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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第5部 第1章 塔同士の戦い
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(16)取引

 第五戦目を終えて、中一日を挟んで第六戦目。

 その日は、ペドロ国王も都合を付けて朝から制圧戦の様子を見に来ていた。

「な、なんという・・・・・・」

 あくまでも画面上でしかないが、それでも目の前で行われている戦に、ペドロは思わず言葉を失った。

 ペドロ自身は制圧戦を行ったことが無いのだが、サント・エミンゴ王国は何度も行っている。

 実はペドロは、ペドロの祖父である先々代の国王が制圧戦を行っている所を膝の上で見たことがある。

 その時に受けた以上の衝撃を受けていた。

 当時もモンスター同士が戦うという不思議に非常に感銘を受けていた。

 だが、そのような記憶も年を取るとともに薄れていき、父王が行った制圧戦で完全に興味を失っていた。

 だからこそ、ペドロ国王は制圧戦にあまり積極的ではなかったのだ。

 だが、アマミヤの塔の戦いを見ている今のペドロ国王は当時の祖父の膝の上で受けた感動をそのまままざまざと思いだしてしまった。

 先日ペドロ国王に報告をしに来たカミロの言い分も納得の動きだった。

「なるほど、確かにカミロの言う通りだな」

「はっ!」

 傍で控えていたカミロは、ペドロの言葉に大きく頷いた。

 二人の目の前では、先日と同じようにアマミヤの塔の階層から送られてきている狼たちが縦横無尽に走り回っている。

 ここまで圧倒的な差を見せつけられると、抵抗する気もなくなる。

「進化したモンスターは既に引き上げているのだろう?」

「はい。問題ありません」

 必要最低限のことは行っているので、サント・エミンゴ王国としてはこのまま負けるのは仕方がないといったところだ。

「ふむ・・・・・・しかし、これは目論見が甘すぎたな。まあ、今更言っても詮無きことだが」

 腕を組んで画面を見つめるペドロ国王は顔をしかめていた。

 戦力が互角か、どうにか互角に近い戦力であれば、このまま手打ちで終わり、という可能性もあった。

 だが、ここまで圧倒的な戦力差があると、例え今回の制圧戦が終わっても宣戦布告の禁止期間が過ぎればすぐに攻めてきてもおかしくはない。

 そうなれば、今度は最初から勝ちを狙って攻めてくるだろう。

 目の前で見せられている戦力であれば、上級モンスターがうろついている階層を出したとしても攻略されかねない。

 そうなれば、サント・エミンゴ王国はサリタの塔そのものを失ってしまう可能性もあるのだ。

「これは、何かを手土産に交渉せざるを得ない、か」

 ペドロ国王は、画面を見つめながらそう呟くのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「あっ! しまった!」

