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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 タウゼン王国編
483/1358

(5)平穏?

 荷馬車の護衛依頼という事で、首都までの移動は商人の馬車に相乗りすることになった。

 今回のメンバーは、依頼人を含めた商人三人と考助達、更に冒険者十名を加えた大所帯になる。

 それだけの数のメンバーと当然商品になる荷物も積んでいるので、馬車の数も五台になる。

 その内の一台は、冒険者達だけが乗っていて商隊の後ろを走っていた。

 

「いやー。長年行商をやっていますが、これだけ大人数の移動は初めてですよ。ほんとに引き受けてくださってよかったです」

 考助が乗る馬車には、この商隊の代表であるレネーだ。

 考助達が乗る馬車には、さほど多くの商品が積まれているわけではない。

 それでも、最悪この馬車だけでも首都に到着すれば、今回の行商は赤字にならなくて済むと言っていた。

 まさしくメインの馬車を任されたことになる。

 当然ながら監視役のレネーが付いているのだが、それは当たり前のことだと考助も考えていた。

「偶々行く場所が一致していましたからね。それに、馬車を自前で用意しなくてもよかったですし」

「タイミングが合ってよかったですよ」

 そんなことを言って笑っているレネーは、視線を考助に合わせていた。

 最初はコウヒやミツキの顔をチラチラと見ていたりもしたが、パーティの中心が考助であると分かってからは、完全に考助と話すことに集中していた。

 高ランクの冒険者という事で、出来るだけ繋ぎを持っておきたいという、商人らしい願望が見て取れた。

 コウヒやミツキに見とれて本来の仕事を忘れるより、はるかに好感が持てる対応だ。

 

 レネー自身は二十の半ばに差し掛かったばかりの商人だったが、それでもやり手の雰囲気を醸し出している。

 長い移動の間も話題が尽きることは無く、各地を移動していることがうかがい知れた。

 レネーの話は、考助達にとっても貴重な情報源として役に立っていた。

 本や資料からの情報ではなく、生身で体験して来た情報を直に聞くと新しい発見もある物なのだ。

 レネーもまた、考助達がそうした話を聞きたがっていることを察したのか、実に楽しそうに話をしていた。

 商人としてというよりも、生来の性格でそうした話をするのが好きなのだ。


 首都への移動を初めて三日目。

 レネーが依頼の品を運んでいる最中に、モンスターに襲われて何とかその依頼品を死守している話の最中で考助の足元にいたナナがピクリと反応した。

 考助とレネーは、商品が所狭しと積まれた荷車の隙間に収まっていた。

 コウヒとミツキは、馬車の御者をしている。

 ナナの反応に気付いた考助は、右手を上げてレネーの話を遮った。

 既に何度か同じような体験をしたレネーも、すぐに察してピタリと話を止めた。

「ミツキ、気付いている?」

 考助は、今は手綱を握っていないミツキに話しかけた。

「うーん・・・・・・今はまだ反応できるところには居ないわね。流石はナナという所かしら」

 しばらく辺りの様子を窺っていたミツキだったが、首を振って答えを返して来た。

 まだミツキの探索能力では分からない位置にモンスターがいるらしい。

「そうか。それじゃあ、こっちに気付かずに通り過ぎるかもね。一応、警戒はしていて」

「ええ。わかっているわ」

 ナナのモンスターの索敵能力は、普通のモンスターよりもはるかに広い場所まで感知できる。

 そのため、相手のモンスターが此方側に気付かずに通り過ぎることも多々あるのだ。

 

