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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第3章 ガゼンランの塔
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(2)私的ギルド

 冒険者で賑わうセイチュンの街だが、この町で商人ではなく冒険者が力を持っているのにはわけがある。

 単純な力と言う意味でもそうなのだが、この町では商品の需要に対して供給が追い付いていないのだ。

 早い話が、公的ギルドに依頼を出しても、冒険者の数が足りずに受理されないこと自体が多いのである。

 勿論、それはガゼンランの塔で手に入る素材の内、ある程度の階層以上のものに限った事ではある。

 といっても、ある程度の階層と言うのは、初級クラスを抜けてようやく中級クラスに入れるかどうかと言ったところになる。

 ガゼンランの塔での実力の分け方は、独特のものが用いられている。

 第一層から第五層までが、駆け出し冒険者。

 第六層から第二十層までが初級クラスとされている。

 第二十一層から第四十層までが中級クラスになっていて、その辺りで取れる素材が最も多く依頼がされている。

 第四十一層から上が上級クラスになるのだが、そこまで行くと公的ギルドに依頼が出ることはまずない。

 大抵は、第四十一層を越えて活動が出来る冒険者が所属しているギルドに、直接依頼がされることになるのだ。

 それだけではなく、中級クラスで取れる素材も大手の商人ギルドになると得意先のギルドがあり、そこに依頼をすることになる。

 そうなると当然発生するのが、商人ギルド同士の冒険者ギルドの奪い合いだ。

 冒険者ギルドの数が多ければ、今のように冒険者ギルドの立場が強くなることは無い。

 だが、現状は冒険者ギルドの数が足りていないために、どうしても冒険者ギルドの立場がセイチュンの街では上に来るということになる。

 それだけではなく、歴史的に冒険者の立場が上だったという事実もあるのだが。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 考助達がセイチュンの街に着いた翌日。

 その日は朝から公的ギルドを訪れてギルドカードの更新作業を行った。

 この場合のギルドカードは、クラウンカードではなく西大陸内で使えるギルドカードの事だ。

 そもそもクラウンがないこの大陸において、クラウンカードは使えないのだ。

 そんなわけで、朝からカードの更新作業を行っていたのだが、当然ながらコウヒとミツキの二人は施設内にいた冒険者たちの視線を引きつけていた。

 一部、同性の嫉妬めいた視線もあったのだが、考助は気づいていなかった。

 そんなことはともかくとして、カードの更新を待つ際に受付嬢からセイチュンにおける私的ギルドの立場を教わった。

 待つ間に何もしていないと、他の冒険者に絡まれるとでも考えたのだろう。

 受付嬢にしてみれば、コウヒやミツキと言う冒険者達から見れば極上の女を連れている考助は、餌にしか見えない。

 例えギルドランクがCランクだったとしても、数には敵わないと考えたのだ。

 

 そうした受付嬢の思いも感じながら、考助は更新が終わったカードを受け取って礼を言った。

「色々教えてくれて、ありがとう」

「いえ。業務のうちですから。今日は依頼は受けられないのですか?」

「ええ。昨日着いたばかりなんで、一日ぶらついてますよ」

 のんびりとした口調でそう言った考助に、受付嬢は笑顔を向けた。

「そうですか」

 これで話は終わりと踵を返そうとした考助だったが、ふと思い出したような表情になった。

「そう言えば、美味しい屋台とか知りませんか?」

「屋台、ですか?」

「ええ。折角食が集まるセイチュンに来ましたからね。色々と食べ回ろうかと思っていまして」

 おどけてそう言った考助に、受付嬢は笑って答えてくれた。

「それでしたら、あそこの角に出ている屋台が良いですよ」

 そんなことを受付嬢に教えてもらったあと、考助達は公的ギルドを後にするのであった。

 

