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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4部 塔のあれこれ(その10)
602/1358

(4)考助の加護

 夕食の後のこと。

 考助は、ココロが思いつめた表情で近寄って来たのを見て、内心で首を傾げていた。

 何かあったんだろうとは察したが、考助からは何も言わずにココロが話し出すのをあえて待っていた。

 そのココロは、何度か口を開け閉めして遂に言葉を出した。

「お父様。相談があります」

「うん。分かった。取りあえず、ここには皆がいるから場所を移ろうか?」

 いま考助たちがいるのは、管理層のくつろぎスペースだ。

 表情を見ても真面目な相談だというのが分かったので、考助は落ち着いた所で話を聞くことを提案した。

 考助のその台詞を聞いたココロも、コクリと頷いて同意する。

「はい。お願いします」

 ココロが若干ホッとしたような顔になったのを確認した考助は、彼女と一緒に場所を移して話を聞くことになった。

 

 部屋を移った考助は、言いだすかどうかをまだ迷っている様子を見せるココロに、出来るだけ優しく話しかけることにした。

「それで? どうかした?」

 上手くいったかどうかは分からないが、考助本人からすればかなり丁寧に話したつもりである。

 それでもココロは一瞬びくつくような動作を見せて、大きく深呼吸を繰り返した。

「あ、あの・・・・・・」

「ん?」

 首を傾げた考助に、ココロはそれでもまだ迷っている表情になっていたが、しばらくして決心したように口を開いた。

「お、お父様の・・・・・・いえ。あ、あの・・・・・・私が現人神の加護を戴くことは出来ないのでしょうか!?」

 ココロがそう言うと、一瞬空白の時間が出来た。

 考助にしてみれば余りに意外な言葉に、思わず絶句してしまったのだ。

 それをココロが何を勘違いしたのか、急に慌てふためいたようにもじもじとしだした。

「あ、や、やっぱり、不躾ですよね。神に直訴して加護を欲するなんて・・・・・。申し訳ありませんでした」

 早口になってそうまくしたてたあと、ココロは部屋を出て行こうとした。

 それを見た考助は、慌ててココロの腕をつかんだ。

「い、いや、ちょっと待って。そういう事じゃなくて、余りに意外で驚いただけだよ」

「・・・・・・ハイ?」

「ココロって、僕の加護欲しかったの?」

 首を傾げたココロは、その考助の言葉に呆然としてしまうのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そもそもココロが考助の加護を必要とすることになったのは、シルヴィアの後継として期待されたからだ。

 別に考助もシルヴィアも、ついでにトワもココロに考助の加護が必要だとは一言も言っていなかったのだが、周囲の反応と本人の思い込みでそういう事になってしまっていたのだ。

 結局ココロは、シルヴィアにも相談できず、一人で何とか考助の加護を得られないかと奮闘してきたのである。

 だが、既に三柱の加護を得ているココロだが、どうしても考助からの加護を得ることはできなかった。

 四つ目を得るのは不遜過ぎるのか、とか、三つも得ているので良い気になっているのか、など色々ネガティブな思考に陥ったりもしていた。

 シルヴィアもそうしたココロの様子には気付いていたのだが、その直接の原因が考助の加護を得られないからという事までは分かっていなかった。

 もしそのことを知ったのであれば、その時点で諭すなり叱り飛ばすなりしただろう。

 シルヴィアもココロを自分の後継として見てはいたが、元々考助の加護が必要になるなんてことはかけらも考えていなかったのだから。

 ついでに言えば、三柱の加護を得ているココロは、十分すぎるほどの資格があるのだ。

 ココロにとって不幸だったのは、両親がシルヴィアと考助というあまりに一般からかけ離れた存在だったため、一般的な常識に欠ける所があったことだ。

 一応シルヴィアとしては、教えているつもりだったのだが、それでもまだ不十分だったといえるだろう。

 

