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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
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(24)今後

 考助がバイブロに言った素材は、全て神能刻印機で使われている素材である。

 神能刻印機と一口に言っても様々な部品があり用途で使われているのだが、その中でも神力に関する部分に必須なのである。

 その素材を何故並び立てたのかというと、塔攻略ギルドで使われているカードを作るための機械に使われていると考えたからだ。

 単に当てずっぽうで考えたわけではなく、既に考助は渡されているカードに神力が使われているのがわかっていた。

 流石に一目見ただけでは分からなかったが、何度か転移門を通って更新されていくのを確認しているうちに気付いた。

 カードの作成に神力が関わっていることもまた、この塔が一度攻略されたことがあるのではと考える要因の一つになっている。

 神能刻印機と同じ素材が使われているかどうかは分からなかったのだが、バイブロやアルタの反応を見る限りではビンゴだったようだと考助は内心で胸を撫で下ろしていた。

 ちなみに、他では代替のきかない素材だけを言ってある。

 神能刻印機は何度も更新しているのだが、その素材だけはどうしても他では代用が出来ない物だ。

 

 半分は賭けで言ったのだが、表面上は何気ない風を装っていた。

 そんな考助を見て、バイブロがうろん気な様子で見て来た。

 ただの一ギルドの冒険者だと思っていた相手から、ギルドに代々伝わる秘密を暴露されるとは考えてもいなかったのだ。

 そういう態度になるのも当然だろう。

「・・・・・・お前さん、何者だ?」

 そう言って睨んできたバイブロに、考助は肩を竦めて答えた。

「ただのギルドの一冒険者ですよ。先ほどまではそう思っていたのでは?」

 あっさりとそう答えた考助をみて、バイブロがわざとらしく大きくため息を吐いた。

「そう思えないから聞いたのだが?」

「ではお伺いしますが、あなたは何者ですか?」

「俺か? 俺は塔攻略ギルドの代表、バイブロだ」

「でしたら私の答えも同じです。私は<神狼の牙>のギルド員コウです」

「そうか・・・・・・」

 涼しい顔をしてそう言った考助を見て、バイブロはこれ以上聞いても何も答えないと察した。

 塔攻略ギルドの代表としての立場を利用しようとしても、目の前の相手には通じないことは今までのやり取りで分かっている。

「藪をつついて蛇を出した、か」

 ポツリとそう呟いたバイブロの言葉を、考助は聞こえなかったふりをするのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 バイブロたちがギルドから立ち去って行くのを見送ったエクは、考助に頭を下げた。

「お手を煩わせて申し訳ありませんでした」

「いやいや。気にしなくていいよ。どうせあれは、最初からいちゃもん付けるつもりで来てたみたいだしね」

 考助は気にしていないとばかりに、右手をひらひら振りながら答えた。

 エク一人に任せても対処は出来ただろうが、考助が表に出たほうが早そうだったので出ただけだ。

 塔攻略ギルドの最終的な目的は分からないが、最初に威圧して色々と押し付けてこようとしていたことは間違いがない。

 他の新興ギルドにもそうしているのか、あるいは考助たちの塔の攻略具合を見て唾を付けようとしていたのかは分からないのだが。

「これで少なくとも塔攻略ギルドは、しばらく何も言ってくることは無いんじゃないかな?」

 出来ればそうあってほしいという希望的観測を込めて、考助はそう言った。

 もっとも、バイブロやアルタはともかく、他の幹部らしき者達が今後どういう対応を取ってくるかは分からない。

 先程の態度を見る限りでは、色々と言ってきそうな雰囲気はあったが、それはバイブロの対応に期待するしかない。

 考助が言葉に出したことと矛盾しているが、組織の一員の動向まで釘を刺していくのは煩わしい。

 

