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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
548/1358

(30)ランク4

 闘技場内は集まった観客たちの熱気で凄まじいことになっていた。

 それは比喩でもなんでもなく、ここ最近では珍しい大型の対戦にボルテージが最高潮に上がっているのだ。

 それもそのはずである。

 ここひと月で目覚ましい活躍を見せているコリーと、ランク第四位のジアーナの対戦がこれから行われるのだ。

 トップ5を相手にコリーがどのような戦闘を見せるのか、対戦カードが発表されてから今まで、闘技場ファンの間では白熱の議論がされていた。

 賭けのオッズもわずかにジアーナが上という結果になっていた。

 いわゆる「専門家」の話では、コリーの美貌と今までの勢いでそう言う結果になっているのではないか、という分析もされている。

 今までコリーが相手にしてきたのは、格下の相手ばかり。

 そのため、格上となるジアーナを相手に何処まで食い下がれるのかが問題だ、というのが一般的な評価になっていた。

 ただし、それはあくまでも一般的な話で、コリー(コウヒ)の本質を知っている者たちからすれば何を言っているんだという話になるのだが。

 もっとも、その本質を知る者達は、今回の対戦を盛り上げるためにもそうした話をわざわざ打ち明けることはしていない。

 勿論聞かれた場合は答えてはいるが、そうした場合も相手が揃って微妙な顔になるので、それ以上強くは言わないだけだ。

 

 今回使われる戦闘場所は、以前コウヒがヤーナやペトルと戦った場所と同じ所だ。

 セイチュンの中では、もっとも古くそして一番の広さを持つその会場は、他の場所とは違う特徴を持っている。

 闘技者同士の戦闘の余波が観客に及ばないように、ドーム状に結界が張られる機能がある。

 その結界の機能は、遥か過去から引き継がれてきた遺産で、中には神具の一種だと主張する学者もいたりするほどだった。

 それほどの機能があるために、トップ5のランカーたちも安心して全力で戦う事が出来るというわけだ。

 とはいえその機能は、ごく限られた場面でしか使用されない。

 それは例えば、今回のようにトップ5のランカー同士が戦うときなどだ。

 闘技場ギルドは、コリーの実力をトップ5に匹敵すると認めて、今回この機能を動作させたというわけである。

 

 そんな頑強さを誇る結界だが、闘技場を楽しませるうえで、もう一つの重要な機能があった。

 それは、観客席からの音が戦闘を行う場所にまで届かないというものだ。

 単に外の音を聞こえなくするために付けられていると考えられているが、闘技場を運営するうえで意外な効果をもたらしていた。

 観客席に聞こえるようにした解説が、闘技者に聞こえないというのがそれである。

 闘技場ギルドは、これを利用して大きな戦闘の時には解説を付けて観客を楽しませるという事を行っている。

 その解説が今回の戦闘で行われていた。

 コリーの戦闘では初めての事だ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

『さてさて皆さん、お待たせしました。今回の解説実況は、ホスエがやるぞー!!!!』

 魔道具で会場中にホスエの声が響くと、会場のテンションが一気に上がった。

 それは、解説が始まるともうすぐ戦闘が行われる合図になるからというのもあるが、ホスエが人気解説者の一人だからという理由でもある。

『相変わらずテンションの高い皆に会えて、私も嬉しいぞー!』

 ホスエの煽りに、会場がワーッと沸いている。

 そんなホスエに会場が最高潮に温まったときに、今回の戦闘を行う両者が会場に現れた。

『さあ、いよいよ今回の闘技者の両名が登場だ! 一人は言わずと知れた、トップ4のジアーナ! そして、もう一人が彗星のごとく現れたコリーだ!』

 両者の名前が呼ばれると、観客からそれぞれを応援する声が飛び交った。

 中には、というより大体が自分が賭けを行った闘技者を応援するものだったが、勿論中には贔屓にしている闘技者を応援する声もある。

 最近現れたばかりのコリーではあるが、既にファンを獲得しているようで、声援の数では負けてはいない。

『さて、そろそろ対戦が行われるわけですが、この話を伺った夜は、私は興奮で眠れませんでした! それくらい楽しみです。果たして最後に立っているのはどちらになるのか! どうやらジアーナが話しかけているようだが、一体どんな話をしているのか!』

