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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2章 セウリの森編
502/1358

(2)森の道中

 セウリの森に入ってから三日が経っていた。

 セウリの森には複数の小さな村があるが、村と村をつないでいる道はほぼ一本道なので迷う事はまずない。

 最初の村に着くまで後半日と言った所で、その日は夜営することになったのだが、その夜営場所に先客がいた。

 その先客は、街道を警戒していた軍だった。

 森の途中にある夜営に適切な場所は限られているので、かち合う事もあるだろうと予想はしていた考助である。

 状況が状況だけに最初は軍から警戒されていた考助達だったが、すぐにその警戒も解かれた。

 今は、その軍人たちに馬車が注目されていた。

 はっきり言えば、こんな所を走るとは思えないような外見の馬車に、皆が興味津々なのだ。

 考助も魔道具はともかく、馬車の中身までは隠すつもりはないので、好きに見学させていた。

 

 その筆頭である隊の隊長が、半分感心、半分呆れたような表情で考助に向かって言った。

「いくら快適に移動するためとは言え、ここまでするかね? かなり掛かっているだろう?」

 一目見ただけで、かなりの金がつぎ込まれていることは分かったらしい。

 今の馬車は、タウゼン王国の王都を出発した時よりもさらに手が入っているのだ。

 外見はともかくとして、中身は完全に移動するホテルのようになっている。

 こんな改造が出来るのも、重量が増えてもものともしないワイルドホースで引いているからこそだ。

 隊長の言葉に考助は肩を竦めて答えた。

 これまでの旅で何度も同じような質問をされているのだ。

「趣味でもありますからね。おかげで長期間の旅でも快適に過ごせていますよ」

「それはまあ、下手をすれば一流どころのホテル並みだからな」

 隊長が羨ましげに、馬車に設置されたベッドを見ながらそう言った。

 流石に隊長の言葉は多少大袈裟になっているが、周囲で話を聞いている隊員たちが頷いているのは、夜営の辛さを身に染みて分かっているからだろう。

 

「それはともかく、今日はゆっくりと休むがいい」

「本当にいいんですか?」

 隊長の言葉に、考助が首を傾げた。

 隊長から夜営は隊員だけですると言われているのだ。

 有難い話だが、本当に良いのかという思いもある。

「ああ。これも訓練の内だからな。まあ、この道を単独パーティで突破するような実力者に要らぬ気遣いかもしれないが」

 隊長にしてみれば、護衛を引き連れている時を想定しての訓練のつもりらしい。

 守るべき対象が、セウリの森を単独突破するような冒険者であることも訓練に丁度いいという事だった。

「そういう事なら、有難く休ませてもらいます。何かあったら知らせてください」

「ああ、当てにしている」

 考助の言葉に、ニカリと笑う隊長は頼りになる軍人さん、という感じだった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 その日の夜は、実は軍人に扮装した人さらい集団だったというイベントもなく、何事もなく過ごすことが出来た。

 とある理由で一度も起きることなく寝続けていたというわけではないが、概ね平穏な夜だったと言えるだろう。

 既に出発の準備を終えた馬車に乗り込んでいる考助を見て、隊長が話しかけて来た。

 二十人程度いる隊は、それだけ準備にも時間がかかるのである。

「流石に準備は早いな 気を付けて行くと良い。我々が通ってきたとはいえ何があるか分からないからな」

「ええ。そちらもお気を付けて」

 荷台から顔をのぞかせた考助が、隊長にそう返事を返した。

 出発前で忙しいのか、朝の会話はそれだけですぐに出発することになった。

 隊長と数人の軍人に見守られながら考助達が乗る馬車はゆっくりと走りだした。

 

 夜営地から十分に離れたところで、同じように荷台に乗っていたコウヒが話しかけて来た。

「それで、どうされるのでしょう? 先に進むのですか?」

「ああ。まずは村を目指すよ」

 考助は頷きながらそう答えた。

 二人がこんなことを話しているのは、昨夜ちょっとしたことが起こったためだ。

 深夜の寝ている時に、いきなりエセナが出てきて道を外れて進んでほしいと言い出したのである。

 その様子から何かあると考えた考助は、返事を保留にしたのだ。

 エセナに話を聞く限りでは、すぐに動いてほしいという感じでもなかったので、さほど慌ててはいない。

 とはいえ、エセナがこんな事を言い出すのは滅多にないので、何かあるのだろうとは考えている。

 そのため、一度近くの村に入って、馬車を預けた上で森の中に入ることにしたのだ。

 

 考助からその考えを聞いたコウヒも納得して頷いた。

「わかりました。・・・・・・彼らを預けられる場所があればいいですが」

 コウヒはそう言いながら、首をワイルドホース二頭に巡らせた。

 元が魔物だけに、世話を拒否されることも珍しくないのだ。

「その場合は、馬車だけを預けていくことにするよ」

 考助は迷うことなくそう言った。

 そもそも裸馬(?)にしてしまえば、ワイルドホースは森の中を進むことも問題ないのだ。

 その辺りは、流石魔物といえるだろう。

「そうですね。それにしてもエセナは、何をさせたいのでしょうか?」

 首を傾げるコウヒに、考助も同じように首を傾げた。

 昨夜は、あまり詳しい話を聞いていないのだ。

 エセナの様子を見る限りでは、説明したくない、というよりも説明するのが難しいと言った感じだったので、詳しく聞くのを止めたという事情もある。

「さあね。よくわからないけれど、あんな態度になるエセナも珍しいから、言った通りにしてみるよ」

「わかりました」

 コウヒとしても、考助の決定に異を唱えるつもりはないのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 その日の昼には、一つ目の村に入ることが出来た。

 道中は魔物に邪魔されることもなく、すんなりと村へと到着できたのだ。

 小さな村とはいえ、街道を利用する商人や冒険者がそこそこいるのか、一応宿も常設されている。

 そして、心配だったワイルドホースを預ける施設も見つけることが出来た。

 流石に馬車で来るものが多いのか、そうした施設はある程度充実しているようだ。

 施設の主人に話を聞くと、森の中に点在している村は何処も似たような感じで施設があるとのことだった。

 設置しておけば稼げると分かっている施設を作らない手はないのだろう。

 おかげで考助も、その恩恵にあずかることが出来たというわけである。

 有難く施設を利用させてもらう事にして、その分報酬をしっかりと渡しておいた。

 ちなみに、馬車も預けておくことになるのだが、物が物だけにきちんと盗難防止の魔道具も備え付けてある。

 考助達が使っている馬車は、売り払えばひと財産稼げるほどになっているので、必須の備え付けと言えるだろう。

 

 村で色々な準備を終えた後は、森の中へと入ることになった。

 村からは歩きで進むことになる。

 ワイルドホースであれば、考助一人くらいは乗せて運ぶこともできるだろうが、そもそも考助が馬に乗ることに慣れていないので却下となった。

 ワイルドホースは二頭いるが、それだと一人あぶれてしまうのだ。

 最初は慣れていない森の道に悪戦苦闘していた考助だったが、いつの間にかそれなりのスピードで歩くことが出来るようになっていた。

 それが、現人神としての能力なのか、それとも元々の肉体の能力なのかは、本人にも分かっていない。

 

 そして、考助達が村から森に入った翌日。

 考助達は、また一つ大きな出会いを果たすことになるのであった。

前半でわざわざ軍隊と会わせましたが、ちゃんと意味があります。

単に考助が魔改造(?)を施している馬車を羨ましがらせるために出したわけではありませんw

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