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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4部 ミアの挑戦
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(2)第十五層

 考助は、いつものようにくつろぎスペースのソファーで寝そべっていた。

 その視線の先には、黒狼と白狼を撫でているミアがいた。

 その二匹の狼は、先日考助と一緒にアマミヤの塔の第八十一層にいった際に、ミアにとても懐いてきたのだ。

 その懐きようが考助に懐くナナに似ていたのと、ミアがその二匹の狼を欲しがったため、考助が傍にいることを快諾したのだ。

 考助の許しを得たのが分かったのか、その途端に二匹の狼はその場でミアに飛びついていた。

 その様子をたまたま傍で見ていたコレットが、流石コウスケの娘ね、と感心していたのは余談である。

 

 そんな考助の視線を感じたのか、狼を撫でながらミアが話しかけて来た。

「父上」

「ん~?」

「塔の管理はなさらないのですか?」

 唐突なミアの言葉に、考助は体を起こした。

「どうしたんだ? 突然」

「いえ。特に深い意味は無いのですが、何となく不思議に思ったので」

 その言葉通り、ミアは特に深く考えたわけでもなく、突然その疑問が思い浮かんだのだろう。

 その手は相変わらず狼を撫でており、視線もその狼に向けていた。

 

 そんなミアを見ながら、考助はこれまた思ったままの事を口にする。

「そうだなあ・・・・・・。ミアも知っての通り、今のこの塔の収入は飽和状態になっているだろう?」

 思ったよりも真面目な返答が返ってきたため、ミアも狼を撫でていた手を止めて、考助を見て頷いた。

「そうですね」

 考助が言った通り、今現在のアマミヤの塔の収入、すなわち神力が一日に入ってくる量は、既に上限値に達していた。

 最初の頃は、上限があるとは思っていなかったのだが、ある時を境にその数値が上がらなくなったのだ。

 それでようやく、その値が上限なんだと理解できたのだ。

 確実に上限を越えて神力を得ているはずなのだが、余剰分の神力は毎日どこかに消えていっている状態なのだった。

 ちなみに、他の六つの塔も既に収入はプラスになっているので、アマミヤの塔から敢えて神力を分けなくてもいい状態になっている。

 もし、塔の経営をするゲームがあるとすれば、今の状態は既にエンディングを迎えていて、あとはクリア後のアイテム収集に走っているような感じなのだ。

 それはそれで楽しいのだが、急いでやる必要性も感じないので、いまいち身に入らないのだ。

 

 ゲーム云々は言っても分からないので、考助は別の言葉で置き換えてミアにそれらの話をした。

 すると、ミアは真面目な表情になって考助を見た。

「父上、ご相談があるのですが・・・・・・」

 そう言ったミアの顔は、真面目でありながら、何かを欲しがっているような表情になっていた。

 その顔を見た考助は、何となくミアの次の言葉が予想できたが、一応疑問を口にした。

「何?」

「その・・・・・・私に管理を任せてもらえないでしょうか?」

 躊躇いがちにそう言ったミアに、考助はあっさりと頷いた。

「いいよ」

「やっぱりそうですよね・・・・・・って、え? いいのですか?」

 あっさり許可が出たことに驚いたのか、ミアは目を丸くしていた。

「うん。構わないよ。取りあえず、一層分だけ権限渡してみる?」

「えっ、あ、はい! お願いします!」

 その慌てふためくミアの様子に、考助は思わず吹き出してしまった。

「なんでそんなに慌ててるの?」

「い、いえ。そんな簡単に許可されると思ってなかったから・・・・・・」

 笑った考助を若干睨みながら、それでもミアは嬉しそうに笑顔になった。

「なんだ。そんなに管理してみたかったの?」

「勿論です!」

 そういって力強く頷いたミアに、考助はもっと前から権限移譲しておけばよかったと思った。

 もっとも、ミアがここまで塔の管理をしたいと強く望んでいたことを知ったのは今なので、考えてもしょうがないのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 早速行きましょう、と急かすミアに引っ張られて、考助は第十五層の権限をミアに渡した。

