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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
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(41)裏約束(?)

 ガゼランやシュミットと軽くガゼンランの塔について話をした考助は、エクから一枚の紙を渡された。

「・・・・・・これは?」

 その紙には、所属と名前が一覧で書かれていた。

 一覧の上に行くほど、セイチュンで立場上重要な位置にいる者の名になっている。

「クラウンの噂を流して以降、考助様に面会依頼をされた方々の一覧です」

 それを見た考助は、げんなりとした表情になった。

 書かれている名前はかなりの数になっているので、一々面会などしていられるはずもない。

 その考助の表情を見て、エクは笑いながら聞いてきた。

「一応答えは曖昧にしていますが、全て断りますか?」

 思わず「うん」と即答しそうになった考助だったが、すぐに思いとどまった。

 折角のこの状況なので、利用できることは利用しようと思ったのだ。

「取りあえず・・・・・・印をつけておくからその順番に呼んでおいて」

 エクには考助が何を考えてそう言ったのか分からなかったが、すぐに頷いた。

「畏まりました。手配しておきます」

「ああ、頼んだよ。それで、呼ぶ理由なんだけど・・・・・・」

 そういってその場で内容を話し始めた考助だったが、それを聞いた他の者たちは「なるほど」と大いに納得していた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 塔攻略ギルド代表のバルブロは、考助が返して来た返答に唖然とした表情になった。

 バルブロが<神狼の牙>にいるのは、セイチュンを駆け巡っている噂が本当の事であるかを確認するためだ。

 勿論、そんな簡単に返事が返ってくるとは思っておらず、何か情報の一端でもつかめればと考えて面会依頼を出していた。

 いつものようにのらりくらりと躱されるか、もしくは会ってもらったとしても曖昧に濁されると思っていたのである。

 どころが、だ。

 バルブロの前に座った考助は、あっさりとその答えを返して来た。

 セイチュンの街に流れている噂は間違いないことだ、と。

「そ、それでは、いずれはここはクラウンの支部になる、と?」

 バルブロと一緒に付いてきていたアルタが、先に我に返ってそう聞いた。

 その言葉に、バルブロもようやく我に返って考助の顔をじっと見てきた。

 そんなバルブロの視線に気づいていながらも、考助は特に気にした様子も見せることなく頷いた。

「そう思って頂いてよろしいですよ。というより、あと数日で正式に発表するとおもいますよ」

「なっ・・・・・・!?」

 そう驚きの声を上げたのは、もう一人付いてきていた幹部の一人だ。

 今回は大勢でいってもどうしようもないという事で、この三人できていた。

 ちなみに、<神狼の牙>が相対してソファーに座っているのも、考助を含めて丁度三人だ。

 考助を中心にして右側にエクが、左側にシュミットが座っている。

 

 半分腰を浮かしたその幹部は、驚いた表情のまま悲鳴のように言った。

「き、貴様はそれがどう言う意味か分かって言っているのか!?」

 それに対して考助は首を傾げるだけだった。

「どうとは、どう言う意味でしょう?」

 激昂したままさらに続けようとした幹部を、バルブロが右手を上げて止めた。

 冷静さを失っているその幹部を見て、バルブロ自身はお陰で冷静さを取り戻すことができた。

「クラウンがラゼクアマミヤの、百歩譲ってもセントラル大陸の意向で動いていることは、既に万人が知ることだ。そんな組織の介入を我々が許すとでも思っているのか?」

 真っ直ぐに自分をみてくるバルブロに、考助はフッと表情を緩めた。

「認めると思いますよ」

「な、何!?」

 そのあまりにも軽い返事に、逆にバルブロが呆気にとられた。

 以前の事で目の前にいる考助が、何の根拠もなくそうした態度をとるはずがないと思っている。

 だがらこそ、その根拠が分からずに思わず本気の表情が出てしまったのだ。

 

