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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 塔の外で色々やろう
50/1358

(18) 血の契約、再び

本日2話投稿の2話目です。

読み飛ばしにご注意ください。


祝! お気に入り登録100件

本日午後に目標としていたお気に入り登録100件達成しました。

ありがとうございます。これからもよろしくお願い致します。

「いやいや、二人並みって・・・マジで!?」

 この時の考助は、驚きのあまり、左目を使ってピーチのステータスを確認する、ということを忘れている。

 コウヒやミツキに匹敵すると言われれば、しょうがないことだろう。

 現に、シュレインやシルヴィアも驚愕の表情をしていた。

「いえいえ。流石にそれは言い過ぎですよ~。体術や剣術だけでも一歩及ばない感じで、その上魔法を使われたらとてもじゃありませんが、足元にも及びません」

 逆に言えば、魔法を使わない戦闘であれば、一対一でそこそこ戦えることを意味している。

「・・・それは、すごいな」

 考助の呟きに、シュレインとシルヴィアが頷く。

「・・・あれあれ? 私は、否定したはずですが?」

「いやいや。一歩及ばない所まで行けてる時点ですごいから」

「そうなんですかね~?」

「・・・え? そうだよ・・・!? そ・・・そうだよね?」

 ピーチの反応に不安になった考助が、シュレインとシルヴィアを見るが、二人そろって頷いた。

「ありえませんわ」

「吾でもそこまで強くはないぞ?」

「はあ~。そうなんですか」

 そこで考助が、ふと疑問に思った。

「・・・あれ? でも、シュレって、ピーチの気配に気づいたんだよね?」

「あれは、吸血鬼の力の気配に気づいたというのが、正しいの。本人も分かってなかったから、力の抑制も出来てなかったのだろう?」

「確かに、そうかもしれませんね~」

 シュレインの確認に、ピーチも頷く。

「なるほどね。・・・それで、ピーチ自身の強さの評価が低いのはなんで?」

「・・・なぜと言われましても~?」

 考助と一緒に、ピーチも首をかしげている。

 自身では強さの基準がよくわかっていない感じである。

「まあ、推測だけど、ピーチは今までほとんど村を出たりしなかったとか?」

「そうですね~」

「だったら、世間一般と感覚がずれててもおかしくはないわよね?」

「・・・なるほど、そうかもしれませんね~。私はここに来るまで、村からほとんど出たことなかったのは、事実ですし」

 考助も納得しかけて、ふと別の疑問が浮かぶ。

「いや、それだと村の人と比べて、自分が強いとか思わなかった?」

「確かに、強かったですよ~。でもどうせ村の中のことだし、と思ってましたね」

 小さな村の中で強くても、外に出れば自分より強い人はたくさんいると思っていた、とのことだった。

 実際は、そんなことは無かったのだが。

 

