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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
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(13)調査

 アリサ達三人を加えた考助達一行は、早速第四十一層に向かった。

 その後第四十二層を目指すまでは、これまでと変わらない。

 転移門までのルートと周辺の魔物の調査である。

 アリサ達がいることで、第四十一層までとは違った視点での調査が増えたのは嬉しい誤算だった。

 少なくとも、考助達の視点だけのものよりは、より現実的なものが出来ていた。

 チート二人の戦闘能力が基準になってしまっている考助の視点では、どうしても足りない所が出るのだ。

 そんなことをしながら、考助達は第四十二層へと向かう転移門に到着した。

 まずは、アリサ達三人のカードの到達階層が表示されるかどうかだ。

 ちなみに、第四十一層に到着した際は初期の状態、すなわち第一層が表示されているだけだった。

 これが、第四十二層に行ったときに、カード上に反映されるかどうかを確認するのである。

 

 結論から言えば、第四十二層に向かう転移門を通ったあとで、カードの到達階数は更新された。

 これで一層分上がる上層への転移門を通った時点でカードの更新がされることが確認できた。

 次に確認するとすれば、今の第四十二層が表示されているカードで、第四十五層から第四十六層に通った場合にどうなるかだろう。

 単純に塔内で通った転移門のときだけにカードが更新されているのであれば、第四十六層に更新されるはずである。

 ただし、五層ごとにショートカットされる場合は別である。

 それに関しては、すでにカードの更新はされないと確認できている。

 

「これで、いったんセシルとアリサについて来てもらってする確認は終りかな?」

 セシルとアリサのカードを確認した考助がそう言った。

「わかりました。では、次に確認するのは第四十五層の時ですか」

 そう考助に確認を取ったのは、セシルである。

「そうだね。二人には少し待ってもらって第四十三層以上は攻略しないようにしてもらえるかな?」

「かしこまりました。コウスケ様達が攻略するまでは、下層の調査をしようと思います」

「ああ、そうだね。それでもいいかも。まあ、第四十五層に到達するのもそんなに待たせないと思うけれどね」

 考助の言葉に、ミツキを除いた三人が苦笑した。

 ここでそんなことをあっさりと言う考助の感覚は、やはりずれているところがある。

 通常の塔の攻略というのは、一層ごとに一週間以上を費やして行うのだ。

 勿論、攻略者のレベルに合わせて、下層をさっくり終わらせることもあるが、考助の場合はどの階層でもこれが通常運転である。

 今いる階層が、中層から上層にかけてなのだが、そもそもこんな速さでこの階層を突破する冒険者は皆無である。

 一応考助も一般のレベルに合わせて攻略しているのだが、あくまでも「つもり」なのである。

 そうは言ってもギルドという大義名分を手に入れた今となっては、その自重も置き去りになる可能性が高いのだが。

 ただし、それもこれも他の者達の働き次第である。

 一つの突出したパーティだけが存在するギルドは注目はされるが、大きな影響力を持つという意味ではさほど効果が高いとは言えないのだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助達と別れたセシルとアリサは、二人だけで第四十層に戻った。

 そこから入口まで転移をして、いったんギルドの様子を見るためである。

 二人の実力であれば、第四十層に戻るだけなら問題はないのだ。

 とはいえ、移動手段が徒歩なので、三日ほど時間がかかってしまった。

 考助達の攻略速度に比べて早いように感じるが、実質一層分の行程しかないので、驚くほど速いというほどでもない。

 セシルとアリサが転移門で第一層についたときには、塔攻略ギルドには寄らなかったので、登録したばかりの二人がすでに第四十一層を攻略したことになっていることはまだ気づかれていない。

 二人もあえて今の時点で喧伝するつもりはないので、何も言わずに自ギルドへと戻ったのであった。

 

 「神狼の牙」ギルドへと戻ったセシルとアリサは、ちょうどロマン達と顔を合わせることになった。

 いくら大きな建物とはいえ同じ建物内で生活している以上、遠征などに出ない限りはこうして頻繁に顔を合わせることになるだろう。

 同じようにアリサのことを見つけたロマンが、少しばかり表情を引き締めてアリサのそばへと近づいてきた。

 その表情を見て、アリサはロマンが何かを聞きたいのだと察した。

 訓練生だった時に何度も見たことのある表情だったのだ。

 ついでに、このタイミングで何のことを聞きたいのか、ある程度察しをつけることもできる。

 というより、考助達のことしかないだろう。

 そんなことを考えていたアリサに、近づいてきたロマンが口を開いた。

「アリサ先生、あのコウという人はどういう冒険者なのですか?」

 歓迎会の時に考助は、「コウ」の名前で自己紹介をしていた。

 ロマンの問いかけに、アリサは少しだけ考えて答えた。

「冒険者を続けるには、相手の実力を見抜ける目を養いなさいと教えたはずよね?」

 相手が人であっても魔物であっても、向かってきた相手の実力を一目で見抜けなければ、それが即死につながる。

 そのため、相手の実力を見抜ける力をつけなさいと、養成校では口を酸っぱくする程に教えていた。

 勿論、そんなことは簡単にできることではない。

 ただ、ロマンはその教えを忠実に守ろうとしてきた教え子の一人だった。

 

 ロマンは、一瞬だけ悔しそうな表情をしたのち、ため息を吐いた。

「・・・・・・申し訳ありません。俺では、大した実力があるようには見えませんでした。・・・・・・ただ」

「何?」

 一度言いよどんだロマンに、アリサは先を続けるように促す。

「アリサ先生や他の方の対応を見ている限りでは、相当な力があるんですよね?」

 ロマンのその返答に、アリサは心の中で「合格」と考えた。

 何も相手の実力を見抜く方法は、自分だけの力に頼る必要はないのだ。

 特に冒険者になりたての時など、相手の力を見抜くことなどできるはずがない。

 なぜなら、まず間違いなく相手の方が格上だからだ。

 そういったときは、今ロマンが答えたように、周りにいる実力者の対応を見て自分の行動を決めるのも大切なことなのだ。

 そういった意味でのアリサの「合格」なのである。

 ただし、アリサはそれが正しい答えだとはあえて教えなかった。

 それは、追々自分自身で気づいていくことだと考えているからだ。

 

 そんなことを考えながらロマンをジッと見たアリサは、欲しがっている答えを敢えて言わずに少しだけ逸れた事を言った。

「どうかしらね? ただ、コウ様の事は、ガゼラン部門長をはじめとした三人の部門長も注目しているわよ」

 敢えて部門長たちの名前を出すことで、余計なちょっかいを出さないように釘を刺しておいた。

 別にロマン達が馬鹿な真似をすると考えての事ではない。

 ロマン達の口から噂として広まることを期待しての事だ。

 案の定、ロマンの顔が驚いた様子になっていた。

「部門長まで・・・・・・」

 その後しばらくして、何をどう考えたのかロマンの表情はどこかさっぱりした表情になった。

「分かりました。答えていただきありがとうございます」

「いいのよ。この程度だったらいつでも教えるわよ」

「冒険者の基本は情報収集、ですからね」

 養成校での基本中の基本を復唱したロマンに、アリサも笑顔になった。

「ええ。その通りよ。とにかく、今はセイチュンでの活動をお互いに頑張りましょう」

「はい。ありがとうございました」

 アリサの言葉に、ロマンは頭を下げたあとで仲間たちの元に戻って行くのであった。

ロマン達の考助に対する疑問でした。

勿論、アリサが本当の答えを返すはずがありません。

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