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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第1章 タウゼン王国編
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(4)移動手段

 サウリの街を十分に堪能した後で次の街へと出発することになったのだが、どんな手段で移動するかが問題になった。

 コー達飛龍を召喚してもいいのだが、それだとあっという間についてしまうので、旅のありがたみ(?)が無くなってしまう。

 かといって、乗合馬車にコウヒとミツキを連れ立って乗り込むと間違いなく余計なトラブルが発生するだろう。

 そこまで考えたところで、結局馬車を購入することにした。

 購入する予算は問題ない。

 ただ、旅を終えた後にどうするかが問題だったのだ。

 今回の旅の間は使えるにしても塔に帰った時には、全く使えないのだ。

 そんな事のためにわざわざ用意するのもどうかという余計なことを考えたのである。

 そもそも今の考助の持っている資産からすれば、馬車の一つや二つ持っていてもおかしくはないのだ。

 変な所で庶民的な感覚が抜けていない考助なのであった。

 

 考助のちょっとした心の葛藤は置いておくことにして、一行は馬車を取り扱っている工芸ギルドを訪れていた。

 サウリの街は様々な場所からの船がやってくる港町だけあって、船に乗ってやって来た行商人用の馬車も多く取り扱っていた。

 サウリの街のような港町や首都でもなければ、基本的に馬車は受注生産になるのだが、幸いにしてサウリの街ではいくつかの馬車が並べられている。

 考助達が馬車を扱っている工芸ギルドを訪れるとその中から適当なのを見繕う話になった。

 そんなこんなで、あれよあれよという間に商人のトークに巻き込まれ、いよいよ最終決定の段階まで来た頃になって、考助達を尋ねて来た者がいた。


 誰かと言えば、考助達の依頼を受け付けた冒険者ギルドの受付嬢だ。

「よ、よかった。間に合いましたね」

 慌てた様子の受付嬢に、考助は目を丸くした。

「どうしました?」

 驚いている考助に、自分の今の姿を見てハッとなった受付嬢は、その場で軽く身繕いをした。

 その間に、ここまで走って来て乱れた息を整えるのが分かった。

「・・・・・・失礼しました。実は、コウ様達に緊急の依頼が入りました。受けるか受けないかは勿論自由ですが、出来れば受けていただければと思い、ここまで来ました」

 緊急だというのは、その受付嬢の様子を見ればわかる。


 ここまでしてもらったのに門前払いをするのも気が引けたので、一応依頼の内容を確認することにした。

「・・・・・・依頼の内容というのは?」

「この国の首都までの護衛依頼です」

 その依頼内容に、考助は首を傾げた。

 わざわざ受付嬢が、特定の冒険者を追いかけてまで依頼するような内容に思えなかったのだ。

 それこそ護衛依頼は、様々な商品が集まるこの港町ではいくらでもあるような依頼なのだ。

 その考助の思いをくみ取って、受付嬢が依頼内容を話し始めた。

「普通の護衛依頼であれば、そこまで高くはないのですが、今回の依頼はCランク以上で限定されています」

「それはまた珍しいですね」

 通常の護衛依頼は、Dランク以上で距離や周辺の治安によってはEランクさえ混ざる事さえある。

 そのためCランク以上というのは、護衛依頼にしては破格の内容と言える。

「はい。実は運ぶ荷物が問題でして、出来る限り早く首都に運びたいそうです。そのため出発も今日を予定しています」

「それはまた急ですね」

 そんな依頼があれば、昨日の時点で依頼を確認した時に気付いていただろう。

 だが、間違いなくそんな依頼は張り出されていなかった。

 ということは、考助達が去った後に出た依頼なのか、もしくは今日出された依頼という事になる。

 話を聞く限りでは、よほど急いでいることがわかる内容だった。

 

「なるほど。例えモンスターが出ても移動速度に影響が出にくいように高ランクの冒険者を雇いたいという事ですか」

「はい。そうなります。これが依頼票になります」

 話が早い考助に、受付嬢もそれ以上の説明をせずに、すぐに依頼票を出して来た。

 受付嬢を疑うわけではないが、一応依頼票の内容を見て今聞いた内容と相違がないことを確認した。

「確かに、正式な依頼なようですね」

 ちゃんとギルドが正式に出している依頼であることを確認した考助は、コウヒにその依頼を手渡した。

 二人にもきちんと確認してもらうためだ。

 

 二人が確認している間に、考助がいくつか質問を行う。

「他にも冒険者がいるようですが、それは?」

「護衛を纏める役としてCランク以上の冒険者が条件になっているのですが、それだけではなく何人かの冒険者も加わっています」

「既に募集は終わっているのですか?」

「ええ。というのも、他の護衛依頼より条件が良いので、其方の募集はすぐに決まりました」

「そうですか」

 他の冒険者がいるとなると、主にコウヒとミツキのおかげで面倒が起りそうな気がして、考助はウーンと首を捻った。

 

「私達がまとめ役になるならいいんじゃないかしら?」

 悩む考助に、なぜかミツキが依頼を受けることを促して来た。

 見るとコウヒも同意するように頷いている。

「・・・・・・主に恨まれるのは、僕になるんだけれど?」

 ジト目で見る考助に対して、二人はどこ吹く風と言った感じで立っている。

 どこまでも考助に忠実な二人だが、こうした態度をとることもあるので堅苦しい関係ではなく、今のような考助にとって居心地のいい場所が出来ているのだ。

 それがわかっているので、考助もそれ以上は突っ込むことはしなかった。

「はあ。まあ、いいか。・・・・・・それじゃあ、受けることにします」

「ありがとうございます! ・・・・・・あっ。そう言えば、急な指名依頼という扱いになるので、受けていただいただけで査定にも影響があります」

「・・・・・・それって、依頼を出す時に言った方が良かったんじゃないの?」

 考助の突込みに、その受付嬢はニコリと笑って返して来た。

 それを見た考助は、最初に抱いた出来る女性というイメージが崩れるのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 今回は縁が無かったという事で、工芸ギルドを後にした考助達はすぐに冒険者ギルドへと向かった。

 依頼を正式に受け付けるのと、既に依頼人が待っている為だ。

 冒険者ギルド側は依頼が急でCランク以上でというそこそこ厳しい指定があるため、見つからない可能性も既に伝えてあるようだった。

 その依頼を受けて、たまたま受付嬢が考助達のことを思い出したために、一縷の望みをかけてわざわざ探しに来たというわけだった。

 そこまでするのだから、よほどいいマージンが依頼主から出ているのだろう。

 その辺は、考助達冒険者が感知すべきことではないので、気付いてはいても敢えて突っ込んだりはしなかった。

 

 冒険者ギルドに着いた受付嬢は、すぐに他の受付嬢と笑みを交わし合っていた。

 何やら「よくやった」とか「これでボーナスが」とか聞こえて来たが、全て気のせいだと聞き流すことにする。

 考助以上に耳が良いコウヒやミツキは、当然のように聞こえているだろう。

 もっとも、その二人はいつもの表情から全く変化が無かった。

 二人も特に気にしてはいないのだ。

 

「それで、依頼主はどちらですか?」

 喜び合う受付嬢に、そろそろいいだろうと考助は話しかけた。

「あ、はい。こちらになります」

 いまいち真面目な表情になり切れていない受付嬢が、考助達を奥の部屋へと案内する。

 そして案内された部屋には、依頼主と同行することになる冒険者たちが既に集まっていた。

 

 こうして考助達の首都までの移動は、護衛依頼をこなしつつ馬車で移動することに決まったのであった。

どんなメンバーがいるのかは、次話になります。


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