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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4部 息子たち
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(3)初めての発動

 少し準備があるからといって逸るルカを抑えた考助は、何人かのメンバーに集まってもらう事にした。

 トワにメッセンジャーになってもらいルカの母親であるシルヴィアを呼んでもらい、それぞれの塔の制御室で管理をしていたシュレインとコレットには考助が声をかけた。

 くつろぎスペースで張り切った様子を見せていたルカを見て、ハクも見に来ていた。

 全ての準備が整ったところで、考助はルカに魔法陣を発動していいと許可を出したのだった。

 

 考助たちが今いるのは、管理層にある厳重な結界に守られた部屋だ。

 もともとは、考助が爆発性のある魔道具を開発した時などのために用意したのだが、今まで使われたことはほとんどない。

 そういった魔道具を作る機会が無かったというのもあるのだが、どれだけ頑丈な結界を作れるか試した時点で満足してしまったのだ。

 その仕上がりを見たシュレインは、「一国を滅ぼせるほどの魔道具を開発するつもりか?」と呆れていたほどだ。

 幸か不幸か本来の目的で使われることはついぞなかったのだが。


 その部屋の壁際で考助が集めた者たちが、ルカの様子を見ていた。

「で? わざわざ吾らを呼び寄せるくらいだから、何かあるのだろう?」

 半分確信したようにそう言ったシュレインに、考助はニヤリと笑みを浮かべた。

「まあね。結果はこうご期待、と言ったところかな?」

「ほう? それは楽しみだの」

 そう言って笑顔を見せたシュレインに対して、シルヴィアが右手を頬に当ててため息を吐いた。

「またあの子は何をやらかしたんですか?」

「また・・・・・・って、前もなんかやらかしたの?」

「はい。まあ、あの時は特に大事には至りませんでしたが」

 若干心配そうな表情になったシルヴィアは、完全に母親の顔になっていた。

 その顔を見た考助は、安心させるように笑った。

「大丈夫だよ。あの魔法陣なら暴走するってことは無いから」

 その考助の言葉に、安心したようにため息をついたシルヴィアだったが、ふと首を傾げた。

「それでしたら、何故私たちをこちらに呼んだのでしょう?」

「ああ~。うん。それはまあ、結果を見てから判断してほしいかな?」

「・・・・・・わかりました」

 何とも微妙な考助の言い方に、シルヴィアは曖昧に頷くのであった。

 

 そんな外野の視線もものともせずに、ルカは魔法陣を発動させる準備を行っていた。

 周囲の視線に頓着していないのは、幼い時から周囲の注目を浴びるのに慣れているからだろう。

 ラゼクアマミヤの王族との異母兄弟というのは、それだけで注目を浴びる存在なのだ。

 ルカが行っている準備は、何か特別な道具があるわけではない。

 考助のように何も用意せずにいきなり魔法陣を空中に描けるわけではないので、特別な紙に書いた魔法陣が必要になるがそれだけだ。

 この魔法陣を発動することを夢見て、何度も何度も書いてきたので間違えている所は無いと断言できる。

 それだけルカにとってはこの魔法陣には思い入れがある。

 何しろ人生で初めて全くの一から自分だけの力で作った魔法陣なのだ。

 

 紙に書かれた魔法陣をなぞるように、ルカが呪文を唱えながらゆっくりと魔法陣の発動を行っていく。

 それに合わせるように、紙の魔方陣が光り、その光の軌跡に合わせるように空中に大きな魔法陣が形作られていった。

 いきなり地面に魔法陣を作る考助からすれば手間がかかっているように見えるが、これが普通の魔方陣の発動方法だ。

 それどころか、これでもかなり簡略化されている。

 これだけの手順で済んでいるのは、学園の教師たちから高い評価を得ているルカだからこそだ。

 そのルカが呪文を唱えるたびに手元の魔方陣が光り、それに合わせて空中の魔方陣にもさまざまな文様が描き加えられていく。

 そして、最後の瞬間に魔法陣が大きく光ると後にはその痕跡は何も残っていなかった。

 ただ部屋の中でルカの「やったぞ!」という声が響いただけだった。

 だが、ルカはその声を発した次の瞬間には、

「うわひゃ!?」

 という何とも言えない声を発したあとに、パタリとその場に倒れ込んでしまった。

 さらに、そのルカの手から何かが零れ落ちるように、部屋の床を転がって行った。

 

「ルカ!?」

 突然倒れたルカを見て、慌ててハクがルカの傍に寄ろうとしたが、それを考助が止めた。

「あ~、コウヒ。一応何でもないと思うけれど、頭とか打っていないか確認してもらって良い?」

「かしこまりました」

 のんびりした口調で言った考助に、コウヒが一つだけ頷いてルカに近づいて行った。

 その様子を見て何かを言おうとしたハクだったが、考助と同じように全く慌てた様子を見せていないシルヴィアを見て黙り込んだ。

 慌てているのは自分だけで、他の者たちはルカが何故倒れたのか分かっているのだとわかったのだ。


 考助に指示を受けてルカの様子を見ていたコウヒだったが、やがて問題ないとばかりに頷いた。

「・・・・・・特に問題は無いようです。頭も強く打った様子は無かったですし」

「そう。それはよかった」

 予想通りの結果に、考助が頷いた。

 それをみたハクは、首を傾げながら考助に聞いた。

「お父様、ルカはなぜ突然倒れたの?」

 ハクがそう聞いてきたのは、彼女の本質がドラゴンだからだろう。

 一番根本的な問題に気付いていないのだ。

 一方で、他の者たちは考助が曖昧な様子でルカの魔方陣を評していたのを今回の実験で理解できていた。

「ん~。そうだな・・・・・・。んじゃあ、トワ。ハクに説明してあげて」

「私がですか!?」

 まさか指名されるとは思っていなかったのか、それまで黙って様子を見ていたトワが驚いた表情を見せてからハクに説明をし始めた。

「簡単に言えば、魔力の枯渇で倒れたんだ」

「魔力の枯渇?」

 ハクはそう言って首を傾げたが、それはある意味仕方のないことだった。

 本質がドラゴンのハクは、その身に膨大な魔力を宿している。

 先程の魔方陣で動いた魔力を見て、それくらいで魔力が枯渇するとは考えていなかったのである。

 だが、それはハクの立場だからこその感想であり、普通の者が見れば全く逆の感想を抱いただろう。

 残念ながら、この場にいるのは全員が普通の感覚を持っているとは言い難かったので、そうはならなかったのだが。

 

 コウヒがルカの様子を見ている間に、シュレインがルカの手から零れ落ちた物を拾い上げた。

「・・・・・・なるほど、氷か」

 シュレインが拾ったのは、一辺五センチくらいの大きさの氷の塊だった。

 ルカが作った魔法陣は、氷を生み出すためのものだったのだ。

 ちなみに手で直に持っているのに、シュレインが冷たそうな様子を見せていないのは、魔法で手を守っているからだ。

「なんというか、流石コウスケの息子だと言うべきかの」

 そういったシュレインの表情は、半分呆れていた。

「そうですね」

 そんなシュレインに対して、シルヴィアまで同意するように頷いている。

「いやちょっと待って。シルヴィアの息子でもあるんだけど?」

 慌ててそう言った考助だったが、ジト目で自分を見て来た女性陣に「ウッ」とたじろいだ。

 確かに考助本人にしてみても、そう言われる思い当りが無いわけでもない。

「いやまあ、うん。そういうことでいいです。はい」

 結局考助は、視線をそらしながらそう言うしかなかったのである。

思ったよりも長引いたので、魔法陣の考察については次話にします。

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