 そんなバルブロに対して、考助は笑顔になって続けた。

「既にミネイル商人ギルドの許可は頂いています。ついでに言うと、アネッサやバトルもです」

 次々に上げられた大物商人ギルドの名に、塔攻略ギルドの面々は顔色を変えた。

 今上げられた三つの商人ギルドは、それぞれセイチュンを取り囲む三つの国を代表する商人ギルドだ。

「ば、馬鹿な・・・・・・」

 幹部がそう言って呆然となったのを見ながら、バルブロも同じような気分になっていた。

 絶対にありえないと思っていた三つの商人ギルドの翻意に、訳が分からなくなってくる。

 そんなバルブロたちに、考助は懐からある物を取り出して、それをコトリとテーブルの上に置いた。

 

 意味が分からずに視線だけでそれが何かを聞いたバルブロに、考助はすぐに答えを返した。

「<アエリスの水>ですよ」

 その答えを聞いたバルブロの感想は、驚きではなく感嘆だった。

「もうそんな答えまで見つけたのか! い、いや。噂に聞くクラウンの力があれば分析も可能なのか」

 そんな事を言いながら、頭の隅では何故三商人ギルドが<神狼の牙>との取引に応じたかを理解した。

 <アエリスの水>は、三カ国にとっては大きな爆弾になり得る存在なのである。

 この短期間で、ただの水に見える<アエリスの水>を突き止めることが出来る組織力を持っているクラウンだ。

 当然、そのことは分かっているうえで取引したのだろう。

 バルブロはそのことに気が付くと同時に、ふと別の事に今更ながらに気が付いてしまった。

 なぜ、この場に自分達を呼んだのだろうかと。

 

 その疑問がわくと同時に答えも分かった。いや、分かってしまった。

 まさかという表情でバルブロが考助を見ると、ニコリと笑って言った。

「恐らく想像通りだと思いますよ?」

「ば、馬鹿な! それこそありえん!」

 今度こそ叫び声を上げてしまったバルブロに、幹部はキョトンとした表情になっている。

 アルタは流石に気が付いているのか、青い顔になっていた。

「そうですか」

 考助はそう言いながら、再び懐に手を入れて、今度はカードのような物を一枚取り出した。

 また何かを出して来た考助に警戒しながら、バルブロはそのカードを手に取って首を傾げた。

 だが、そのカードに表示されている文字を見て、考助が何を言いたいのか分かった。

 分かってしまった。

 もし想像が当たってしまうと、塔攻略ギルドの根幹を揺るがす事態になる。

 そんなバルブロの想いを余所に、考助が笑顔を浮かべた。

「ああ、流石に当事者ですね。商人ギルドの面々と違って気づくのも早い」

 その笑顔を見たバルブロが悪魔の笑みだと感じたのは、致し方のないことだろう。

 

 考助がバルブロの前に出したカードは、塔攻略ギルドで作成しているカードと全く同じ機能を持つカードだった。

 勿論、まだ未完成で量産することなど不可能な段階だ。

 だが、時間をかければいずれ同じような事が出来るようになるのはほぼ確実だった。

 ガゼンランの塔を攻略している最中にちまちまと作っているのが役にたったという事になる。

 いつだれが作ったのかを省いて説明した考助に、バルブロ以外の者たちの顔色が変わり、事態の重さをようやく理解していた。


 考助が取り出したカードが決め手となって、塔攻略ギルドもクラウン支部の設立に了解をすることになった。

 一応、口約束ではあるが、カードの開発はこれ以上進めないことが条件になっている。

 まさか塔攻略ギルド側も、そのカードが考助個人で作られた物であるとは思っていないのだ。

 もし、塔攻略ギルドが約束を破って、クラウン支部設置に反対に回ったとしても簡単に開発の再開が出来る。

 もっともクラウンがこの口約束によってカードの開発を止めるという事を、塔攻略ギルドも簡単に信じているわけもない。

 その辺りは、お互いに分かっていることだ。

 この話し合いにより塔攻略ギルドが反対の意思を示さないという事が約束されたことになり、クラウン支部の立ち上げはさらに加速することになるのであった。

本発表の前に着々と裏で取引していますよ、という話でした。

この話で、街の中で色々やるのはほぼ終わりになるかと思います。タブン。

次は本発表をして、本格的に攻略(というか、調査)に乗り出すという事になると思います。

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