「この後どうされるのですか?」

 受付嬢に教えてもらったイルボア肉の串焼きを口にしながら、コウヒが聞いてきた。

 カードの更新作業をすることは話していたが、その後の事は何も話していないのだ。

「うーん。特に予定はないんだよね。武器・防具屋とか魔道具屋を見て回ろうかなと思っていたけれど」

「さっきのお姉さんには、依頼は受けないと言っていたけれど、本当に何もしないの?」

 いつの間にか串焼きを完食したミツキが、首を傾げながら聞いてきた。

 少しぐらいなら塔を覗いてもいいんじゃないか、と言外に言っている。

「うーん。まあ、別に塔に行ってもいいんだけどね。なんか敢えて急いでいく必要もないかなと。別に塔が逃げるわけでもないし」

 考助のちょっとした冗談に、コウヒとミツキがほんの少しだけ笑った。

「そうですね」

「確かにそうね。最初の時みたいに、焦る必要はないわね」

 ミツキがそう言うと、三人そろってアマミヤの塔を攻略した時のことを思い出した。

 あの時は、早く拠点になる場所が欲しいという思いもあって、急き立てられるように塔の攻略を行っていた。

 今回は、そもそも完全攻略するつもりは今のところないので、のんびりやって行けばいいと考えている。

 

 串焼きの串をどこに捨てようかときょろきょろと見回す考助から、コウヒが肉のなくなった串を奪ってそのままアイテムボックスへとしまう。

 それを横目で見ながら考助が、それに、と続けた。

「さっきの話を聞いて、冒険者ギルドでも作ってみようかと思ったんだけど、どう?」

 考助の突然の提案だったが、いつもの事なので慣れているコウヒとミツキがすぐに答えて来た。

 受付嬢の話を聞いているときに、考助がそう考えていることは読めていたようだった。

「いいかと思います」

 そう言って頷くコウヒに対して、ミツキが首を傾げた。

「問題は、どの程度まで実力を付けるかだけど、どうするの? クラウンの事まで考える?」

 ミツキが言っているのは、ある程度の実力を付けてしまって、クラウンの支部を作ってしまうという事だ。

 勿論、考助もそのことを考えてギルドの提案をしたのだ。


「それは考えるけれど、その辺はガゼランと話を付けてからかな? どうせ作るとなったら冒険者部門が先だろうし」

「シュミット殿も通された方がよろしいのでは?」

 コウヒがそう言ったが、考助はウーンと腕を組んだ。

「どうかな? どうもここの商人ギルドは過剰状態になっているみたいだからね。変に新規参入はしない方が良いと思う」

「なるほど」

「まあ、その辺も話し合った方が良いと思うけど、とにかく最初はあくまで個人ギルドとして活動するよ」

 最初からクラウン付きのギルドとして活動しようとしても、必ず妨害にあうだろう。

 それなら最初は注目を浴びない小ギルドとして認めさせてしまえばいいということだ。

 考助のその考えには、コウヒとミツキも頷いて同意を示した。

 最初は小ギルドとして活動して、後々ギルドとしての力を付けて行けば、クラウンの支部を作っても文句を言われなくなる。

 正確には文句をいわせなくするのだが、先程聞いたセイチュンの在りようを考えれば、問題ないはずだ。

 勿論、ギルドが大きくなっていく途中で、色々な障害は発生するだろうが。

 

 いずれにしても、最終的にクラウンを巻き込むことを考えている以上、ガゼランとの話し合いは必須になる。

 もっと言えば、冒険者部門統括のドルも巻き込んだ方が良いだろう。

 ただの物見遊山だったはずのガゼンランの塔への旅行だったが、ここにきてクラウンが関わるような内容になって来た。

 いつもの事とはいえ、考助の勤勉さ(?)にコウヒやミツキは、苦笑を禁じ得ないのであった。

というわけで、今回は最初から目的を出してしまいましたw

後はどのように私的ギルドを大きくしていくか、に話が展開していくかと思います。

もっとも、最初に考えたストーリー通りに進んだことは、ほとんどないのですがw

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