスターも野生のモンスターと区別できる? 例えば、ミアの眷属とか」

 ミアが管理しているリトルアマミヤでも当然のように眷属たちを召喚して育てている。

 その眷属と普通の野生の(?)モンスターを区別できるのか、考助としては非常に気になるところだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 ナナとワンリは、リトルアマミヤには攻略のときに行っただけで、それ以降リトルアマミヤには行っていない。

 当然、ミアが召喚した眷属たちとは対面したことがない。

 ミアの眷属として他のモンスターと違っているかどうか区別できるかは、会ってみないと分からないともっともな話になったため、考助たちはすぐにリトルアマミヤに向かうことにした。

 相変わらず隙を見つけてはリトルアマミヤに入り浸っているミアは、当然のように管理層にいた。

 転移門を通って突然姿を現した考助に目を丸くしている。

「父上、どうされたのですか?」

「ああ、いや。ちょっと確認したいことが出来たから来たんだ」

「確認したい事ですか?」

「うん。あのね・・・・・・」

 そう切り出した考助は、先ほどまでの会話をミアにも話した。

 

 話を聞いたミアは、若干驚いたような表情になった。

「私の眷属と他のモンスターが区別できるのですか?」

 ミアとしては、同じ主(?)の眷属同士が区別できるだけで、他の主の眷属は普通のモンスターと同じような扱いになると思っていた。

 そのため、各階層に連れていく考助の眷属は、必要最小限だけに絞っていた。

「いや、それが分からないから確認しに来たんだよね」

「なるほど。そういう事ですか。・・・・・・早速行きましょう!」

「うわっ。ちょっとミア。行くから服を引っ張らないで!」

 服を引っ張られて慌てる考助を無視して、ミアは転移門のある方へと向かった。

「・・・・・・恐ろしく似た親子だと思うのは、私だけ?」

 それを見たミツキがそう言ったが、幸いにして、コウヒもワンリもそれに関して何かをいう事は無かった。

 

 ナナとワンリに確認してもらったところ、ミアの眷属は、眷属として区別できるということがわかった。

 ただし、誰の眷属か、という事までは分からない可能性がある、ということだった。

 ナナもワンリもミアの事はしっているので、すぐにミアの眷属だという事が分かったのだが、他の眷属の場合は、その当人と会わないと分からないそうだ。

 これは考助の推論でしかないが、もしかしたら眷属たちは、考助が左目でステータスを見るように、眷属に関しての情報を感じ取っているのかもしれないと考えていた。

 ナナとワンリに、どう区別付けているのかと詳しく聞いても、見た目とか匂いで区別を付けているわけではなく、何となくそう感じるという曖昧な返事しか返ってこなかった

 考助は目から入る情報を文字に起こしてみているが、その辺を感覚としてとらえているのではないかと推理したのだ。

 実際のところはよくわからないので、あくまでも考助の勝手な想像である。

 とにかく、眷属たちは互いに誰かの眷属として認識することができる、ということがわかっただけでも、今回の収穫としては十分な成果だった。

眷属たちが互いに眷属を区別できるという話でした。

ちなみに、サリタの塔のときは、眷属を召喚していたわけではなく、普通の召喚での戦いだったため、ナナも区別はついてなかったです。

もっとも、誰かの眷属だと分かっていたとしても、容赦なく戦ったでしょうが。

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