 第六戦が終わったたあと、制御室に考助の声が響いた。

 何事かと、第六戦を見ていたメンバーたちの視線が集まった。

「いや。どうせ続けてもあと三戦で終わるんだから、「手打ち」の許可をしても良かったかなーと」

 手打ちの「許可」「拒否」の表示は精々二分程度で、そこまで長い時間出ているわけではない。

 戦闘が終わってほっと一息ついているときに、終わらせてもいいと気付いたのだが、既に遅かった。

「あれ? 昨日はずっと続けると仰っていませんでしたか?」

 首を傾げたミアに、考助は首を左右に振った。

「いや、そのつもりだったんだけれどね。今日の様子を見る限りでは、向こうは逃げに入ったみたいなんで、続けても意味ないかなと思ってね」

 相手の動きを見ても、出してくる階層を見ても、どう考えても勝ちを狙いに来ているようには見えなかった。

 第五戦までとは違って、進化したモンスターすら出してきている気配がない。

 見ている限りでは、初級モンスターを召喚して数を増やしているだけのように感じた。

「確かに、そうですね。せめて違う種族のモンスターが出てくる階層を出してくれるといいのでしょうが・・・・・・」

 ミアの言う通りであれば、アマミヤの塔で召喚できるモンスターが増える可能性もあるので、多少は戦う意味もある。

「それも今日の様子を見る限りでは難しいよね」

「はい」

 考助の言葉に、ミアも同意する。

「階層がとられ続ければ、違った階層を出してくるのではないかの?」

「うーん。それに期待するしかないか。出来ればこれ以上犠牲は出したくないんだけれどね」

 シュレインの言葉に、考助も頷いたが、本音では眷属たちの犠牲を出したくないというのが大きい。

 だが、相手が戦いを望んでくる以上、出さないわけにもいかない。

 

 悩む考助に、フローリアが助け舟を出して来た。

「相手も消化戦にしているようだし、中級モンスターを召喚して数で攻めてはどうだ?」

「あっ、そうか。その手があったか。何やっているんだろうね」

 そう言った考助の顔には、失敗したと大きく書いてある。

「いや、今日のはまだ相手がどういった対応をしてくるのか分からなかったのだから、仕方ないだろう?」

「それもそうなんだけれどね」

 ある意味で冷徹とも言えるフローリアの言葉に、考助も同意した。

 それでもやはり犠牲になった眷属の事が諦めきれないといった顔をしている考助に、シュレインがさらに慰めて来た。

「今日の時点で手を抜いておれば、相手次第では負ける可能性もあったのだから仕方あるまい」

 そのシュレインの言葉に、考助も吹っ切るように大きくため息を吐いた。

「そうだね。仕方ないか。これ以上悩んでも、眷属たちに失礼だろうし」

 今回も眷属たちは考助の要望にしっかりと応えてくれた。

 その考助がいつまでもうじうじ悩んでいては、犠牲になった眷属たちがうかばれないだろう。

 ここでキッパリと気持ちを切り替えた考助は、すぐに戦後処理にかかるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 反省点が多かった第六戦から中一日を挟んで第七戦を終えた翌日。

 中級モンスターだけで攻め込んで勝利を収めた第七戦の結果に満足していた考助の元に、トワから緊急の連絡が入った。

 すぐに許可を出して、管理層に来るように指示を出す。

 トワ一人だけが来るのであればそのような手続きは必要ないのだが、そうでない場合はきちんとした手続きが行われている。

 アマミヤの塔の管理層は、ラゼクアマミヤにとっても最重要な場所になるので、それも当然だろう。

「それで? 緊急の連絡って何かあった?」

 考助は会議室に集まった面々を見て、そう問いかけた。

 会議室には王国の主要な人物は勿論、クラウンの部門長たちも揃っていた。

 代表してトワが考助の問いかけに答えた。

「実はフロレス王国を通してサント・エミンゴ王国から緊急の連絡が入りまして・・・・・・」

 

 そう前置きをしたトワが、用件を切り出した。

 それによるとサント・エミンゴ王国が、今回の制圧戦に関して完全に負けを認める声明を出して来たとのことだった。

 同時に戦後賠償に関しても提案されていた。

 その内容は、ラゼクアマミヤに対しては以前より要望のあった取引品目の解禁、クラウンに対しては支部設置の解禁、と両者にとっては至れり尽くせりのものだった。

 更に付け加えて、サント・エミンゴ王国のアマミヤの塔に対する一方的な宣戦布告の謝罪が含まれていた。

 これを聞いたフローリアが、思わず、といった感じで驚きの声を上げた。

 そもそも戦争に関しての国家同士のやり取りで、正式に謝罪をするという事はほとんどありえない。

 例えそれは、負けた側の国であってもである。

 戦争が起こる、ということは、基本的にどちらの側にも理由があっての事なので、国家という立場をとる以上それは当然の事なのだ。

 それらの賠償を見れば、完全にサント・エミンゴ王国が負けを認めたという事になるのであった。

中途半端ですがここで終わりです。

戦後賠償に関しては長くなりそうだったので、次回に続きます。

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