 ホスエの実況に、興奮が収まらない観客の声が会場中に響いた。

 そんな状況で周囲が盛り上がる中、ついに戦闘が開始されるのであった。

 

 会場の中央まで歩を進めたコウヒとジアーナは、ある程度の距離があるところで止まった。

 コウヒはともかくとして、ジアーナは魔法を得意としているためある程度の距離が開いている方がいいのだ。

 コウヒもそのジアーナに付き合って止まったわけだ。

 これが近接同士の戦いだともっと近づいていたりする。

 その辺りは、完全に闘技者の感覚に任せられているため、どこまで近づかなければならないといったルールは、本来は無いのだ。

 

 開始の合図が来るのを待っていたジアーナが、突然コウヒに話しかけて来た。

「さて、いよいよ始まるわね。随分と待たせたのかしら?」

 ある程度の距離がある両者だったが、それほど声を張っているわけでもないのに、ジアーナの声はしっかりとコウヒに届いていた。

 魔法を使っているのだ。

 戦闘前に魔力を使っているのは、余裕の表れなのだろう。

 そんなジアーナに対して、コウヒは特に何も答えずにいつもの表情で淡々と相手を見ているだけだった。

「戦闘前には会話はしないという事かしら? まあ、どちらでもいいけれど」

 そんなことを言ってフフフと笑うジアーナは、余裕の表情だった。

 自分が負けるとは、欠片も考えていないのだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 余裕の表情でコウヒに話しかけるジアーナと、全く表情を変えないコウヒ。

 そんな二人の前哨戦は全く顧みることなく、戦いが始まった。

 まず先手を取ったのはコウヒだった。

 これまで闘技場内で行われてきた戦いと同じように、その驚異的なスピードで相手に迫って攻撃したのである。

 事前にジアーナの間合いで止まっていたのは、コウヒの作戦だ。

 その距離では同じ攻撃をしてこないと思わせるために、遠い間合いを取ったのだ。

 だが、一気にジアーナへと迫ったコウヒだったが、その攻撃は相手には届かなかった。

 あと二メートルほどで相手に迫ったところで、コウヒ自身が急ブレーキを掛けたのだ。

 

「あら。気づかれてしまったのね」

 楽しそうな表情でそう言ったのはジアーナだった。

 コウヒが先制を仕掛けてくることを予想していたジアーナは、しっかりと結界を張っていたのだ。

 そのままコウヒが突っ込めば、その結界に阻まれて激突していただろう。

「次は、こっちの番よ!」

 一瞬足止めしたコウヒを狙って、今度はジアーナが攻撃を仕掛けて来た。

 無詠唱の魔法攻撃だった。

 これを見たコウヒは、いつものように無手で魔法を弾かずに、その攻撃を避けるように後ろに下がった。

 今のままのコウヒであれば、ジアーナの魔法を弾けば、少なからずダメージを受けただろう。

 それを嫌って後退するしかなかったのである。

 

 その後もジアーナが絶え間なく魔法を繰り出して来た。

 一つ一つの魔法が、今まで相対して来たどの相手よりも遥かに強く、とてつもなく早かった。

 そしてこれが、ジアーナが「瞬速の魔導士」と呼ばれる所以でもあった。

 普通では考えられない程の速さで魔法を繰り出して、近接の武器を持つ者を寄せ付けない。

 魔法使いの戦いにおいての基本中の基本なのだが、それを極めたのがジアーナといえるだろう。

 そんなジアーナの攻撃に、防戦一方になったコウヒである。

 そしてついに、今回の戦闘においての最大の魔法攻撃がジアーナから繰り出される。


「爆炎灼風!!!!」

 

 爆炎を伴った灼熱の風がコウヒへと襲い掛かったのであった。

やっぱり一話では収まりませんでした。

次話は当然この続きとなります。

少々お待ちください。

次で終わるといいな。(ボソッ)

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