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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 クラウンの活動

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(8)更なる発展へ(その5)

「それで、次が最後の報告になるのだけれど・・・・・・これが成功すれば、間違いなく世界は変わるわ」
 そう前置きをしたサラーサに、全員が緊張で身を固めた。
 ルカの件は別として、他の二つの報告はクラウンに大幅な変化が訪れる可能性がある内容だったのだ。
 サラーサの前置きからすると、とんでもない変化になるという事になる。
 どんな内容なのか、出席者達が固唾を飲んでサラーサの次の言葉を待っている。
「考助様が以前から研究開発していた遠距離通信だけれど、ある程度の理論が完成したそうよ」
 サラーサの言葉に、出席者の雰囲気が微妙な物になった。
「完成したのは、理論ですか?」
 シュミットが首を傾げつつ、サラーサに聞いた。
「ええ。そうよ」
 今まで考助は色々な魔道具を開発してきたが、全て完成した物を披露して来ていた。
 だが、今回のサラーサの話は、あくまでも理論の話なのだ。
 商品を売る商人部門の者達が首を傾げるのも当然だろう。
「現物があるのならともかくとして、理論だけでは判断のしようが・・・・・・」
 ない、と続けようとしたシュミットを、サラーサが右手で遮った。
「考助様らしくなく現物がないのには、ちゃんとした理由があるのよ」
 そう前置きをしてサラーサは、考助が考えた遠距離通信の新しい理論を話し始めた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そもそも魔道具全般に言えることなのだが、基本的に値段が高くなるのは魔力や聖力の問題がある。
 魔力や聖力を意識して使える者なら大丈夫なのだが、それらの力を意識的に使えない者も存在している。
 意識的に使えるようになれば、魔法使いと呼ばれるような存在になるので、ほとんどの者は意識して使っているというわけではない。
 そうなると一番に発生する問題が、どうやって道具を動かすための力を確保するのか、ということになる。
 最初から魔力や聖力の扱いになれている者であれば問題ないのだが、そう言うわけにはいかない。
 そのために、魔道具に関しては、魔力をもともと込めてある使い捨ての物か、あるいは魔力を補充して使えるタイプの物に分けられる。
 後者に関しては、魔力の扱いに長けた魔法使いを雇わないと維持管理するのが難しいので、維持する費用がバカ高くなる。
 それに対して、前者は高度な技術を用いれば、当然それに使うための魔力が非常に多くなるのだ。
 その魔力を確保するためには、バカ高い素材が必要になる。
 そのためにこの世の中に普通に出回っている魔道具のほとんどは、さほど魔力を使わなくても済む簡単な道具しかないのである。

 それに一石を投じたのが、考助が開発したリサイクル可能な充電タイプの魔力石だ。
 この魔力石の登場により、そこそこの値段である程度の魔力を確保できるようにはなったのだが、それでも限度はある。
  通信具に使用するために必要になる魔力は、とてもではないがこの充電タイプの魔力石ではとても追いつかない。
 もし、自由自在に好きな場所に届く通信具を作ろうとすると、とても人の手では持ちあげられない程の大きさが必要になる。
 一部屋使って設置するタイプの通信具を作ることはできるが、それをするには小国の国家予算並みの維持管理費がかかる。
 そんな無駄な経費を挙げられる組織など存在するはずもなく、遠距離通信具の開発は夢として語られていた。

 それは、考助にとっても同じである。
 考助は神力が使えるという利点があり、イスナーニが開発したように、神力を使った通信具はクラウンカードにも組み込まれている。
 だが、例え神力といえど、魔力と同じような運命から逃れられることはできなかった。
 必要な神力を確保するには、どうしても希少な素材が必要になるか、あるいは高額な維持費がかかってしまう代物しかできなかったのだ。
 どうにかして、安価な材料で必要な魔力や神力を確保できないか、色々と試行錯誤したのだが、どうしてもできなかった。
 そもそも魔力を保持している素材は、希少なモンスターの素材である程多いのだから、当然と言えば当然だろう。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ここまでが、シュミットが考助から聞いていた話だった。
 それ以降、考助が魔力を確保するために、安価な材料で作ることに成功したとは聞いたことが無い。
 そんなシュミットの表情を見抜いたのか、サラーサが首を振って考助が考えた新しい「理論」を話し始めた。
「今回の理論は、恐らくシュミットが考えている方法とは、全く異なる方法よ」
「というと?」
「今回の話は、あくまでも遠距離の通話をするための魔力を確保する方法で、通信具そのものではないのよ」
 益々意味が分からなくなり、シュミットも含めたほとんどの者が首を傾げた。

