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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 タウゼン王国編
500/1358

(22)次の目的地へ

章構成を変更しました。

三人+一匹の旅の話を第三部とします。

この話で第三部の第一章は終わりになります。

旅話はまだ続きますよ~。

 国王との対面を終えた考助達は、旅支度を終えて王都を後にしようとしていた。

 サウリの街を発つ前に買おうとしていた馬車だったが、ようやく王都で手にすることが出来た。

 今度は、誰にも邪魔されずに無事馬車を手に入れることも出来た。

 馬車に繋がっている動物は、普通の馬ではなく調教されたワイルドホースというモンスターだ。

 このモンスターは外見はほとんど馬と変わらないのだが、馬よりも足が速く体力面に優れているので荷馬車用として重宝されている。

 ただ、通常の馬と違って繁殖が非常に難しいので、高値で取引されている。

 さらに加えると、元がモンスターだけあって扱いも非常に難しかったりする。

 一度主と認めれば逆らう事が無い。だが、認められるというのが非常に難しいのだ。

 主として認められなければ、当然ながら売ってもらう事が出来ない。

 これは他国でも適用されていることで、もし不正に入手したとばれれば、厳正に処分されることになる。

 馬車用の動物として町に入ることもあるのに、突然暴れられたら困るのはどこも同じなのだ。

 もっとも、ナナを連れている考助は、すぐに主として認められることとなったため、問題なく購入することが出来たのである。

 

 考助達が準備している馬車を見ながら、クレール達が苦笑していた。

 その顔には、もはや考助のやることに驚いていてもしょうがないと書いてあった。

「何ともごつい馬車を買ったと思ったが、まさかワイルドホースが二頭とはな」

 考助達が乗ることになっている馬車は、一般の行商人たちが使う物とは違い貴族や豪商たちが使う安定性が高い特別仕様のものだ。

 それをさらにカスタマイズして作ってもらったのが、今クレールの目の前にある馬車になる。

 カスタマイズしたと言っても、出来るだけ早く出発したかったのでちょっとした改変と言った程度にとどまっている。

 それでも、一般の馬車からすれば豪華極まりない仕様になっているので、クレールのパーティ全員が苦笑する羽目になっているのだ。

「こんな物をポンと買うことができるコウが羨ましいわ」

 心からの本音だと言わんばかりに、カルラがしみじみとそう言った。

 

「ハハハ。まあ、僕の場合は、冒険者としての稼ぎ以外にも収入はありますからね。折角なので奮発しました」

 笑ってそう言った考助だったが、今考助が持っている資産からすれば奮発したと言うほどの額ではなかったのだが、それは言わないでおく。

「かーっ。羨ましいねえ。一度でいいからそんな台詞言ってみたいもんだぜ」

 クレールは、首を振りながら羨ましげにそう言った。

 これ以上は何を言っても嫌味になるだろうと思った考助は、すぐに話題を変えることにした。

「クレールさん達も、ここでは十分稼いだのでしょう?」

「おうよ。流石王都の冒険者ギルドだぜ。選り好みしなければ、それなりの依頼はごまんとあるな」

 そうさらりと言ったクレールだったが、実際はDランク冒険者としてかなりの実力があるからこそ言える台詞だった。

 考助の見立てでは、そろそろCランクへ上がっても問題ないだけの実力があるように見える。

 実際それは当たっていて、クレール達のランクが低いのは、他の誰もやらないような依頼を引き受けて失敗することが多いためだ。

 本人たちは、これも経験の一つだと笑っているが、ギルド側が勿体なく思ってたりするのは余談である。

 

「クレールさん達は、サウリへ戻るんですか?」

「おう。俺たちの本拠地はあそこだからな」

 考助の問いかけに、クレールは笑顔を見せた。

 本気であの町を大切にしていることがわかる顔だった。

「お前らは、目的はあるのか?」

「あれ? 話していませんでしたか?」

 てっきり王都へ来る間に話をしていたつもりになっていた考助だったが、クレールに聞かれてその話をしていないことを思い出した。

「取りあえず西に向かいますが、特に目的はありませんね。まあ、旅の途中でガゼンランの塔へ行ってみようとは思っていますが」

 考助の言葉を聞いたクレールが、嗚呼という表情になった。

「なるほどな。お前さん達ならあそこでも稼げそうだな」

「行ったことあるんですか?」

 疑問に思った考助が聞くと、クレールが頷いた。

「ああ、こいつらと組む前のことだがな。まあ、若気の至りってやつだ」

 初めて見せるような照れた笑いを浮かべるクレールに、考助も笑った。

「そうでしたか。まあ、どちらかといえば、物見遊山目的の方が強いですけれどね」

「ハハ。お前たちだったら、攻略も出来るんじゃないか?」

 冗談めかしていうクレールだったが、考助は内心で実はできると思います、などと考えていたりするが、勿論そんなことを馬鹿正直に言ったりはしない。

「流石にそれはしないですよ」

 そう言って、ハハハと笑う考助だった。

 