 考助としては、ココロが自分の加護を欲しがっていたなんてことは全く考えていなかったので、彼女の言葉は意外だったのだ。

 何より、順調に加護を増やしているココロが、自分の加護を欲しがる理由が思い至らなかった。

 落ち着きを取り戻したココロから話を聞いた考助が、思いっきり納得して頷いた。

「あ~、なるほどね。シルヴィアの代わりを務めるのに、僕の加護が必要だと思い込んでいたんだ」

「は、はい。あの・・・・・・違うのでしょうか?」

 考助の様子からようやくそのことに思い至ったココロが、恐る恐るといった感じで聞いてきた。

「うーん、どうだろう? あった方が良いのは確かだろうけれど、絶対に必要かと言われると微妙だよなあ」

 国家の運営には、神殿や教会のサポートは必要だが、そもそもそれらの人材が加護を持っているわけではない。

 むしろそっちの方が稀な状態なのだ。

 ただし、ラゼクアマミヤはその成り立ちからいって特殊な国なので、加護が必要だという意見もそれなりに同意できる。

 といっても、既に即位しているトワは、考助の実の息子だ。

 その点から言えば、トワのサポートをすることになるココロが絶対に考助の加護を必要としているかといえば、そうでもないのだ。

 そもそもトワは、フローリアとは全く最初の立ち位置が違っているのである。

 

「そ、そうだったんですか」

 思わず床に手を突きそうになったココロだったが、なんとかそれはこらえることが出来た。

 ただ、思いっきり項垂れるのは仕方のないことだっただろう。

 思い切って行動したのは良いが、実はあまり必要ないかもしれないと言われれば、そうなるのも当然だ。

「シルヴィアとか僕に相談するのは無理だったとしても、トワくらいには話を聞いてみるべきだったね」

 考助も苦笑しながらそういった。

 ココロがトワに直接相談していれば、トワも考助と似たような答えを返しただろう。

 考助はそう確信している。

 

 話を聞いて落ち込んでいるココロを見て、考助はさくっとその話を付け加えた。

「それに、ココロが僕の加護が欲しいっていうんだったら、あげること自体は特に問題ないよ?」

「そうですか・・・・・・はい? えっ・・・・・・? あれ?」

 一瞬考助に言われた意味が分からなかったのか、ココロは首を傾げてすぐに驚いた顔になった。

「えええええっ・・・・・・!?」

 そのココロの様子を見て、考助は苦笑した。

「いや、そんなに驚くこと?」

「だ、だって、今まで呼びかけても一度も・・・・・・」

「ああ、それはね。やり方が間違っているんだよ。ちゃんとシルヴィアに聞いたら教えてくれただろうに」

 ここでもココロは間違っていたのだ。

 考助が現人神であることが、加護を得る方法も特殊にしていた。

 そのため、通常のやり方で加護を得ようとしていても得ることはできないのである。

 もっとも、次々と女神達を会話を行って、三柱も加護を得ているココロは、その時点で特殊だったりするのだが。

 通常神の加護は、神から一方的に与えられるものになる。

 

 一方で、考助が加護を与える場合は、神域にいるわけではないので物理的に近い距離にいなくてはいけない。

 そもそも神域にいる神々とは加護の与え方が違っているのだ。

 要するに、物理的にも精神的にも「近しい距離」にいれば、加護を与える事はできるのだ。

 あとは考助が与えるかどうかを判断するだけなのである。

 勿論、考助としてはココロに加護を与えることには何の問題もないのだ。

「で? どうする?」

「・・・・・・お、お願いします・・・・・・」

 どうにも自分が空回りしていたと自覚したココロは、恥じ入るように顔を赤くした。

 それでも当初の目的通りに、考助の加護を身に付けることが出来たのであった。

今更ながら、考助から加護を得る方法でした。

今まで具体的にどうするとかは書いていなかったかと思いますので。

ちなみに、リリカの時とは変更があります。

考助も裏では現人神としてレベルアップをしているわけですw

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