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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 タウゼン王国編
486/1358

(8)決着

 考助達が襲撃者の内半数を引き受けることによって、商隊の残りはもう半数が襲ってきていた。

 人数的にはほぼ同数だが、それでも余裕があるわけではない。

「クレール! こいつら、予想以上に強い!」

「ああ、分かっている。何とか持ちこたえろ!」

 仲間からの言葉に、クレールは自分も襲撃者の一人を相手にしつつ、何とかそう答えた。

 盗賊に身を落とすような者達であれば、クレール達でも一対一であれば普通に倒すことが出来た。

 だが、襲ってきている者達は、そんなレベルではなかったのだ。

 かといって軍の訓練を受けているわけでもなさそうな所が、よくわからない。

 必死に残っている商人を守りながら、クレールはそんなことを考えていた。

 襲撃者は、最初からクレール達を殺すことだけを目標にしているようで、荷物には全く目もくれようとしていないのだ。

 ただの盗賊であれば、まずあり得ないような対応だった。

 

 苦戦しているのはクレール達だけではなく他の冒険者達も同じだ。

 だが、その状況は長くは続かなかった。

 リーダー格を処理したコウヒが戦力として加わったのだ。

 何とか持ちこたえていた冒険者側だったが、コウヒが加わったことによって一気に戦況が変化した。

 何しろコウヒが近づくだけで、襲撃者たちが次から次へと倒されていくのだ。

 それだけで、全く相手になっていないことがわかる。

 そういうクレール達冒険者達も、コウヒがどうやって襲撃者たちを倒しているのか全く分かっていなかった。

「・・・・・・実力に差があるとは分かっていたが、これほどとはな」

 呆れを通り越して、感嘆の声でクレールがそう呟いた。

 偶々隣に近づいてきたカルラも同意するように頷いている。

 既にこちら側に来ていた襲撃者は、半数まで減っている。

 たった一人が加わっただけで、この差である。

 コウヒの実力がどれほどなのか、まるで底が見えない。

 

 手のすいたクレール達が、他のメンバーに手を貸そうとしていないのは、コウヒの邪魔にならないようにするためだ。

 本来であれば、襲撃者に襲われている者の所に行って手を貸せばいいのだが、そのこと自体がコウヒの行動の邪魔になることもある。

 それに、コウヒが襲撃者を倒して行くスピードはあっという間なので、そのくらいの時間は持ちこたえられるという事がわかっているのだ。

 ついでに言えば、コウヒはどういう目をしているのか、襲撃者の中でも腕の立つ者から選んで攻撃しているようで、残っている者達も持ちこたえられない程ではない。

「呆れたほどの強さだけど、全く本気を出しているようには見えないねえ」

 クレールと同じようにコウヒの戦闘を見守っていたカルラが、そんなことを言った。

 その視線の先では、コウヒが最後の一人を倒そうとしていた。

 襲撃者の内、数人は冒険者でも倒したが、こちら側に来た襲撃者の半数以上はコウヒが止めを刺したことになる。

「何をどうすれば、あれほどまでに強くなれるか、是非とも聞いてみたいな」

「同感だね。あたしのレベルじゃいつ魔法を発動しているかも分からないよ」

「魔法・・・・・・!? 使っているのか?!」

 目を見開いて自分を見てくるクレールに、カルラは肩を竦めた。

「身体強化に始まって、剣での攻撃を仕掛ける前に何か・・・・・・よくわからないね。それに相手の行動を鈍らせるような魔法をいくつか、と言った所かな」

 カルラがコウヒが使っている魔法のいくつかを列挙するが、クレールには全く分からなかった。

 魔法使いというのは、魔法を使う前に呪文を唱えたり、無詠唱でもちょっとした「間」が出来たりするものだ。

 クレールのような近接戦闘を行う者にとっては、それが格好の的となるのだが、コウヒには全くそれが見当たらない。

「・・・・・・全然わからないぞ?」

「相手も装備で魔法を無効化するような物を持っているみたいだから、完全に効いているわけではないようだけれどね」

 そう言うカルラは、目を細めながらコウヒの戦闘を見つめていた。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 そんなことをしているうちに、コウヒが最後の一人を倒してしまった。

 その見事な手際に、冒険者たちが感嘆の視線を向けている。

 そんな視線を向けられているのに気付いているのかいないのか、コウヒは倒れ込んだ相手には見向きもせずに、先頭馬車の方へと視線を向けた。

 それをみて改めて護衛の冒険者たちは、先頭馬車の存在を思い出した。

 襲われていたのは、自分達だけではないのだ。

 むしろ、そちらの方がメインと言える。

 

 少しはなれた場所にある先頭馬車は、既に襲撃の喧騒とは無縁の状態になっていた。

 既にミツキとナナによって、襲撃者たちは全員が無力化されたのだ。

「・・・・・・無事でしたか」

 すぐ傍に寄って来たコウヒを考助は安心させるように頷いてみせた。

「まあ、僕は結界で守っているだけだったからね」

 ついでに言うと、レネーから攻撃を受けることが無いように、考助自身も結界で守っていたがわざわざそこまで言葉にするつもりはない。

 だが、考助の裏にある意図をきちんと察して、コウヒも頷き返して来た。

「リーダーはあちらに転がっていますが、どうされますか?」

「まあ、取りあえず全員を集めた方が良いだろうね」

 二か所に離れたままというのはあまりよくはない。

 襲撃者の何人かは血を流して死亡している。

 その血の匂いを辿って、モンスターが襲って来る可能性もある。

 出来ることならこの場をすぐにでも離れた方が良いのだ。

 

「襲撃者はどうしますか?」

 二人の会話を呆然としながら聞いてたレネーに、考助が振り返って確認した。

「あ、ああ。取りあえず話が聞けるなら聞いてみたいな」

 レネーは優しく言っているが、要は尋問して聞けることがあれば聞いてみたいという事だ。

 何の目的で襲撃をしてきたのか、レネーにとってはそれが重要なのだ。

「それじゃあ、取りあえず生きている者達は手足を縛って放置しようか。全員を運べるほど余裕があるわけじゃないし」

「分かりました」

「分かったわ」

 考助の言葉に、コウヒとミツキが動き始めるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 結局、コウヒが倒したリーダー格の者達以外で生きている者達は、冒険者たちが縛り上げてその場に放置することになった。

 動けない状態で、モンスターに襲われずにどの程度持つかどうかは不明だが、少なくとも商隊の移動するための時間は稼げるだろう。

 襲撃者のリーダー格の者達は、念入りに縛り上げたうえで別の場所で話を聞くことにした。

 襲撃されたことで予定通り進めなかったが、元々予定よりも先に進んでいたのだ。

 日数的には問題ないようだ。

 今夜のキャンプを張るところを決めて、考助達は襲撃者の話を聞くことにした。

 残念ながら今夜の食事はミツキではなく、別の者が担当することになっている。

 

 レネーが寝泊まりするテントで、襲撃者の尋問が行われることになった。

 ただし、尋問といっても考助は勿論、レネーも専門的な知識があるわけではない。

 そこで、コウヒとミツキが魔法を駆使して話を聞き出すことにした。

 テントの入口では、ナナが見張りに付いていた。

 中には誰も入ってくることがないようにと指示してある。

 ナナがどれくらいの強さを持つ従魔なのか、ちゃんと知っている者は少ないが、強引に突破しようとする者はいないだろう。

 そうして周囲を固めた上で、考助達は襲撃者たちへの尋問を始めるのであった。

さっさと決着をつけてしまいました。

無意味に長引かせても仕方ないですしねw


襲撃者がどういう目的で襲って来たかは、次話になります。

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