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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 セウリの森編
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(11)精霊神

 同胞たちの視線を浴びる中、コレットはいつもと変わらない様子で舞台に立っていた。

 儀式で注目されるのは、塔で慣れている。

 今回は別の意味での注目もされている点が違っているが、それについてはコレット自身は既に吹っ切れている。

 自分はセウリの里のコレットではなく、アマミヤの塔のコレットだという自負と自信があるためだ。

 その根底にあるのは、考助の存在だった。

 コレットは儀式を始める前に、ちらりと考助を見た。

 これから行う儀式では、考助の名前を使う事になる。

 事前に何も言っていないので、少しは驚くだろうか、と儀式には直接関係のないことをコレットは考えた。

 だが、それもすぐに内心で首を振って否定した。

 考助は少しは驚くだろうが、笑って許してくれるだろうと確信している。

 こういう時、コレットは考助に甘えてしまっているな、と感じるのだが考助本人はそんなつもりは全くないだろう。

 恐らく、考助の傍にいる女性たち全員が似たようなことを考えているに違いない。

 そんなことを考えていたコレットは、考助から視線を外してから自分を注目している観衆を見て苦笑した。

 自分がこの里にいた時は、これだけ注目を浴びる舞台に上がることになるなんて欠片も考えていなかった。

 考助と出会った当初は、シルヴィアに引っ張られるだけで状況に流されて行っただけだった。

 それが、今では考助との出会いは陳腐な言葉になってしまうが、運命だったと考えているのだから人生はどうなるか本当に分からない。

 そして今、この運命に感謝をしつつ儀式を行おう。

 コレットはそう決意をしてから、儀式を始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 世界樹の巫女が行う儀式は、派手な歌や踊りがあるわけではない。

 基本的には、感謝の祝詞を世界樹に向かって歌い、それをもって儀式としているのだ。

 その後で、住人達が行う歌や踊りはあくまでもおまけ扱いだ。

 コレットが塔の世界樹エセナに対して普段行っている儀式も全く同じ物である。

 だが、今回はいつもとは違った儀式を行おうとしていた。

 基本的には世界樹に感謝を込めるのは同じなのだが、更に別の対象が加わっている。

 

「世に豊穣をもたらす世界樹よ」


 コレットの口から祝詞が述べられた。

 その次の瞬間、集まったエルフ達はなぜコレットがこの場に呼ばれたのかを理解した。

 勿論、コレットのすぐ傍で儀式を見守っていたシオマラもだ。

 コレットの祝詞に合わせて、膨大な数の精霊たちが彼女の周囲に集まって来たのだ。

 それは、たった一言祝詞を述べただけで集められる数ではなかった。

 ハイエルフであり世界樹の巫女であるシオマラであってもできない芸当だった。

 無理にやれば出来ないことは無いが、実行したら最後、すぐに倒れてしまい使い物にならないだろう。

 そんなことを平然と行っているコレットは、ここにいるエルフ達の誰も出来ないことをやってのけたのだ。

 そして、儀式の祝詞はこれだけで終わりではないのである。

 

 たった一言の祝詞で観衆を瞠目させたコレットは、その様子に気づいていたが特に気にすることなく儀式を続けた。

 この程度のことが出来なくて、考助の傍にいられるはずがないと思っているのだ。

 考助の傍にいる女性たちは、それほどまでに実力があり、また同じ女性であるコレットから見ても魅力的な者達ばかりなのである。

 コレットの口から祝詞が続けられるたびに、集まった精霊たちが舞い、光り輝く。

 普段は姿を隠しているはずの精霊たちも、姿を現してその儀式に加わっていた。

 精霊たちに対する感応力が強いエルフ達だからこそ、それがよくわかる。

 そして、自分達にはこんな芸当は決して出来ないという事も。

 事ここに至っては、集まった観衆たちは、過去の事も忘れてただ呆然とコレットが行う儀式を見守り続けるだけであった。

 そしてついにコレットの口から最後の祝詞が述べられた。

 

