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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第5章 塔のメンバーと仲良くしよう
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(6) 「相談」と「計画」

本日2話更新の内の2話目です。読み飛ばしにご注意ください。

 シュレインから相談を受けたミツキだったが、その返答は実に簡潔だった。

「考えすぎよ」

「・・・は? いや、しかし・・・」

 戸惑うシュレインに、ミツキが少し呆れたような表情になった。

「あのね。コウスケ様は、貴方に血を吸われることは嫌がっているけど、それ以外はもう普通に受け入れてるわよ」

「いや、確かにそうなのだが、それと恋愛とは別では・・・?」

「そう? それじゃあ聞くけど、あなたはどうなれば、相手が自分を愛してくれてると分かるの?」

「それは、態度とか言葉とか・・・・・・ふむ?」

 シュレインは自分で言った言葉に、ふと疑問を感じた。

 よくよく考えてみれば、考助はそういった直接的な言葉こそ自分に言ってきたりはしていないが、自身に対する態度はそうでもない。

 シュレインは、考助に対してわざとらしく密着したりしているが、特に拒絶したりすることは無いのだ。

 最初こそ血を吸われると思ってか、くっつかれるのを拒否したりしていたのだが、今ではそんなことはない。

 と、ここまで考えて、シュレインはふと思った。

「・・・・・・もしかして、最初の頃の態度も血のことだけでは、なかったのかの・・・?」

「・・・気づいてなかったの?」

 ミツキのジト目に、シュレインは焦りで顔を赤くした。

 今言われるまで、気付いていなかったのだ。

 最初のころの態度は、あくまで血を吸われることを拒否していたのかと思っていたのだが、そうではなく異性にくっつかれることに、焦っていたとようやく思い至ったのだ。

 正確にはどちらでもあったのだろうが、最初の印象が強すぎて、そこまで思い至れなかったのだ。

「・・・なんというか・・・吾がここまで振り回されるとはのう・・・」

 思い当たりがありすぎて、若干自己嫌悪に陥ってしまいそうになる。

 そんなシュレインの様子を見て、ミツキが笑っていった。

「しかもコウスケ様は、その自覚が全くないからね」

「・・・・・・ハア・・・」

「クスクス。・・・まあ、それはともかく、一つ提案というかアドバイス?」

 落ち込むシュレインに、ミツキが笑いながら言った。

「コウスケ様、あの性格だから、自分から手を出そうとはしないわよ。私とコウヒがいるから」

 コウヒとミツキという存在がいる以上、自分から他の女性に手を伸ばそうとするような性格ではないのだ。

 たとえ考助が男で、ハーレムに憧れのような思いを持っていても、である。

「・・・・・・む」

 そのことに思い至ったシュレインが、考え込むような表情になった。

 ミツキの言葉に、思い当たりがありすぎる。

 シュレインは、一つため息を吐いて、ミツキに頭を下げた。

「・・・ハア。なんというか・・・ミツキ殿、感謝する」

 ミツキは、本来であれば、自分を排除する方向に動いてもおかしくはない立場なのだが、最初からこのことに関しては協力的だった。

 むしろ一貫して、考助がハーレムを作ることを進めている感じさえある。

 頭を下げたシュレインに、ミツキはひらひらと右手を振って、

「いいのよ。こっちも色々思惑があってやってるんだから。あ、でも安心して。少なくともその思惑だって、今の貴方にとっては悪いことじゃないから」

 そうはっきり言い切ったミツキに、シュレインは苦笑を返した。

「まあ、良いがの。・・・ともかくおかげで吹っ切れたので、これから色々動こうとしようかの」

「あ、それなら、一つ提案があるんだけど、いいかしら?」

「ふむ。聞こうかの」

 ミツキの提案を聞くシュレインの顔が、だんだんと面白そうな表情になって行き、最終的には「面白い。乗った」と頷いたのだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 シルヴィアは、ミツキとシュレインに相談があると言われて、ヴァミリニア城へと連れ込まれてしまった。

 そして今、二人からされた「相談」に、いろんな意味で追いつめられていた。

 思えば今日は、朝から不穏な空気が漂っていた。

 朝はいつものように管理層の一室で、ペンダントの神具を使って、エリサミール神と交神する訓練をしていた。

 余談ではあるが、ペンダントの神具をシルヴィアが、交神具と適当に呼んでいたら、考助がそれでいいんじゃないと決めてしまったので、それ以来シルヴィアは、そのペンダントを交神具と呼ぶことにしている。

 今までの訓練のおかげで、短い間ではあるが、独力でエリサミール神と交神出来るようになっていた。

 とはいっても、エリサミール神は忙しいらしく、いつでも繋がるというわけではないのだが。

 繋がった時もほとんどが、『繋がりましたよ。その調子で訓練に励んでください』という短い会話で終わってしまうのが常だった。

 以前に、忙しいのであれば訓練は時間を置いて行おうかと思ったのだが、逆にエリサミール神から『それでいいから、いつでも繋いできなさい』と言われて、訓練を続けている。

 そんないつもの日課を行ったのだが、今日は一言で終わらずに、シルヴィアにとっての不穏な言葉を残して行ったのだ。


『貴方にとって重要な選択が訪れますので、きちんと選びなさい。貴方にとって、より良い選択をすることを願っています』


 エリサミール神が、そんなことを言って、去って行った。

 シルヴィアにとっては、紛れもなくエリサミール神からの神託である。

 とはいってもその時のシルヴィアには、思い当たることはなかった。

 そう思っていたところ現在の状況が訪れた。

 まさしく選択を迫られている。ミツキとシュレインの二人から。

 その「相談」の内容に、シルヴィアは思わず、こんなことで神託を下さないでほしいですわ、と思ったのだが、そもそもエリサミール神はこの「相談」が神託だとは一言も言っていない。