 ひとしきり会話をしていた考助達だったが、いつまでも話をしているわけにはいかない。

 ある程度で話を切り上げて、考助達は馬車に乗りこんだ。

 最初は考助が御者をすることになっている。

「それじゃあな」

 御者台に座る考助に向かって、クレールが右手を上げてそう言って来た。

 ちなみに、酒の失敗を後悔しまくっていたユーリーは、名残惜しそうにコウヒとミツキを見ている。

 何とも分かりやすい表情をしていたが、考助は敢えて何も言わないようにしていた。

「ええ。また、どこかで」

「ああ。また、どこかで」

 冒険者特有の挨拶を交わした後で、考助はゆっくりと馬車を走らせた。

 この挨拶は、一か所に止まる事の少ない冒険者達が、別れの時に交わす挨拶なのだ。

 実際、どこか別の場所でひょっこりと顔を合わせることも少なくないために、いつの間にか定着したと言われている。

 考助もこの挨拶が気に入って、冒険者との別れの時は使うようにしていた。

 

 こうして、考助達はタウゼン王国の王都を後にすることになるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 城の自室にある窓から王都を見ていたエルネスト国王は、一つため息を吐いた。

「見えるはずもないか」

 今日、現人神が王都を去るという話を聞いたのは、つい昨日のことだった。

 馬車の注文ということで、色々手間取ってはいたようだったが、遂に出立という事になったという報告を聞いたのだ。

 つい気になって窓から見えないかと様子を窺ったのだが、当然ながら大通りを通る馬車は数多くあるので、どれが彼らの乗る馬車か分からずにため息を吐いたのだ。

「彼の者がもたらした物が、この国にとって良き存在となるか・・・・・・」

 エルネスト国王は、そんなことを言いながら視線を机の上に向けた。

 そこには、通信具とは分からない魔道具が一つ乗っていた。

 そう呟いた後、エルネスト国王は首を左右に振った。

「いや。なるかどうか、ではなく、しなくてはならないのだな」

 決意を新たにそう言った言葉は、誰も聞いていなかった。

 しばらく一人にするように言って、人払いをしているのだ。


 今回の「献上品」の騒動では、かなり大規模な粛清が行われることになっている。

 裏で動いていたのが、騎士団の団長という事もあって、かなりの厳しい処分になるだろう。

 もっとも、「献上品」の本来の目的を知られることが無いように、別の名目で処分されることになるだろうが。

 この町の冒険者ギルドのトップともしっかりと話をしてある。

 商隊を襲って来た「組織」も国が動いて解体することになっている。

 考助達の反撃を受けて弱体化している今なら、それも可能だろう。

 これが元となって王国との関係がまずくなるようなことにはならないはずだ。

 そういう事を含めての「報酬」だったのだが、それ以上の物を貰ってしまった。

 現人神がどういう目的で「通信具」を渡して来たのかは分からないのだが。

 

「いや、それはともかく・・・・・・彼らはこの先も騒動に巻き込まれるような気がするのだが・・・・・・ウム。考えたくないな」

 つい思考がそれて、そんなどうでもいいことを考えたエルネスト国王だった。

 だが、一度考え始めると、どうしてもそこから思考が離れてくれない。

「聞いた話だと自ら目立つような馬車に乗っているという事だったが・・・・・・いや、馬車に乗ってなくてもそれは同じか」

 考助の傍についていた二人の美女を思い出した国王は、そもそも目立たないようにするのが不可能だと考え直した。

 少なくとも、考助達の噂は既に国内の貴族たちに広まっている。

 彼らが乗っているとすぐに分かるような馬車らしいので、判別はつくだろう。

 褒章を持っている考助達に手を出すような愚か者はいないと信じたいが、どうにも信じきれないのが貴族という存在なのだ。

 頼むから余計なことをしてくれるなよ、と願わずにはいられないエルネスト国王なのであった。

今回は敢えて目立つことを選択した考助達でした。

コウヒとミツキを連れている時点で目立たないという選択肢がないということに、ようやく気付いた(開き直った)感じですw


折角なので、次は馬車の魔改造の話でも書くかもしれません(予定)。

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