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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
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(21)うずまき

 闘技場でコウヒの勝利を確認した考助は、次の日にはガゼンランの塔の攻略へと向かった。

 現在ショートカットで飛べるのは第四十五層なので、そこからの攻略再開となる。

 ただし、今回の攻略では第五十層は目指さない。

 この辺りから各階層の調査を本格化させるのと、何日か後にピーチが数名サキュバスを連れてくることになっているからだ。

 サキュバスが来れば、<神狼の牙>に関する噂もより正確に手に入れることが出来るようになる。

 <神狼の牙>がどの程度セイチュンで影響力を持っているのか、それを知るためには情報が非常に重要になるのだ。

 既にコウヒのおかげで確実に知名度は上がっているが、コウヒ一人の活躍だけでは駄目なのである。

 勿論ギルドの中には、一人のカリスマが率いて名を上げているところも数多くある。

 だが、のちのちクラウンの支部に変わることを考えれば、それでは駄目なのだ。

 そのために、わざわざクラウンからロマン達を集めたのである。

 

 そんな予定を立てていた考助は、第四十六層をくまなく調査していた。

 今までは転移門を目指してほぼ真っ直ぐに進んでいたが、今回からは何か違和感のあるようなものも確認している。

 それが具体的に何かと言われれば、考助も答えられないのだが、もし予想通りガゼンランの塔が既になにがしかの存在によって管理されたことがあれば、何かしらの痕跡は残っているはずである。

 そうした痕跡が無いかをしらみつぶしに見て行こうというわけだ。

「・・・・・・と、計画を立てたのはいいけれど・・・・・・暇だなあ」

 考助が馬車の中から外の様子を見ながらそう呟いた。

 第四十六層ともなると、モンスター達の警戒レベルが上がるらしく、ナナが乗っている馬車に容易に近づいて来るのはほとんどいないのだ。

 勿論、全てのモンスターがそうというわけではないので、ある程度の警戒は必要なのだが、そういうモンスターはほとんどナナが返り討ちにしている。

 そんな考助の様子を見て、リリカがクスリと笑った。

「普通はこんなにのんびりとは出来ないはずなのですがね」

「いやまあ、そうなんだろうけれどね。もう慣れてしまったからなあ」

 そんな答えを返した考助は、ひょいと手を伸ばして寝そべっていたナナを撫で始めた。

 寝ているように見えていてもしっかり警戒はしていたのか、考助に撫でられたナナは、盛んに尻尾を振り始める。

 いつまで経ってもナナは、考助に撫でられるのが好きなのだ。

 

「もしモンスターと戦いたいのであれば、何か適当なのを見繕って来るわよ?」

 考助としては、何気なく会話をしていたつもりだったのだが、その声をしっかりと拾っていたらしく、現在御者をしているミツキがそんなことを言って来た。

「それはそれで面倒なんだよなあ。なんかいい素材でもあればいいんだけれど」

「わがままねえ」

「面目ない」

 ミツキの呆れたような声に、考助は肩を竦めながら答えた。

 どちらも話のタネにしているだけで、本気で言っているわけではないのだ。

 もっとも、考助が本気で望めば、ミツキは間違いなく適当なモンスターを見つけてくるだろう。

 

 そんな会話をしながら、考助たちを乗せた馬車は第四十六層の端と思われる場所まで来た。

 塔の階層は、端っこがどこであるかの明確な区別はない。

 進んでいくと気付いたら元の場所に戻されているので、恐らくこの辺りだろう、というのが端っこに当たるのだ。

 念のためある程度の間隔で目印を置いて先に進んでいたので、一度戻されているのは間違いない。

 一度でも端っこがわかれば、その塔における階層の広さがわかるので、後はそれを目安にすればいいだけである。

 これは考助が攻略した塔を基準にした考え方なので、もし他の大陸にある塔が全く別の法則で成り立っていれば、この基準は全く役に立たなくなる。

 一応今までも、それらの基準を元に攻略してきているので、大きく外れているという事は無いと考えていた。

 端に着いたあとは、そこからぐるりと中心に向かって渦を巻くようになにかが無いかを確認していく予定だった。

 何とも地味な方法だが、確実に見つけようと思えばこれが一番な方法なのである。

 明確に何かを探す、ということがわかっていれば他にやりようがあるのだが、今はあるのかないのかも分からない状態なので仕方がない。

 場合によっては馬車が通れないような所もあるだろうが、その場合は馬車から降りて先の調査を行うつもりだ。

 いくらミツキがチートで、考助が現人神だろうと、こういった調査は地道な努力(?)が必要なのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 第四十六層の調査に一週間以上の時間がかかることを覚悟している考助だったが、幸いにしてその前に呼び出しがかかった。

 それはピーチからの神力念話で、サキュバスの準備が整ったという連絡だ。

 一旦第四十六層の調査を切り上げて、考助たちは塔の入口へ転移した。

 そのままいつものように入口を通り抜けてギルドへと向かおうとした考助たちだったが、女性の声に呼び止められた。

「あ、コウ様! お久しぶりです」

 塔攻略ギルドの受付嬢が、そう言いながら近寄って来た。

 その笑顔には何の裏もありそうには見えなかったが、タイミング的には絶妙とも言えるだろう。

 何しろ、現在の闘技場では同じギルドのコウヒが、話題をかっさらっているのだ。

 もともと注目していた新人達のギルドが、別の分野でも活躍をし始めれば自分たちの所ではどうだろうと考えるのは当然だろう。

 受付嬢には何もなくとも、その裏にいる上層部がそう言ったことを考えていても何の不思議もないのである。

 

 そう言ったことをきちんと想定しながら、考助は返事をした。

「お久しぶりです」

「ここしばらく見なかったですが、ずっと攻略されていたのでしょうか?」

「え? いや、いくらなんでもそれは無いですよ。何度か戻っています。タイミングじゃないでしょうか」

 考助としても、別に意識して避けていたわけではないので、特に隠すことなく本当のことを伝えた。

「そうでしたか。それで、攻略はいかがですか? 順調に進んでいますか?」

 受付嬢も特に気にした様子も見せずに、次の問いかけをしてきた。

 その様子を見ている限りでは、第一印象と変わらずに何か裏があって確認しているようには見えなかった。

 純粋に、攻略状況を知りたいという感じだ。

「ええ。特に大きな問題もなく進めていますよ」

「ちなみに、どの階層まで行かれました?」

 流石に今度は、恐る恐るといった様子で聞いてきた。

 ギルドにとっては、塔の攻略状況は組織としての収入にも関わってくるので、伏せている所も少なくないのである。

 考助の場合は、別の意味で隠しておこうかと考えたが、素直に教えることにした。

 どちらにせよ、カードの更新の際にはばれることになる。

 それであるなら、今のうちに話したほうがいいと考えたのである。

 

「今は第四十六層ですね」

 そう答えた考助に対して、受付嬢の笑顔が固まった。

「えーと、大丈夫ですか?」

 その考助の言葉に、受付嬢がハッとしたような表情になった。

 いつもの営業スマイルが、ぎこちなくなっている。

「よ、よよ、四十六ですか。それはまた、頑張っていますね」

「ええ、そろそろペースも落ちると思いますので、あとはのんびりやって行こうと思いますよ」

「は、はは。そうですよね。それでは、頑張ってください」

 受付嬢がぎこちない笑顔のまま片手をふって来たので、考助もそれに答えながら馬車を走らせるのであった。

何となくこのタイトルしか思い浮かびませんでしたw

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