 そもそも考助がシュミットに直接言うのではなく、サラーサを間に挟んだのにはちゃんとしたわけがある。
 もし今回考助が考えた理論を実際に行おうとすると、とんでもない莫大な予算が必要になる。
 いくらシュミットが商人部門の部門長とはいえ、今までの魔道具のように個人的に承認が出来るような代物ではないのだ。
 だからこそ、統括であるサラーサを通して商人部門全体の同意を得ようとしたのである。
 その前置きだけで、今回の話が今までとは全く違った性質であることは分かったのだろう。
 集まった者達の顔が引き締まった。
 わざわざ統括を通さなければならない程の予算とはいかほどなのかという、怯えさえ見て取れる。
 そして、当たってほしくないその予想は間違いなく正しかった。

 考助が考えた理論というのは、これまでの電池といった小型の物ではない。
 早い話が、魔力の発電所のような物を作ってしまおうという物だったのだ。
 ただし、発電所といってもその場で魔力を発生させたりするようなものではない。
 街全体に魔力の通り道を作って、街自体に魔法陣を敷いてしまおうという物だった。
 簡単に言えば、普通は使えない自然に漂っている魔力を、街全体に魔法陣を敷くことにより使える力として変換するのだ。
 街の中に規則的に施設を作り、その施設同士を魔力でつなぐと街中に巨大な魔法陣が作られる。
 その魔法陣を維持するための魔力の大部分は自然にある魔力を使うので、都度大量の素材を確保する必要がない。
 必要な魔力は、施設を動かすための魔力くらいで、中級クラスの魔法使いで十分賄える量なのだ。
 勿論施設を作って魔力を発生させるだけでは無駄にしかならない。
 ただし、その発生した魔力を、それこそ遠距離通信のために使ったり、町のインフラのために使ったりすることが出来るというわけだ。

 サラーサがわかりやすく説明した理論を聞いた幹部たちは、ゴクリを喉を鳴らした。
 その中で、もっとも考助の開発する魔道具になれているシュミットが一番早く立ち直った。
「要するに、初期投資はかなりかかるが、これまで作れなかった魔道具が作れる可能性があると?」
 流石は商人部門のトップに立っているシュミットだった。
 考助が考えた理論の本質をついてきた。
 元々は、大量に魔力を使う通信具を作るために考えた理論だったが、何も通信具だけのために使う必要はないのだ。
 それこそ町中に明かりをつけるための魔道具のために使ったり、他にも利用方法はいくらでも見出すことが出来るだろう。
「簡単に言えば、そういう事ね」
 サラーサの答えに、何人かが卒倒しそうな表情になった。
 冒険者にとっては、クラウンカードが革命的な道具だとすれば、今回の考助の理論は商人や工芸部門にとっての革命的な物になる。
 まさしくサラーサが冒頭に言った「世界を変える」というのは、比喩でもなんでもないのだ。

「物が物だけに、クラウンではなく、ラゼクアマミヤが関わってくるでしょう」
 そのサラーサの言葉に、何とか理性(?)を保っている者達が頷いている。
 何しろ街そのものを巨大な魔法陣として見立てる必要があるのだ。
 都市を管理している国家が関わってくるのは当然のことと言える。
「その辺りがどうなるかは、今後の話次第ですが、今はまずこういう事があるという事を認識していてください。今後は具体的にどう計画していくのかの話し合いがもたれるはずです」
 サラーサは最後にそう言って締めくくった。
 最後の話は、あくまで実際に計画を始める前段階としての共通認識を持ってもらうために報告したのだ。
 何しろかかる経費が膨大になるため、隠して行う事は不可能だ。
 それなら最初から話した方が良いと判断したのである。
 この話は、商人部門だけではなく、クラウンの全ての部門、そしてラゼクアマミヤの高官たちにも話がされている。

 そして、まさしくこの考助が思いついた理論は、今後のラゼクアマミヤやクラウンにとって、大きな転換期を迎える物になるのであった。
というわけで、ついに考えてしまいました発電所(もどき)。
早い話が、地脈の力を使って魔力を確保してしまおうということです。

これ等の施設で確保された魔力は、使う量ごとに通信用とか家庭魔力用とかに分けられる予定です。
そうなると、当然クラウンという一組織だけではなく、国家が関与したほうが良いだろうという事でラゼクアマミヤにも話がふられています。
此方の世界で言う所の、電波の使用範囲を国が決めて各業者に割り振っているのと似た感じでしょうか?w

そんな感じでざっくりと決めてますが、そうした細かい話は今後書く予定はありません。
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