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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 タウゼン王国編
494/1358

(16)呼び出し

 ヘイノが考助達の座るテーブルに混ざってから数分後。

 いよいよ本題だと言いたげに、ヘイノが考助を見てきた。

「ところで、王家が貴方達について興味を持っているようですが、何か心当たりはありませんか?」

 突然の言葉に、考助は目を丸くした。

「僕たち、というのは?」

「コウ様とコウヒ様ミツキ様のお三方です」

 いきなりのことに、考助は本気で首を傾げた。

 ラゼクアマミヤ経由で、考助達自身のことを伝えていたという事があるのならばまだしも、今回はそういったことも全く行っていない。

 ただのコウという一冒険者として入国したし、活動してきたのだ。

 

「特に心当たりと言われても思い当たらないのですが・・・・・・?」

「そうですか」

「あるとすれば、今回の輸送中の活動くらいでしょうか。ああ、あとは素材採集の依頼を受けたのも私達でしたね」

 付け加えるように言われた言葉に、ヘイノが虚を突かれたような表情になった。

「素材採集も貴方達が行ったのですか?!」

 このヘイノの反応には、考助の方が驚いた。

「え!? ご存じなかったのですか? 依頼を出したのはそちらの商会だったはずでしたが」

 その言葉に、ヘイノが頭を抱え込んだ。

「・・・・・・確かにこちらの不手際ですね。私自身は輸送の日程とかは聞いていましたが、対象のモンスターを討伐した冒険者までは聞いていなかったのです」

 話を聞く限りでは何とも片手落ちな気がしなくもないが、大きな商会ともなるとそういう事もあり得るのかもしれない。

 一つの商会が討伐依頼を出しているのは、数多くある。

 各地に支部を置いているような商会だと、それぞれの商会で独自に依頼を出しているのだ。

 本部を管轄しているヘイノまで情報が届かないことがあってもおかしくはないだろう。

 もっとも、今回の依頼品は王家への献上品だ。

 その献上品の素材を討伐した冒険者をヘイノが知らないというのは、考助の感覚からすればおかしな気もする。

 ただ、ヘイノの表情を見ている限りでは、本当に知らなかったのだろう。

 

「いや、これは失礼しました。・・・・・・一度、情報網をきちんと構築しなおさないといけませんね。今回は私自身にも問題があったのですが」

 最後は独白するような言葉だった。

 ヘイノ自身に何か思う所があるのであれば、特に自分が口を出すことではないと考助は何も言わなかった。

 そんなことよりも、先に気になることがある。

「それで、王家が興味を持っているというのは?」

「ああ。献上品を納品することに関して話をしていた時だが、今回の輸送に関して王が興味を持ったらしい。是非とも会ってみたいと言っていると高官から言われた」

 ヘイノがそう言うと、周囲で騒いでいた冒険者達が固まった。

 騒がしかった室内が、一瞬で静まり返った。

「ええと・・・・・・それは、私達だけですか?」

「いや。名前が出たのは其方たちだけだったが、全員と会いたいと打診を受けた」

 ヘイノの答えを聞いたクレールが即座に反応した。

 

「いやいや。今回の旅は、どう考えてもコウ達の功績だろう。俺たちは関係ないな。よって、王の御前に出る必要などない」

「そうね。必要ないわよね」

「どう考えてもコウの手柄だよなあ」

 冒険者たちが口々に考助達を褒め称えるが、単純に王の呼び出しに応えたくないだけだとまるわかりだ。

 だが、そんな希望も首を振ったヘイノによって激しく砕け散った。

「残念ながら、王の希望は全員の呼び出しだ。誰に功績があるかは全く関係ない」

 キッパリと言い切られて、冒険者たちの首がガクリと落ちるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「これまでもこういったことはあったのですか?」