 考助の答えを聞いたエクが、ため息を吐いていた。

「今後も似たようなことがあるのでしょうね」

 塔攻略ギルドのような大きな組織からの要求はそう頻繁に無いにしても、小粒なギルドからのいちゃもんやおかしな要求は今後増えてきそうだ。

「そうだろうね。まあ、それもコウヒが頑張ってくれたらなくなるんじゃないかな?」

 コウヒが闘技場で活躍すれば、少なくとも力で変な要求をしてくるところは無くなるだろう。

 それが無くなれば、後は組織(政治)の力でごり押しをしてくる所があるかどうかだ。

「あとは、冒険者ギルドくらいでしょうか」

 セイチュンで大きな力を持っているのは、塔攻略ギルドと冒険者ギルドだ。

 片方は今回考助が抑え込んだので、後はエクの言う通り冒険者ギルドという事になる。

「まあ、その辺はサキュバスからの情報待ちかな? そのためにも連れて来たんだし」

 考助も今は周囲に近しい関係者しかいないために、色々なことを隠すことなく話している。

「そうですね」

「後は、そろそろ重要依頼とかをこなして行こうかな?」

 冒険者ギルドが出している依頼で、塔の上の階層の素材を採ってくる依頼が出ていたりする場合がある。

 そうした依頼をこなして行けばいくほど、冒険者ギルドに対しても牽制が効くことになるのだ。

 ついでに、そうした案件を順調にこなすと、セイチュンに出入りしている大手の商人ギルドも目を付けてくる。

 そうしたことを繰り返して、セイチュンにおける発言権を大きくしていくのだ。

 

「畏まりました。彼らもそろそろこなれてきているので、問題ないかと思います」

「そうか。そういえば、セシルとアリサが適正な階層に連れていくのはどうなったの?」

「問題ないです。第一層から進まなくて済むと喜んでいました」

「それはよかった。これに関しては、今はいいけれど、クラウンに変わったらきちんとルールを設けないといけないね」

 今は、ほとんど身内の状態なので、それぞれの実力を把握できるため適正な階層への登録が出来ている。

 だが、登録している冒険者の数が多いクラウンになると、組織として一々個々のパーティの実力を正確に把握することなど不可能だ。

 単純にクラウンカードのランクで把握できればいいのだが、大陸間でランクに差があると分かっている今、それだけで決めるのも危険である。

「そうですね。ですが、考助様はそこまで関わるのですか?」

 今までの経験上、考助がクラウンの運営に深く関わることはほとんどないと分かっているエクが、首を傾げながら聞いてきた。

「う~ん。微妙な所だよね。どのタイミングでクラウンに移行するかも関係するだろうし。その時の流れで」

 何とも大雑把な考助の返答に、その場にいた全員が小さく笑った。

 クラウンという大きな組織を作った考助らしい言葉だった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 塔攻略ギルドの建物に戻ったバイブロは、一緒に同行していた幹部たちから責められていた。

 一同が言っているのは「なぜあっさり引いてきたのですか?」という言葉だった。

 本来、彼らが<神狼の牙>へ行ったのは、塔の攻略をあっさりと進めた秘密を探るためだ。

 確かに、考助たちが使っている馬車も性能が良いことは分かる。

 パーティの戦力が高いというのも攻略を進めるうえで重要なのもだ。

 だが、だからと言って、モンスターとの遭遇が良く起こる塔内で、そうそう簡単に馬車を進められるはずがないのだ。

 故に、この場に集まっている全員が他に何か理由があると思い込んでいるのである。

 

 そうした彼らの言葉をバイブロは手を上げて止めた。

「いいか。これ以上<神狼の牙>への塔攻略ギルドとしての干渉はしない。これは代表としての決定だ」

「代表!」

 悲鳴を上げるように言った幹部の一人に、バイブロは首を振った。

「この決定はお前らが何を言おうと覆らない。いいか、くれぐれも余計な真似をするなよ」

 バイブロがそう念を押すと、幹部たちは渋々といった表情で引き下がって行った。

 それを見たバイブロとアルタは、大きくため息を吐いた。

「・・・・・・どう思う?」

 そう聞いてきたバイブロに、アルタが少し考えてから言った。

「微妙な所でしょうね。流石にすぐに暴走したりはしないでしょうが・・・・・・」

「何とも面倒なことになったな」

 そんな会話をしたバイブロとアルタは、今後の事を考えると頭が痛くなってくるのであった。

<神狼の牙>の今後と塔攻略ギルドの今後をかけてこんなタイトルにしてみました。

説明を省きに省いていますが、塔攻略ギルドで使っているカードを作るための道具は一品物で考助の予想通り神力を使っています。

ただし、バイブロもアルタはそこまでは知りません。

代々交換が必要な材料として伝わってきているだけです。

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