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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
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(6)加速

 塔攻略ギルドで証明書を発行してもらった考助達は、その足で今度は公的ギルドへと向かった。

 セイチュンでギルドを作るための条件が揃ったので、手続きをするのだ。

 わざわざ証明書を発行するくらいなら他の街に行ってギルドを作るという方法もなくはないのだが、そうしたとしてもセイチュン内では未公認ギルドとなってしまうのである。

 証明書を発行してもらった考助達は、大手を振ってセイチュンでギルドを作れるという事になったわけだった。

 

 相変わらずコウヒとミツキが冒険者たちの視線を集めまくって歩を進める中、考助は公的ギルドのカウンターへとやって来た。

 考助達がギルドに入ったのは、比較的人が少ない時間帯だった。

 そのため、カウンターには並ばずにすぐに受付嬢と話をすることが出来た。

「どういったご用件でしょうか?」

 近づいてくる考助に気付いた赤髪の受付嬢は、ニコリと笑ってそう言った。

 見事なまでの営業スマイルである。

「ギルド作成の申請をお願いします」

「はい?」

 だが、考助がそう言うと、見事に受付嬢の笑顔が凍り付いた。

 それを見た考助はデジャヴを感じたわけだが、それもそのはずである。

 つい数時間前にも塔攻略ギルドで、同じ光景を見ていた。

 受付嬢に付き合っていてもいいのだが、流石に二度目なのでそのリアクションに飽きが来ていた考助は、さっさと話を進めることにした。

「ギルド作成の条件を満たしたので、申請をお願いします。こちらが証明書になります」

 考助が証明書を出すと、受付嬢は張り付いた笑顔のままその証明書に視線を落とした。

「・・・・・・まちがいない、本物・・・・・・でも、確か、この人達は・・・・・・」

 そして、何やら一人でぶつぶつと呟き始めた。

 お客(?)を前にして、かなり失礼な態度ではあるのだが、塔攻略ギルドでの反応を考えれば納得できるので、考助も敢えて放置することにしてみた。

 特に急ぎの用事があるわけではないからこその対応である。

 

 結局、塔攻略ギルドと同じ流れになった。

 少し違っていたとすれば、受付嬢が復活した時の騒ぎで他の冒険者達の注目を浴びてしまったという事だろう。

 だが、今回に限って言えば、これはこれでいいと考助は考えている。

 ギルドを作るとなれば、最初のうちは考助たち三人で活動していればいいのだが、その後はどうしても名声と言うのは必要となってくる。

 それならば、多少変則的であっても最初から注目を浴びた方が良いという判断だ。

 もっとも、塔の攻略を早く進めたという名声は、新しくできるギルドにとっては良い名の知られかたになるのだ。

 そんな考助の思惑はともかくとして、公的ギルドでも塔攻略ギルドと同じようなやり取りがあった。

 ただしこちらは、ギルド幹部にお呼ばれするのは丁重に断った。

 塔をどう攻略したのかの知識を蓄積していくのは、公的ギルドではなくその名の通り塔攻略ギルドの役目だからだ。

 受付で同じような質問をされたのだが、塔攻略ギルドに聞いてください、という答えで済ませてしまった。

 そもそも考助達が公的ギルドに来たのは、私的ギルドを作るための申請のためだ。

 塔の攻略情報は関係ないのである。

 そんなことを言って、話を突っぱねながらようやくギルド作成が認められた。

 手続きした翌日から正式な活動スタートという事になる。

 手続きの際に付けたギルド名は、考助の横にいたナナから取って「神狼の牙」と名付けた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助達が出て行ったギルドでは、先ほど考助達を担当した受付嬢が上司にお呼ばれされていた。