 ヘイノから話を聞いて、考助がふと疑問に思ったことを聞いた。

「ええ。ありましたよ。毎回ではないですが」

「毎回ではないとなると、何か条件があるのでしょうかね?」

「さて、流石にそこまでは私も存じておりません」

 王への献上品を届けるのは、ヘイノの商会でも何度か行っている。

 ただし、そのたびに護衛に関わった冒険者たちが呼ばれているわけではないのだ。

「ついでに言うと、呼ばれたのは全員ですが、名指しで指名されたのはさらに異例のことです」

 少なくともヘイノが知る限りでは初めてとのことだった。

 

 一瞬現人神であることがばれたのかと考えたが、王に知られる要素はかけらもない。

 普通よりも強すぎるという条件が付くが、あくまでも冒険者としての枠は超えていないはずだった。

 一応考助は、コウヒとミツキの二人を見たが、二人共思い当たりはないとばかりに首を振った。

 そのやり取りを誤解したのか、ヘイノが言葉を続けてきた。

「何も心当たりがないようですね」

「今回の輸送についてくらいしかないですが、それはヘイノ様もご存知ですよね?」

「ええ」


 ヘイノと考助が、揃って首を傾げていたが、それを聞いていたレネーが口を挟んできた。

「あの・・・・・・。今回の輸送でコウさん達がやって来たことを詳しく王が知ったとなると、指名されるのは特に不思議ではないのでは?」

「というと?」

 レネーの言葉に、周囲の冒険者が揃って首を縦に振っていたが、ヘイノは首を傾げた。

「報告書には簡潔に書いていますが、襲撃者を撃退したのは、ほとんどコウさん達三人です」

「そうそう。俺らはほぼ足止めくらいだったしな」

 クレールの言葉に、冒険者たちが再びうんうんと頷いた。

 本来であれば、何も働いていなかったのかと怒られるような言動だが、考助達の強さを知ってしまった冒険者達にとっては、今更のことである。

 ついでに、そのことで今回の依頼料が減ることは無いとレネーから言質を取ってあるので、隠す意味もない。

 

「という事はあれですか。今回の旅で起こった襲撃のほとんどは、彼ら三人だけで片づけたというわけですか?」

「そういう事になります」

 レネーがあっさりと頷くと、ヘイノは呆然とした表情で考助達を見た。

 目の前にいるレネーだけではなく、冒険者達も同意しているので疑う余地はないのだが、話に聞くだけであり得ないと思ってしまうようなことなのだ。

「レネー。貴方、わざと詳細を書いていなかったですね?」

 呆然とした状態から立ち直ったヘイノが最初に気付いたのが、それだった。

 だが、レネーは肩を竦めてすぐにそれを認めた。

「仕方ありません。どこで情報が漏れるかもわかりませんから。あまり詳しくは書けませんでした。相手も何度も襲撃して来たので、あまり意味は無かったかもしれませんが」

 回数をこなせばそれだけこちら側の情報が取られるという事になる。

 事実、結果的に最後になった襲撃は、それまでにないパターンで的確に攻撃してきていた。

 もっとも、考助達はそれさえもあっさりと退けたのだが。

 

「それはそうですが・・・・・・いえ、今はそれについては止めましょうか。それはとにかく、王が貴方達に目を付けた理由は分かりましたね」

 ヘイノはレネーに何か言いたげな視線を向けたが、それ以上は何も言わずに考助に目を向けて来た。

「あ~。僕らのやったことが、非常識すぎたということですか」

「まあ、簡単に言うと、そういう事ですね」

 どう考えても面倒事にしかならなさそうな事態に、考助はため息を吐いた。

「呼び出しを拒否するのは、勿論駄目ですよね」

 考助の言葉に、ヘイノは目を剥いた。

「拒否するのですか?!」

「・・・・・・出来るものならしたいです」

「残念ながら無理でしょうね」

 疲れたようにそう言った考助に、ヘイノは無情にもそう断言するのであった。

国王の呼び出しが終わってもまだ三人の旅は続きます。

肝心のガゼンランの塔に行ってないし><


ヘイノの紹介は色々抜け落ちているように感じるかもしれませんが、実際はこんなものです。

即座に情報が伝わらない世界では、こんなものだと思って頂けるとよろしいかと思います。

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