 だが、シルヴィアは既にこの「相談」が神託だと思ってしまっている。

 正解かどうかは、直接エリサミール神に聞かないと分からないが、一生聞くことはないだろうと思った。

 確認するのも恐れ多い上に、それが正解だった場合にどんな返事を返していいか分からない。

 とまあ、現実逃避的にそんなことを考えていたシルヴィアだったが、目の前に現実ミツキとシュレインが迫っていた。

「・・・ええと。それは、今すぐ答えないといけませんか? 出来ればゆっくりと考えたいですわ」

「こういうことは、勢いも大事と思うがの?」

 間髪容れず答えたシュレインに、ミツキも頷いた。

 返答は後日、というわけにはいかないらしい。

 とはいえ、神託もあったことだし、と理由を付けて何とか時間を稼ごうと試みた。

「で・・・ですが、流石に急すぎて、すぐに返答はできませんわ」

「その返事が、既に答えを出してると思うのは、私だけ?」

 ミツキの突っ込みに、思わずシルヴィアは黙り込んでしまった。

 確かにミツキの言う通りなのだ。

 二人の「相談」を聞いたとき、照れや戸惑いはあったとしても、拒否感はなかったのだ。

 そんなことに思い至って、黙り込んだシルヴィアを、二人は黙って見ていた。

 この期に及んで、逃げ出すことは無いだろうと思ったのか、考え込んでいるシルヴィアを追いつめるようなことはしてこなかった。

 色々思う所が無いわけではなかったが、それでもシルヴィアは決断した。

「わかりましたわ。貴方たちの提案に乗りますわ」

 結局のところ現状を打破したいと思っていたのは、シルヴィアもシュレインも同じだったのだ。

 そんなわけで、シルヴィアの返事に、ミツキとシュレインもある「計画」を進めることにした。

 その「計画」の決行は、今晩に決まったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 その時考助は、管理層に作った風呂にのんびりと入っていた。

 最初に風呂を作った時は、三人入るといっぱいといった広さだったが、メンバーが増えたので、十人程度が入れる大きさの物に設置しなおしている。

 今日は、ミツキがシュレインやシルヴィアとこそこそとやっていたので、一人で入っている。

 二人で入る風呂も色々と素晴らしいのだが、一人だとのんびり入れるので、これはこれで問題ない。

 そんなことを考えながら、ゆったりとしていた考助だったが、誰かが風呂に入ってくる音がしたのでそちらの方を見た。

 その時は、コウヒとミツキが入ってきたのかと思っていた。

「な・・・なな、何をやってるの・・・!?」

 だがしかし、入ってきたのは、シュレインとシルヴィアだった。

 しかも、その素晴らしい体に、一枚のタオルを巻いただけの状態で。

「いや、何。吾等も一緒に風呂に入ろうかと思っての」

「駄目、ですか?」

 若干照れた様子を見せるシュレインと、完全に赤くなって若干確認するようにこちらを見てくるシルヴィア。

「いや、ダメってことは無いけど。むしろ、嬉しいけど・・・って、何言ってるんだ・・・!?」

 考助も若干混乱している。

「いや、だけど・・・良いの?」

「はあ。ほんとに鈍いのう。いや、予想通りと言えば、予想通りなのだが・・・」

「流石ミツキ様、ですわ。・・・コウスケ様、私たちだって、覚悟もなしにこんなことをしたりしませんわ」

「え・・・!? そう、なの?」

 流石の考助も、シルヴィアの言葉に、何が含まれているかはきちんとわかった。

 確認するように見られたシュレインも、大きく頷く。

「そうだの。本来であれば、そなたから動いてくれるのを待って居たかったんだが、それではだめだと言われたの」

 誰が何を言ったのか、すぐに分かった考助である。

 何より、三人で昼間からこそこそやっていたのだから。

 そして、ミツキの予想は、間違いなく当たっていたのである。

「本当に、良いんだね?」

 考助の最終確認に、二人とも頷いた。

 ここまでしてくれた二人を拒絶する気は、流石の考助も無かった。

 いい感じにミツキの掌の上で踊らされている気もしなくもなかったが、結局考助は、二人を受け入れたのであった。

ピ「コレットさんは、良いんですか~?」

コレ「なな、なんで私が・・・!?」

ピ「はあ。これは当分先は長そうですね~」

コレ「だ、だから・・・! はあ・・・もういいわ。

   それで? ・・・そういうあなたはどうなのよ?」

ピ「私は、いつでも構いませんが、順番がありますから~」

コウ「さっさと自覚しないと、取り残されますよ?」

コレ「え? えっ・・・!?」


↑風呂場で騒ぎが起きてたときに三人のこんなやり取りがあったとかなかったとか

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というわけで、ようやく考助が、シュレインとシルヴィアを受け入れました。

今さら、という話も?


2014/6/11 脱字訂正

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