 当然考助達の情報を詳しく少しでも知ろうとするためだ。

「彼らは何者だ?」

 ギルド幹部の一人にそう言われた受付嬢は、首を左右に振った。

「ギルドカード更新も私が担当しましたが、特に変わったことはありませんでした。Cランク冒険者で少し高いかなとは思いましたが、それは部長もご存知かと」

「ふむ」

 確かに受付嬢の言う通りだったので、部長と呼ばれた男は頷いた。

「この町に着いて半月ばかりで第二十一層を突破、か」

 今までも前例が無かったわけではないが、その何れもその後セイチュンに大きな影響を及ぼす結果となっている。

 今回も似たようなことが起こる可能性があるのだ。

 組織を統率する幹部の一人としては、無視できるような状態ではない。

「詳しい話を握っているのが、塔攻略ギルドの連中とはな・・・・・・」

 はっきり言えば、セイチュンの街の公的ギルドと塔攻略ギルドの仲は悪い。

 理由の一つは似たような業務を担っているためなのだが、それだけではなく、塔の利益を独占すべきではないと昔から公的ギルドが主張してきたためだ。

 いままでその主張が通ったためしはないのだが。

「さてさて、どうしたもんだか。取りあえず上に話は通しておくとして、あいつらが今後どう関わってくるか、だな」

 部長がそう呟くのを受付嬢は、そろそろ業務に戻らせてもらえないかなあ、と思いながら聞いているのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 公的ギルドを出た考助達は、適当な食事処に入って食事をとりながら今後の話をしていた。

「それで、この後はどうされるのですか?」

「うん。まあ、無難な所でギルドの拠点を作る場所を確保しないとね」

 当然と言えば当然の考助の回答に、コウヒとミツキが頷いた。

「それはそうでしょうけれど、場所はどうするの?」

「それなんだけれどね。最初は街の中心部とかに作ろうかとも考えていたんだけれど、郊外とかでもいいかなと思い直した」

「郊外?」

 首を傾げたミツキに対して、コウヒがあっさりと考助の考えを見抜いた。

「塔の麓ですね」

「ああ、なるほど」

 コウヒの答えに、考助が頷き、ミツキも納得した声を上げた。

 そもそも塔の麓には、塔攻略ギルドの建物がある。

 向かい合わせた場所に、もう一つや二つ建物が増えたところで問題ないはずだ。

「まあ、詳細はワーヒド達とも話し合わなければ駄目だろうけれどね」

 考助達には、クラウンの建物を作る場所やノウハウがあるわけではない。

 ある程度この先も考助達が残って活動することになるとはいえ、素人が適当に手を出して良い分野ではない。

 後々の事を考えると、最初から相談して作ったほうがいいのである。

 

 その後は、セイチュンの街を拠点を作る場所の下見と称してぶらついていた。

 ただし、その場で拠点用の土地を買ったりするようなことはしていない。

 あくまでも町を見回っただけである。

 もしこの時の考助達の行動を観察している者がいたとすれば、ただの観光客に見えただろう。

 充分にセイチュンの街を楽しんだ考助達は、特に何をするでもなく宿へと戻るのであった。

 

 宿へと戻った考助は、すぐにクラウン本部へと連絡を取った。

 前回はガゼランへと連絡したのだが、今回はワーヒドに連絡をした。

 これには、先ほど考助が考えたことが影響している。

 土地選びなどしたことが無い考助よりも、他の専門家に任せた方が良いと思ったからだ。

 そうしたことを考助がワーヒドに話すと、一言。

「分かりました。では、そちらに参ります」

 といって通信を切ってしまった。

 切れた通信に唖然としている考助を置き去りにして、あれよあれよと言う間に事態が進行していった。

 突然泊まっている部屋の一部が光ったかと思うと、その後には二人の人物が残されていた。

 その人物とは、クラウン統括のワーヒドと副統括のエクだった。

 考助は、塔攻略ギルドと公的ギルドで騒ぎを起こした時点で穏やかに進行させるのは諦めていた。

 だが、どうやらそれ以上の事になりそうだと、二人が現れた時点で観念する考助なのであった。

はい。

ギルド幹部の心配をよそに、しっかりとその心配を回収する考助でした。

考助自身はのんびりとことを進めたいと考えていたようですが、そうはさせませんw

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