「あの~。それで、私からのお願いがあるのですが・・・」

「お願い?」

「私もお仲間に加えてもらえませんか?」

 ある意味、予想通りと言えば予想通りのピーチの言葉に、考助は答えに詰まった。

 ピーチが考助のことを、自身の運命(の人)と言っている以上、こう言いだすことは、予想できたことだ。

 考助自身もある一点を除いては、別に構わないと思っている。その一点とは、コウヒの存在である。

 彼女は、明らかにピーチを警戒している。

 ピーチほどの強者であれば、コウヒやミツキの一瞬のスキを突いて、考助を害することも可能だと思っている。

 勿論コウヒとミツキを相手に、簡単に出来ることではないが、仲間となって四六時中一緒に行動することになれば、それだけ危険が大きくなるだろう。

 そんなコウヒの考えも分からなくはないのだ。

「・・・・・・う~ん・・・」

 腕を組んで悩んでいる考助に、ピーチが不安そうに見ている。

 そんなピーチを見て、シュレインが疑問を挟んできた。

「お主が心配しているのは、裏切られる可能性かの?」

「正確には、裏切られるというか、裏切られて殺される可能性かな?」

 あと心配してるのは、自分ではなくコウヒ、と心の中で付け加える。

「そ・・・そんなことは、しませんよ~」

「あ・・・ごめん。僕もそんなことは無いと、今のところは思ってるよ。でも、そこが問題なんじゃなくて、いざというとき、それが出来る、というのが問題なんだよ」

 例えば、シルヴィアだとそんな心配はしない。彼女の実力だと、コウヒやミツキに対抗するなど不可能だからだ。

 問題なのは、実行する実行しないではなく、出来るか出来ないか、ということなのである。

「ということは、ピーチがコウスケ殿を害することをしないと保証されれば、問題ないということかの?」

「まあ、言ってしまえば、そういうことだけど?」

「だったら、血の契約を結んではどうかの?」

 シュレインが召喚された際に、結んだ契約である。

「え・・・? 出来るの?」

「出来るぞ。ピーチは、そもそも吸血一族の血を引いておる。儀式に吾の力添えをすれば、何の問題もないの」

 思わず考助がコウヒの方を見ると、彼女も頷いた。

「あの~? 血の契約って何でしょう?」

「簡単に言うと、契約者に強制性を求めることが出来る儀式だの。この場合は、互いの命を害する行為をすることが出来ない、というところかの?」

「へえ。そんなことができるんですか~」

「してどうする? 契約を結ぶかの?」

 シュレインの言葉に、ピーチが考え込む仕草を見せた。

「・・・それ以外は、特に何もないのでしょうか~?」

「ん? どういうことかの?」

「例えば、奴隷的な存在になってしまうとか」

「ああ、そういうことか。勿論、やろうと思えばできるがの。今回は、特に必要ないだろう? そもそもコウスケ殿が、そのような契約は望まないだろうしの」

「そもそも疑えばきりがないわよね。血の契約自体、あんまり一般に知られてる物じゃないし。一応私も血の契約のことは分かっているから、あとは信用してもらうしかないかな?」

 ミツキの提案に、ようやくピーチも納得したような表情になった。

「わかりました~。ミツキさんの言葉と、あとは自分の勘を信じます。・・・それで、血の契約をすれば、仲間に入れてもらえるんですか?」

「うん。それなら問題ないよ」

「では、やってしまってください~」

「よかろう」

 ピーチの合意にシュレインが頷き、血の契約をすることになったのである。

 

 血の契約を行うのに、何か準備が必要になるのかと思っていたが、そんなものは必要ないとシュレインに言われてしまった。

 結局必要になったのは、考助の指の先の血一滴だけだった。

 考えてみれば、考助は気づいていなかったが、シュレインと血の契約を結んだときも考助の血を、シュレインが飲んだだけだ。

 厳密にはこの時に、シュレインが先ほど言った通りに力添えをしているのだが、ミツキ以外には何をやったのかも分からなかった。

 それでどうやって条件設定するのかと思って尋ねると、口約束を血の力で縛るとのことだった。

 今回の場合は、先程の会話が、そのまま契約の内容になる。

 シュレインの時は、そのような口約束さえもした覚えがないが、特に血を与えた者がその内容を聞いている必要はないそうだ。

 それだと、血を与えた者が不利になるような条件を結べそうだが、実際には、血をもらった者は与えた者に対して不利な条件は結べないとのことだった。

 契約者の血と、約束事(契約内容)、そして第三者の仲介が、血の契約に必要な物だそうである。

 その他にも細かい条件(どちらかが吸血鬼の力を有している必要があるなど)があるそうだが、長くなりそうだったので、聞くのはやめておいた考助だった。

 

「うーん・・・やっぱり、血ってあんまり美味しい物でもないですね~」

 考助の指先に出てきた一滴の血を舐め取ったピーチの感想である。

 今回のような契約内容だと、多量の血は必要ないそうだ。

「それはそうだろうの。吾の一族でもなければ、血を美味しいという者は、いないのではないかの?」

「・・・あれ? ですが、私は吸血鬼の血を継いでるのでは~?」

「継いでるといっても、力の方だしの。肉体的には、サキュバスの物なのだろう?」

「なるほど~」

「吾にとっては、コウスケ殿の血は極上なんだがの」

 そう言って笑ったシュレインを見て、何となくこの時考助は、血を与える気になってしまった。

 ピーチに指を舐められて、妙な気分になってしまったのかもしれない。

「・・・・・・舐める?」

 まだ指先から出てる血を見て、考助がそう言って指先を差し出すと、

「よ、良いのか・・・!?」

 ものすごい勢いで、シュレインが食いついてきた。

「う、うん。まあ、まだ血も止まってないし・・・あ、こら」

 言い訳がましい事を言おうとした考助の指を、さっさとシュレインがパクリと咥えた。

 何となく怒る気にもなれず、考助は好きなようにさせることにした。

 

 結局、いつまでも指を咥えていそうなシュレインの口から無理やり指を引き抜いて、シュレインから恨めしい表情をされる考助であった。

 ちなみに、その時すでに、目的の血の契約は、終了していたのであった。

ピーチの魔法を除いた戦闘能力の高さは、コウヒミツキを除くと仲間内では、一番です。

ワーヒド達もぎりぎり敵わないくらいです。

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