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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第5部 第1章 塔同士の戦い
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(11)第四戦

 本来であれば相手側のモンスターにどういう事が起こっているのかを調べるのには、眷属たちを送り込んで調べてもらうのが一番手っ取り早い。

 だが、次の第四戦も負けるつもりなので、そうなった場合に眷属たちがどういう状態に置かれるかが分からない。

 後でとられた階層を取り返したときに、眷属たちも以前と同じ状態で帰ってくればいいのだが、全く違った状態になっていると後味が良くない。

 ついでに言えば、そうした斥候的な役割をしてもらうのに一番いい眷属たちは、人の言葉が話せる狐たちだ。

 彼ら彼女らが帰ってきたときに、全く違った人格になってしまっては意味がないのだ。

 勿論そのままの状態で帰ってくる可能性もあるのだが、それはあくまでも推測なので、眷属たちにそんな危険な橋を渡らせるつもりは考助にはない。

 考助にとって眷属は、既に家族同然の存在なのである。

 そのため、元々負けるつもりだった第四戦は、前回と同じく画面越しに確認するしかないと結論付けた。

 その状態でどこまで確認できるかは不明だが、眷属たちが出せない以上、第四戦に関しては仕方ないというわけだった。

 

 そして始まった第四戦。

 他の者たちと同じように画面で相手の動きを確認していた考助は、思わず「なるほど」と呟いていた。

 その考助の呟きに全員の視線が集まった。

「どうしたんだ? リーダー種でも見つかったのか?」

 そう聞いてきたフローリアに、考助は首を左右に振った。

「いや、そう言うわけじゃないんだけれどね。・・・・・・取りあえず、今は戦いを見ていようか」

「それは構わないんだが・・・・・・?」

 納得した表情になっている考助に首を傾げながらもフローリアは再び画面に視線を戻した。

 そんなフローリアを見て、考助はあることを思いついた。

「ああ、そうだ。フローリア、ちょっと悪いけど、召喚陣の配置を任せていいかな?」

「何!? 私がか?」

 今までは考助が召喚陣を設置していたのだが、それだとどうしても集中が乱される。

 相手がやっていることを確認するために、設置作業は別の者に任せたかった。

 さらに言えば、フローリアに任せるのは、王族としてある程度戦略を習っているからという面もある。

「うん。そんなに気張らなくていいよ。ある程度上手に負ければいいんだし」

「いや、そんなことを簡単に言われてもな」

 渋るフローリアに、予想外の合いの手が入って来た。

「母上に自信がないのであれば、私がやりましょうか?」

 その絶妙なタイミングで割り込んできたのは、ミアだった。

 そのミアの言葉に、フローリアはムッとした表情を見せた。

「いや。コウスケの指示だから私がやろう」

「そうですか。残念ですね」

 フローリアがやる気を見せると、ミアはあっさりと引き下がった。

 ミアがフローリアにやる気を引き出させるためにわざと言ったのか、それとも本気で自分で引き受けるために言ったのかは分からないが、考助にとってはありがたい両者のやり取りであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助に代わって召喚陣を設置するのを渋ったフローリアだったが、流石というべきか「上手に負ける」という目的をしっかりと考えて配置をしている。

 むしろ、考助がやるよりもよほど上手に配置をして行っているかもしれない。

 だがそのお陰で、考助はじっくりと相手側のモンスターの動きを確認することが出来た。

「・・・・・・・・・・・・今、かな?」

 その日の終盤になって、考助が画面を見ながらそう呟いた。

 すると、その言葉に合わせるように、相手側から大量のモンスターが流れて来た。

 ついでに画面を拡大して確認すると、そこには考助が予想した通りの状態が映し出されている。

「ああ、やっぱり」

 フィールドの端っこから、大量のモンスターが流れ込んできていた。

 相手がモンスターを追加したのだ。

 ただし、考助が確認したのはそこではなく、どの種類のモンスターを相手が送り込んできたか、である。

 

「何かわかりましたか~?」

 考助の隣に座っていて、その呟きを聞きとがめたピーチが、確認するように視線を向けて来た。

 それに対して考助も頷いた。

「うん。取りあえず相手の狙いとやっていることは、恐らくわかったよ」

「そうですか~。それはよかったです」

「いや。ピーチのおかげだよ。あの助言が無ければ、多分気づかなかった」

 ピーチが「考え過ぎでは」と言ってくれたおかげで、別の観点から落ち着いてみることが出来て、その行動も把握することができた。

 それが無ければ、いまでもリーダー種の存在を探していた可能性もある。

「いえいえ~。私も他の人たちと同じように制圧戦を見ていたら、気付かなかったと思いますから」

 ピーチは謙遜気味にそう言ったが、それもあながち間違いではない。

 考助を始めとして、他のメンバーが「リーダー種では」と誤解してしまったのは、前の制圧戦を見て来たからということが大きい。

 

 二人の会話を聞いていたシュレインが、眉をひそめて聞いてきた。

「なんだ。二人は仕掛けがわかっているのか?」

「うん。まあ、大体ね。よくよく見れば、大したことではなかったよ。解説は今日の戦いが終わってからね」

 既に相手がやっていることはほとんど把握している。

 今更慌てて対応策を練る必要もないという事も分かった。

「それよりも今は、四戦負けて一層分とられたらどうなるかを確認する方が先だよ」

 フローリアはきちんと負けられるように召喚陣を配置しているので、今回も負けることは確定している。

 例え今から中級の召喚陣を設置しまくっても勝利するのは無理、という時間になっていた。

 これで、当初の考助の目的であった「一層分負けたらどうなるのか」という事が確認できる。

 あとは時間切れになるまで制圧されないように粘ればいい。

 そして、最終的にこの日も時間切れで相手側の勝利が決定するのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 アマミヤの塔が四戦負けたことによって、相手側に一層分のフィールドが渡ることになった。

 結局、最初に指定していた階層がまるまる相手に渡ったことになる。

 ついでに、もともとフィールド上に存在していたモンスターはもとより、制圧戦で召喚したモンスターも相手側にそのまま渡っている。

 さらに、おまけとばかりに相手側から「手打ち」の確認が来た。

 この「手打ち」というのは、塔の全てを制圧するのではなく、お互いに同意すればその時点で決着を付けることが出来る。

 今ならば、アマミヤの塔が一層分相手に取られた状態で、今回の制圧戦が終わるという事になるのだ。

 勿論、階層を採られた状態で終わらせるつもりがない考助は、すぐに「拒否」をしておいた。

 この「拒否」というのも、一回の制圧戦で使える回数が五回までと定められている。

 つまり、今回のアマミヤの塔は、あと四回相手の「手打ち」の申請を拒否することが出来るという事だ。

 逆に言えば、あと四回の「拒否」をして、相手側が五度目の「手打ち」をすれば自動的に制圧戦は勝敗に関わらず終わりということになる。

 制圧戦では、全ての階層を制圧しなければ決着がつかないのではなく、「手打ち」のシステムを使えば、ある程度好きなタイミングで終わらせることが出来るようになっているのである。

 

 今回の戦いでモンスターの動きを観察したことにより、相手側の目的もある程度推測することが出来た。

 ついでに、当初の目的であった一層分負けたらどうなるか、ということも確認できたので、あとは負けた分を取り返すだけである。

 それ以上を求めるかどうかは、またその時に考えようと思う考助なのであった。

四回負けてきっちり一層分相手に取られました。

本文には書いていませんが、差し出した階層の管理権は完全になくなった状態になっています。

当然途中で転移門がとぎれている状態なので、その手直しも行っています。

もっとも、考助としては次の戦いで返してもらう気満々ですがw

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