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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4部 それぞれの現状
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(2)王家の事情

 考助への報告を終えて、魔力供給施設の建設計画は本格的に始動することになった。

 今までは第五層の街の郊外に研究用に造っていた建物を、本格利用できるように増設するのだ。

 それに伴って様々なプロジェクトが動くことになり、塔への人と物の出入りは益々多くなっている。

 当然それだけの物資が動けば、またクラウンが何か計画していると注目させるのは当然の流れだろう。

 もっとも、これまでも事前研究の話は漏れ出ているので、情報を集められる能力を持つ者たちにとっては、ついに動いたかと考えている者もいる。

 ちなみに、情報が流出しているのは、職員による漏えいが起こっているわけではなく、クラウンがわざと流しているのだ。

 何しろ、今までなかった施設であり、生活を一変させかねない施設なのだ。

 突然発表して混乱させるよりも、徐々に浸透させて住人達に受け入れやすくした方がいいと考えたのである。

 勿論、肝心かなめの重要な所は、一切表に出ないようにしてある。

 そう言う意味では、技術を盗まれると言った心配は全くないのである。

 

 ハードの部分の計画が順調に進んでいる間、ソフトの方も着実に問題をクリアしていった。

 一番大きな問題だった国家とクラウンのどちらが主導権を握るかという問題は、結局ラゼクアマミヤが握るという事になった。

 計画通りいけば、施設から供給される魔力は、莫大なものになる。

 使い方によっては、というよりも、間違いなく軍事的な利用を試みる者が出てくるだろう。

 そのため、一組織であるクラウンよりは、国家がコントロールできるようにした方が良いと判断したのだ。

 確かにクラウンも冒険者という戦力を握ってはいるのだが、冒険者は絶対に組織の言う事を聞くという存在ではない。

 国の軍隊ほどの強制力はないので、いざというときは裏切られてもおかしくはないのだ。

 そうした組織に、莫大なエネルギーの運用を一手に任せるのはまずいという結論になったのである。

 将来的に国外に施設を建設する可能性はあるが、その時は重要な場所をブラックボックス化して運用するという事になっている。

 ラゼクアマミヤの国策で広めるという事にすれば、秘密を開示するようにと無茶なことを言って来る国家をある程度抑えることも期待されているのだ。

 これがもしクラウンだと、どれだけ強大な組織になろうが、あくまでも一組織としてしか見られないため、国から過大な要求される可能性もある。

 そうした様々な観点から、ラゼクアマミヤに主導権を持たせる、という事になったのである。

 

 考助はそうした話をフローリアから聞いた。

「ふーん。結局国が主導を握ることになったのか」

「そうだ。クラウンは大陸内では一大勢力になっているが、他大陸ではまだまだだからな。間違いなく足元を見られる」

「それはそうか」

 フローリアの言葉に、考助は思い切り納得した。

 クラウンのセントラル大陸以外への進出は、当初から目標にはしていたが中々うまく進んでいないのが現状だった。

 やはり、クラウン=ラゼクアマミヤとみられていることが、最大のネックになっているのだ。

 モンスターが跋扈しているセントラル大陸では急激に広まったクラウンカードの利点も、他の大陸ではさほど効果が無かったのだ。

 勿論、裏には国が主導して「ステータス表示などあまり必要ない」という噂を広めているのもあるのだが。

 積極的に支部を受けれた国々ではそうした噂は広めていないのだが、未だに少数派のためにその勢いに負けているのが現状だった。

 塔の麓にあり、ステータスを使って効率的な運用が出来そうなセイチュンの支部ではそうした噂は跳ね返せそうだが、何しろまだ出来たばかりなのだ。

 まだまだ優位に立っているとは言い難いのである。

 