「我が名はコレット。世界樹エセナの巫女であり、現人神コウスケと共に歩み進む者。我が願いに応えたまえ、精霊神スピカ」


 コレットの祝詞が終わり、その場は一瞬の静けさが訪れた。

 コレットの周囲で舞っていた精霊たちでさえ、その瞬間は舞うのを止めその場にとどまっている。

 永遠にも思える一瞬の静寂が、その場を支配した。

 さらにその次の瞬間。

 コレットのすぐ傍、精霊たちが多数集まっているその場所に、力の奔流が生まれた。

 今までコレットが行っていた儀式に使っていた力さえ遥かに凌駕するほどの力の奔流だった。

 

 その力の奔流に合わせて舞台上で強い光が生まれた。

 不思議なことに目を焼くような光ではなかったのだが、その場にいたエルフ達の全員が反射的に目を閉じた。

 そして閉じた目を開けて再び舞台を見た時には、今までいなかったはずの女性が一人立っていた。

 その女性を見た全てのエルフ達は、再び反射的に傅くことになる。

 女性を見た瞬間に気付いたのだ。

 その女性が、全てのエルフ達が世界樹と共に崇めているスピカ神であるという事に。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 壇上には、スピカ神とコレット、それにシオマラがいた。

 シオマラは、コレットの儀式によって現れたスピカ神に向かって傅いている。

 それに対して、儀式を行ったコレットは視線を向けて来たスピカ神に対して、頭を下げただけだった。

 これは別に神に対して不敬な態度を取ったというわけではなく、儀式を行ったコレットが傅く必要が無かっただけだ。

 神に対するその辺の細かいことは、シルヴィアから徹底的に叩き込まれている。

 ちなみに、この場に神をんだコレットだが、考助が塔の中で行った神威召喚とは全くの別物である。

 召喚陣と自身の力だけで行う神威召喚とは違い、今回コレットは世界樹の力を借りて行った降神に近い儀式である。

 一般の者から見れば、どちらも絶大な力が必要なのは違いないのだが、儀式を行う者の力自体は後者の方が少なくて済むのである。

 もっともそんな違いは、ここで儀式を見届けたエルフ達にとっては些細な差でしかない。

 神の一柱をこの場にんだ。

 それだけでこの世界においては、絶大な意味を持つのであった。

 

 壇上にいるスピカは自分に集まる視線を気にせず、まずは自身をこの場にんだコレットへと視線を向けた。

「ふむ。やはり次に私をんだのは其方だったか」

 そう言って見せたスピカの表情は、満足気だった。

 一方で初めて神と直接対面する事になったコレットは、再び頭を下げてからそれに答えた。

「本来であれば、彼女の方が先だったのでしょうが・・・・・・」

 そう言って言葉を続けようとしたコレットだったが、右手を上げたスピカに止められた。

「それは別にいい。そもそも其方と彼女では役割が違うからな」

 その言葉に、コレットは安心したような表情を見せた。

 この場で二人が言葉を濁して言っている「彼女」とは、スピカの加護を持っているフローリアの事だ。

 だが、そもそもスピカが言った通り、フローリアには彼女の役割がある。

 フローリア自身が、この世界にスピカ神を降神する機会など、まず訪れることは無いだろう。

 そういう意味では、コレットがスピカ神を降神することになったのは役目を考えればあり得ることなのだった。

 

 そんな一人と一柱の会話を考助達を除く者達は、ただ呆然と眺めていた。

 言葉にして反応しようにも、目の前で起こっていることが信じられなくて何も反応が出来ないのだ。

 なまじ過去のコレットを知っている者達だったからこその反応であるとも言える。

 だが、彼らにとって信じられないこの状況は、まだしばらく続くのであった。

スピカ登場!


考助以外の者がこの世界に神を降神しました。

本文でちらりと触れていますが、「降神」と「神威召喚」は別物です。

覚えていないかもしれませんが、シルヴィアと出会ったときに行ったのも「降神」です。

どんな方法でもこの世界に神を降ろせばそれは「降神」となります。

そういう意味では、「神威召喚」も「降神」の一種と言えます。

※「降神」は「堕天」とは全然違うのでご注意をw

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