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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 セウリの森編
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(13)帰還×2

 世界樹の妖精とスピカの視線を受けた考助は、何とか良い(?)名前が無いかと首を捻った。

 かといって、いきなり言われてもいきなり思いつくわけでもない。

 結局あきらめて、最初に閃いた名前を言うことにした。

「・・・・・・ユッタ、というのはどう?」

 考助がそう言うと、世界樹の妖精は何度か口の中で「ユッタ、ユッタ」と繰り返す。

 やがて、その名前が自分の中でしっくりきたのか、ニッコリと笑った世界樹の妖精が、考助に向かって頭を下げた。

「ありがとうございます。以降、私はユッタと名乗ります」

「そうですか。良かったです」

 考助は、思いついた名前が本人に受け入れられてほっとした。

 

 その隙を突くように、スピカが首を傾げながらとんでもないことを言いだした。

「これでユッタも、考助のハーr・・・・・・コホン。仲間入り?」

「えっ? ちょっ!? 何それ!!!?」

 驚き慌てふためいた考助が周囲を見回すと、コウヒとミツキは当然と言った表情で、コレットはまたかという表情になっていた。

 考助と同じような顔になっていたのは、シオマラだけだった。

 当の本人(本樹?)は、少しだけ首を横に傾けて考えた後、一つ頷いてから答えた。

「私は別にそれでも構わないわよ?」

「どうしてそうなる!?」

 そう叫んでしまった考助だったが、今度はシオマラさえも同意してくれなかった。

 思わずその場にしゃがみ込んだ考助の頬を、傍にいたナナが優しく舐めてくれるのであった。

 

「取りあえず、私はそろそろ戻るわ」

 へたり込んだままの考助を放置して、世界樹の妖精改め、ユッタがそう言って姿を消した。

 それを「相変わらず、勝手」と呟いて見送ったスピカが、考助の頭に手を乗せた。

「考助もいい加減諦めよう。別に世界樹の妖精が一体増えたところで、特に問題は無いだろう?」

「・・・・・・ここで、あると言っても言い負かされそうな気がするのは気のせい?」

 渋々立ち上がった考助が、恨みがましい表情でスピカを見たが、見られた本人は軽くスルーした。

「それは仕方ない。今までが今までだから」

「うぐっ・・・・・・」

 否定できない事実を示されて、考助は反論する気力を失うのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんな考助にちょっとだけ微笑を向けたスピカだったが、突然シオマラに視線を向けた。

「それはともかく、貴方」

「えっ!? あ、はい?」

 まさか自分に言葉を掛けてくるとは考えていなかったシオマラが、突然の事に姿勢を正した。

「ここの代表は誰? このまま神域に帰るのもおかしいから、お土産を置いていくわ」

「お土産、ですか?」

「中身は後から言う。それよりも、代表は?」

 首を傾げたシオマラに、スピカはさっさとするようにと促した。

「あ、は、はい!」

 慌ててシオマラは、観衆の一か所に視線を向けた。


 そのシオマラの視線を受けて、その一角が動揺したように騒めく。

 それを見たシオマラが、慌てて言葉を発した。

「早くしなさい! 神をお待たせするつもりですか!?」

 若干乱暴な物言いになってしまっているが、これはシオマラを責めることは出来ない。

 スピカはそれくらいの事で怒ったりするような性格ではないが、相手(神様)によっては待たせるだけで気分を害する神もいる。

 もっとも、そういうときはこの世界にいられる時間が限られている場合なので、神の性格だけが原因ではないのだが。

 そんな神の裏事情はともかく、シオマラに促されて慌てて一人のエルフが進み出て来た。

 その風貌は、里の代表らしく年齢を積み重ねたエルフらしい女性だった。

 

「私がこの里の代表になります。スピカ様に置かれましては・・・・・・」

 スピカは、挨拶の口上を述べようとしたその代表を遮った。

「挨拶はいい。それよりも、今、この里を騒がせている件に関して話がある」

「里を? ということは・・・・・・」

「そう。ここの人たちが、里の外の人間にさらわれている件」

 何故スピカ神が突然そのことを言いだしたのか分からずに、里の代表は首を傾げている。

「あれは、ヒューマンの国も動き出しているようですから、いずれ終結するかと思いますが?」

 その代表の言葉にスピカは首を振った。

「無理。軍が動いているのは事実だけど、一部は繋がっているから」

 スピカの言葉に、様子を窺っていた里の者達が息をのんだ。

 今スピカの口から語られているのは、間違いなく神託だ。

 疑うことなど誰も考えていない。

 