 考助とフローリアの会話を聞いていたミアが、フローリアを見た。

「随分とのんびりされていますが、やはりお仕事はお兄様に振られたのですか?」

「ああ」

 短いフローリアの返答に、ミアは「そうですか」とだけ答えた。

 最近のフローリアは、昔から続いている案件以外のほとんどをトワに任せるようになっていた。

 明らかに権限を委譲しはじめているその動きに、周りの者たちも引退を考えているのではないかと噂していた。

 フローリア自身もそれを止めていないので、ある程度の確信をもってその噂も広まっている。

 そもそもフローリアは、普段から自分はあくまでも現人神(考助)の委任を受けて統治しているだけだと公言している。

 もはや公然の秘密となっている考助の息子であるトワに、すぐに王としての座を譲るのは当然だと考えているのだ。

 周囲の者たちもそうした思いを察しているのか、それに関しては何も言わないようになっていた。

 勿論、フローリアの女王としての働きを軽く見る者は、ひとりもいない。

 それでも正当な理由が無いままに王座に居続けると、何が起こるかわからないのだ。

 親子の仲がいいので今は考えられないが、トワを担ぎ出してフローリアを追い出す勢力が生まれないとも限らない。

 特に、国外の勢力はそうした動きをとってもおかしくないのだ。

 そうした者たちをけん制するためにも、その噂が公然の秘密として広まるのは悪くはないのである。

 

 フローリアのそうした考えを見抜いた上で、ミアはため息を吐いた。

「お兄様も益々忙しくなりますね」

 別にミアはフローリアに向かって言ったわけではないのだが、フローリアはそう受け取ったのか、肩を竦めてミアを見た。

「何だったらミアが手伝ってもいいんだぞ?」

「冗談はおやめください。私は、お兄様に取って代わるつもりなどありません」

 二人は言葉遊びのように軽い調子で話をしているが、それは今いる場所が管理層で身内以外には誰も来ないと分かっているからだ。

 もし今の二人の会話が外に洩れようものなら、内外の動きが激しくなる。

 勿論、トワではなくミアを次代の王にするための動きだ。

 もっとも、トワは既に王太子として盤石な働きを見せている。

 ミアにそうした後ろ盾が付くとしても、そもそもの権力基盤が弱いか海外の勢力などで、ラゼクアマミヤにとってもミア本人にとっても碌でもない結果しか残っていない。

 それに、そもそもフローリアに言った通り、ミア自身が女王の座に就くつもりなど毛頭ないのだ。

 

 そのことを本人を抜かせば一番よく分かっているフローリアが大きく頷いた。

「まあ、お前ならそういうだろうな」

「全く・・・・・・。いくら管理層だからと言って、気を抜きすぎではありませんか?」

 呆れたような表情になったミアが、フローリアを睨んだ。

「そういうな。管理層だからこそ、ではないか」

「それは、まあ、そうですね」

 城に帰れば王女としての立場を取らなくてはならないミアは、フローリアの言葉に同意するしかなかった。

 フローリアは、ミア以上の重圧を常に受けなくてならないのだ。

 管理層では、素の状態になりたいという気持ちはよくわかる。

 

 だが、とミアは、フローリアが取った次の行動で、白い目を向けた。

「だからな。私がこうしてコウスケに甘えるのも当然の権利なのだ」

 そんなことを言って、フローリアは考助の傍によって右腕を絡め取った。

 明らかにミアに見せつけるような態度だった。

「そんな権利はありません! ついでに、管理層でラブラブは禁止です!」

「そんな固いことを言うな。今、ここには親子しかいないんだぞ?」

 そんなことをいったフローリアだったが、実際にはミツキが傍にいたりする。

 ただしミツキは、面白そうなものを見ている感じで微笑んでいるだけだ。

 自分にとっては不利な状況だと悟ったミアは、フローリアと同じように考助の傍により反対側の腕を取った。

「だったら、私はこっち側です!」

「ほほう。そう来るか」

 お互いに牽制し始めた二人に挟まれて、考助はただじっとしていた。

 こういう時に余計な口を挟むと碌な目に合わないと、過去の経験で分かっているのだ。

 

 結局二人のバトル(?)は、シュレインが来るまで続くことになるのであった。

というわけで母娘のバトルでしたw

い、いかん。ミアが完全にパパっ娘になっている。

こんなはずじゃなかったのに。

益々婚期が・・・・・・。

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