 流石に全部の神力を渡すわけにはいかないのだが、差し当たって考助が使う事もないので、かなりの量の神力が使えるようにしてある。

 はっきり言えば、考助がアマミヤの塔を攻略したばかりの時よりもかなり潤沢に神力が使えるようになっている。

 そんな甘々な状態で管理するように設定した考助だったが、流石に無条件で階層の管理を任せたわけではない。

 ミア一人で階層の出入りをさせるわけにはいかないのだ。

 そのため、第十五層に出入りをする際には、ミハクとミクロを必ず連れていくこととした。

 ミハクとミクロは、ミアに懐いている白狼と黒狼のことだ。

 以前は違った名前が付いていたのだが、ミアに懐いているという事で、試しに改名をしてみたら簡単に出来た。

 左目で確認してもきちんと改名されていたので、問題ないのだろう。

 

 そんなミハクとミクロを必ず連れていくことと言った考助に、ミアは思い切り頷いていた。

「勿論!」

 そもそもミハクもミクロも、元は第八十一層で上級モンスターを相手に戦っていたので、第十五層程度のモンスターにやられることは無い。

 ただし、考助はその二匹を常に傍に置くこと以外にもう一つの条件を付けた。

「もう一つ条件がある」

「もう一つ、ですか?」

 何を言われるのか不安な表情になったミアに、考助は頷きながら言った。

「管理層への出入りの権限を付けるから、必ずミカゲを傍につけること」

「ミカゲを、ですか?」

 考助の提案に、ミアは首を傾げた。

 もともとミカゲは、ミアのためにつけられている護衛だ。

 だが、これまで管理層にまで連れてきたことは無い。

 それは、管理層にはミアを害する者が出入りすることが無いという理由だったのだが、今後ミアが階層を管理するとなるとどうしても人手は必ず必要になる。

 戦闘要員としてはミハクとミクロだけで十分なのだが、それ以外のことではミカゲが役に立つ。

 そうしたことを考えた上で、考助は条件として加えたのである。

 

 だが、そんな考助に対してミアは不安げな表情になった。

「ミカゲを、ですか。あの・・・・・・母上への説得は・・・・・・?」

 現状ミカゲは、王家が雇っていることになっている。

 一応ミアの個人予算から支出されているのだが、王家の活動とは全く関係があるようには思えない活動に、フローリアが了承してくれるかが問題になる。

 そのことを分かっていて、考助はあえてニコリとほほ笑んだ。

「頑張ってね」

 その考助の一言を聞いたミアは、ガックリと項垂れるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 どうやって説得するかと頭を悩ませながら、ミアはフローリアに相談したが、あっさりと許可が出た。

「構わんぞ?」

「え? いいのですか?」

「ああ。ミアが城にいない間、ミカゲは暇を持て余していたようだったからな。丁度いいだろう?」

 そう言ったフローリアに礼を言おうとしたミアだったが、フローリアが右手でそれを止めた。

「ただし、管理層に行っている間の費用は、ミアが受け持つこと」

 ニンマリと笑ってそう言ったフローリアに、ミアは顔を青くした。

 

 そもそもミカゲは、サキュバスの中でもかなり腕がいい。

 以前に雇用費を聞いたことがあるが、かなりの金額が支払われていた。

 そんな金額を今のミアが個人で負担することなど不可能である。

 とはいえ、王家の費用から出すわけにはいかないというフローリアの言い分もよくわかる。

 どうしたものかと頭を悩ませるミアは、今度はピーチに相談してみた。

「ああ~。そのことでしたら、問題ありませんよ?」

「えっ?」

 あっさりとそう返して来たピーチに、ミアは首を傾げた。

「もともとミカゲは、私の一族から無償で出している人材です。ただ、王家はしっかりと金銭での管理をしないといけないので、それなりの金額が払われているようですね」

 ピーチの説明を聞いて、あっさりと問題が解決してしまった。

 最初に考助から話を聞いたときには半分以上諦めていたのだが、ちゃんと話を聞いてみるものだとミアは拍子抜けしてしまった。

 当然この辺りのことは、考助もフローリアも知っていたのだが、ミアがそれに気づくのはもう少し先の事だ。

 ともあれ、考助が提示した条件をクリアしたミアは、第十五層の管理をスタートするのであった。

というわけで、ミアが塔の管理を始めることになりました。

どんな内容になるかは次話で。


一方の考助は、やり込みしすぎてちょっと食傷気味になっている感じですw

とはいえ、ある程度の期間をあければ、また復活するでしょう。

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