 レネーは、二人のやり取りを疑いもせずに見守っている。

 それは勿論、考助達の実力を信じているというのもあるのだが、レネーにしてみれば会話が嘘だろうと本当だろうと荷物が無事であればそれでいいのだ。

 モンスターが襲ってこないなら、それはそれで構わないのである。

 ここまで来るまでに、一度もモンスターの襲撃が無かった。

 いくら首都までの街道で比較的安全な道とはいえ、こんなことは普通に考えればあり得ないことだ。

 そう判断できるだけのことを考助達はやっている。

 そしてそれは、今回も同じなのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

「コウ、駄目みたいね。こっちに気付いたわ。向かって来るみたい」

 ナナが気づいてから五分程たった頃になって、ミツキが御者台からそう言って来た。

「そうか。うーん。仕方ないな。・・・・・・ナナ、行ってきていいよ」

 考助が足元にいるナナにそう呼び掛けると、ナナは喜び勇んで荷馬車から出て行った。

 馬車は動いている真っ最中なのだが、それを全く感じさせずに軽やかに地面に降り立ち、あっという間に目的の場所へと向かって行った。

 本来であれば、モンスターを追い払うだけであれば、ナナが威圧をすれば大抵のモンスターは去っていく。

 だが、それをやってしまうと今度は荷物を引いている馬がしばらく使い物にならなくなる。

 それだと本末転倒なので、わざわざナナに倒しに行ってもらっているのだ。

 もっとも、ナナは狭い荷馬車にいるのが窮屈なようで、討伐の指示を出すと喜び勇んで出ていくのだが。

 後ろから付いてきている馬車も、ナナが何かをしているのは分かっているのか、飛び降りたナナを邪魔することはしない。

 これまで数度、ナナの出動があったが、おかげで未だにこの商隊がモンスターに襲われるという事はないのであった。

 

 ナナがいなくなった後も馬車は気にせず動き続けている。

 わざわざ止めなくてもナナであればすぐに追いつくためだ。

 今回もナナはしっかりとモンスターを仕留めて戻って来た。

 ・・・・・・しっかりと口に戦利品を咥えて。

 しかも野生の獣であれば気にするはずもない血抜きまでしっかりされていた。

 以前に、血抜きをしないまま管理層へと獲物を持ち込んで女性陣に注意されて、血抜きをすることを覚えたのだ。

 おかげで、荷馬車が血なまぐさいことにならずにすんでいる。

 最初それを見たレネーが、「どこまでかしこいんですか、この従魔は」と呆れた様子になっていた。

 流石に神獣なんですとはいえずに曖昧に笑っただけで済ませたが、レネーも既に考助達がランクが高いだけの冒険者とは考えていないので、スルーしてくれた。

 この旅が快適に過ごせているのは、間違いなくレネーのおかげだろう。

 

「おや。今回の戦利品は、ミトラ鳥ですか。良い物を仕留めましたね」

 ナナが嬉しそうに一羽の鳥に食いついているのを見て、レネーがそんなことを言った。

「有名なんですか?」

「ええ。素早い上に賢い鳥で、中々仕留めるのが難しいんですよ。肉を売ればかなりの高値で売れます。高級品ですね」

「そうなんですか。・・・・・・ナナ。別に取ったりしないから、そんな顔をするな」

 二人の話を聞いて、ふいと顔を向けて来たナナに考助がそう言った。

 それを聞いたレネーも、笑って答えた。

「そうですよ。この商隊を守ってくれている守り神に、そんな仕打ちをしたりはしません」

 笑顔を見せつつ声には真剣みが見られた。

 レネーにとってナナは、まさしく守り神のような存在に思えるのかもしれない。

 

 考助とレネーからそう言われて安心したのか、ナナは再びミトラ鳥に食いつき始めた。

 勢いよく食べているではなくゆっくりと口に含んでいるので、その鳥の歯ごたえを楽しんでいるのだろう。

 そんなナナの様子を眺めつつ、考助とレネーは再び荷馬車の中で話に花を咲かせるのであった。

普通じゃない平穏な旅の様子でしたw

ちなみに、ナナが巨大化すれば荷馬車を引くくらい簡単にこなせます。

考助がやらせませんがw


今回荷馬車を引いているのは馬という事にしていますが、飼いならしたモンスターにひかせることもあります。

まあ、モンスターに引かせたとしても、ナナの威圧に怯まない生物がいるかどうかは不明ですw

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