 そして、そのスピカの言葉を聞いた代表も口をギュッと結んだ。

「そうですか。やはりヒューマンは完全には信用が・・・・・・」

 出来ない、と続けようとした代表だったが、再びスピカが遮った。

「私が言いたかったことはそこじゃない」

「と、おっしゃいますと?」

「犯罪者と繋がっているのは、ヒューマンの国の軍もだけれど、エルフも繋がっている」

 さらりと告げられたその神託に、その場に集まっていたエルフ達のほとんどがギョッとした表情になった。

 その様子を見ていた考助は、一瞬パニックになるかと考えたが、逆に静まり返っていた。

 余りの事に、頭の処理が追いつかないのだ。

 

「な、な、な・・・・・・なんですと?!」

「言った通り。そうでもなければ、この森の結界を越えて他の亜人達がエルフを攫うなんて無理」

 よくよく考えれば当たり前のことなのだが、その事実に代表は顔色を変えた。

 そして、すぐに怒りとそのことを外部、しかも神に指摘されたことに、顔を真っ赤にした。

「そ、そのような馬鹿な真似をこの里の者が!」

 絞り出すような代表の声に、ようやく止まっていた里の者達が動き出した。

 

 それと同時に、考助の声が飛んだ。

「コウヒ、ミツキ、頼んだ!」

「「はい!」」

 考助の指示に従って、コウヒとミツキが一瞬で姿を消した。

 そして、そのすぐ後に何か所かで「ぐえっ」という声が聞こえて来た。

「コレット、受け止めて!」

「分かったわ!」

 観衆の中からミツキの声が聞こえるのと同時に、コレットもすぐにコウヒとミツキがしようとしていることを悟る。

 そのコレットが返事をするのとほぼ同時に、六人ほどのエルフが空を舞った。

 彼らは全員、考助達のいる壇上へとコウヒとミツキの二人に投げられたのだ。

 

 乱暴に投げられたエルフ達だったが、着地時に地面に叩き付けられることは無かった。

 地面に着く寸前に、一瞬だけふわりと何かに受け止められたような動きをしたのだ。

 勿論、コレットが用意した精霊魔法で受け止めたのである。

 コウヒとミツキに投げられた者達は、きれいに気絶させられているのか、その程度の衝撃では起きてくることはなかった。

 再びの急展開すぎる状況に、観客たちが息を飲んで見守る中、観客の中に紛れ込んでいたコウヒとミツキが考助の傍へと戻って来た。

「これで、少なくともこの場に居る者の中では全員です」

「うん。有難う」

 考助は、報告して来たコウヒに一度礼を言ってから、エルフの代表へと視線を向けた。

「彼らから話を聞けばいいと思うよ? どんな理由があったかは分からないけれど」

 そう言った考助に向けて、代表が深く頭を下げた。

 流石に今までのやり取りで、神威を発してはいないとはいえ、考助がどういった存在かは理解できていたようだった。

「ありがとうございます。・・・・・・おい! こいつ等をすぐに独房に入れろ!」

 代表から指示が飛んで、何人かのエルフ達が壇上に転がっている者達を引きずり出した。

 指示されたとおり、独房に入れられて気が付くのを待ってから事情聴取がされるのだろう。

 

 それらを見送った里の代表は、再びスピカと考助に向かって頭を深々と下げた。

「この度は、我等の恥部に骨を折って頂き、誠にありがとうございました」

「良い。礼を言うのであれば、この場に私を呼びだしたコレットに言うが良い」

「えっ!?」

 いきなり話を向けられたコレットが慌てた表情になるが、スピカはそれを無視して考助へと視線を向けた。

「旅から戻ったらちゃんと神域へと来るんだぞ? 姉上たちも話を聞きたがっている」

「ああ、分かったよ」

 そろそろ神域へと戻る時間が近づいていると察した考助は、それだけ言って頷いた。

 そして、考助が頷いた次の瞬間にはスピカの姿は壇上から消えていたのであった。

慌ただしく事件を片づけてスピカも戻って行きました。

世界樹の妖精改めユッタの話はもう少しだけ続きます。

ついでに、元々の事件もエルフ側は一瞬で片づけました。

後はエルフ達の仕事になります。

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