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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 クラウンの活動

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(2)支部の買取カウンター

 ラウールは、アイリカ王国にあるクラウン支部を訪れていた。
 目の前には支部長であるタマーラが座っている。
 もともとアイリカ王国のクラウン支部は、冒険者部門を開くために置かれていた。
 ところが、あるとき冒険者達が活動するうえで問題があることが発覚した。
 そのためタマーラが各所に働きかけて、支部内に素材の買取カウンターを設けることになったのである。
 素材の買取カウンターを設置するとなると、当然ラウールの出番となる。
 タマーラが王国に対して色々と便宜を図ってくれてはいたが、商売に関わることなので様々な問題が発生した。
 商売において、クラウンの勢力が拡大することを危険視する勢力が内外に多数いたために、支部に設けられているのは買取カウンターだけとなっている。
 冒険者から直接買い取って、それを市場に流されると混乱するというのがその理由になっている。
 そんな事なら自分達でもカウンターを設ければいいじゃないか、という意見はクラウン内にもあるのだが、わざわざ争いの火種を作ることは無いという事で、今の形に落ち着いているのだ。
 今までアイリカ王国では、欲しい素材だけを依頼で出して入手するという形態で仕入れが行われてきた。
 それを直接冒険者から買取するようになると、資金力のある大手だけが生き残ってしまう事になる。
 更には、冒険者の活動を高めるために設けた買取カウンターなのに、本来の依頼が激減してしまうという問題も出て来た。
 町や村が出している討伐依頼は、あくまで周辺モンスターを減らす意味で出している依頼なので影響はない。
 だが、工芸ギルドや商人ギルドが出している素材の買取依頼には、もろに影響することになるのだ。
 何しろ、買取カウンターで買い取っている値段は、依頼にかかる金額よりも安くなっている。
 高い依頼を出すよりも、クラウンを相手にして安く買い取ったほうがお得なのだ。
 現に、買取カウンターが出来てから一時期は、素材回収の依頼が減ったりもしていた。
 今は以前の八割程度まで戻っているようだったが、それでも完全回復とはいかない状況なのだ。
 そうした諸々の状況を確認・調整してもらうために、商売に関しては不得手のタマーラがクラウン本部に応援を頼んだ、というのが今回の発端である。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「しかし、まさかラウール殿が来られるとは思いませんでした」
 最初の挨拶を交わした後、タマーラがそんな事を言って来た。
 本部に応援を頼んだ時には、もう少し下の役職の者が来ると思っていたのだ。
 だが、実際に来たのは、クラウンに関わる素材の買取を統括しているラウールだった。
 タマーラが意外に思うのもある意味で当然だろう。
 そんなタマーラに対して、ラウールは笑って答えた。
「ハハハ。本来であれば、部下の誰かを越させればいいんでしょうがね。どうにも行商だったころの癖が抜けないんですよ」
 行商だったころは、ルートの開拓から商品の仕入れまで全て自分一人で行っていた。
 本来であれば、組織である程度の役職があれば、部下を動かして解決するのが当然なのだが、その頃の癖がまだ抜けていないラウールだった。
 言うなれば、社長自らが動いて解決しているようなものなので、余りいい状態であるとは言えない。

 だが、今回ラウールが自ら動いたことには、きちんとしたわけがある。
「それに、私が自分の目で見るのもあるのですが、今回はここで部下の一人でも育てようと思いましてね」
「ほう?」
 ラウールの言葉に、タマーラが興味を示したように眉を上げた。
「何かあるたびに私が動くわけにもいきませんから、ある程度の事が出来る者を育てようと思います」
 今現在、支部の買取には素材の目利きが出来る者達が何人か常駐している。
 その中からか、もしくは全く別の人材がいれば、その者をこの支部の責任者として任せてしまおうと言うわけだ。
 もっとも、それは簡単なことではない。
 何しろ、場合によっては国を相手にしなければならない場合もあるのだ。
 流石に国を相手にして即決できる権限を持つ者をこの支部に置くことは出来ない。
 そこまでこの支部が成長していないという事もあるのだが、一つ間違えばクラウンの運命を決めてしまう事になる交渉を買取カウンターの責任者に任せるには責任が重すぎるのだ。
 そもそもそんな権限は、ラウールにすらない。
 ラウールからすれば、そんな権限はいらないというのが本音だった。
「・・・・・・なるほど。私は商売に関しては疎いですからな、そうしていただけると助かる」
「タマーラ殿ほどの方に商売までやられてしまうと、私らの立つ瀬が無くなりますよ」
 ラウールは、ハハハと笑った。

 それに対して苦笑を返したタマーラは、ふと表情を真顔に戻した。
「それで? 買取の方はどうなっているんだ?」
「はっきり言えば、順調とは言えないですね。確かに、この大陸で買取制度が根付かなかった理由がわかります」
 そう言いながらラウールは、視線を資料に落としている。
 その資料には、これまで買取カウンターに持ち込まれた素材と数が書かれていた。
 その中身は、非常に偏っていると言わざるを得ない。
 それは要するに、冒険者たちが遭遇するモンスターが偏っているためとも言える。
 もしこの買取制度を、巨大な組織になっているクラウンが行うのではなく、一都市の公的ギルドが行おうとすると無理が出てくる数値だった。

「成程な。買取制度が根付かなかったのにも理由があるというわけか」
 タマーラの言葉にうなずきつつ、更にラウールは言葉を続けた。
「もう一つ言うと、冒険者たちにも問題がありそうですね」
「というと?」
「制度が始まったばかりで慣れていないせいもあるのでしょうが、単に出会ったモンスターだけを討伐している印象があります」
 それを聞いたタマーラが首を傾げた。
「それが良くないのか?」
 タマーラにしてみれば、より多く儲けを出すために買取カウンターを設けているつもりでいた。
 当然、依頼の最中に出会ったモンスターの素材を買い取ればいいという認識だったのだ。

 それに対してラウールは首を振った。
「それだと、何れは素材の買取が偏って値段が下がって行き、誰も素材を持ち込まなくなってしまいます」
 買取カウンターがあると言っても、無限にいつまでも同じ値段で買取続けるというわけではない。
 簡単に言えば、子供でも倒せるようなスライムを持ち込んでも、二束三文にしかならないのだ。
 流通量によって値段が変わるのは、どの商品でも同じなのである。
「むっ・・・・・・」
 そのことがわかったのか、タマーラは顔をしかめた。
 冒険者のレベルを上げるのと数を増やすために買取カウンターを設けたのに、そうなってしまうと意味が無くなってしまうのだ。
「だからこそ、依頼のついでではなく、冒険者自身が積極的に素材を狩りに行くように仕向けないといけないのですよ」
「・・・・・・というと?」
「冒険者のレベルに合わせて、今はこの素材が高いとか、このくらいの値段で買い取っているとか、定期的に知らせるんですよ。まあ、そういったことは、これから育てる部下にも仕込みます」
「ははあ、なるほど。その辺は、ラウール殿に任せた方がいいな」
 タマーラは、感心しきりと言った感じで頷いている。
「普通であれば、こういったこともカウンターに立つ者には仕込むんですが、今までは立ち上げでバタバタしてましたから、そろそろそういう教育を始めてもいいでしょう」
「うむ。お任せする。というか、私にもぜひ教えていただきたいな」
「ハハハ。タマーラ殿であれば、一つ一つの商品に関しては覚える必要はないでしょう。今言ったことを把握していればいいと思いますよ」
 やる気を見せるタマーラに、ラウールは釘をさすようにそう言うのであった。
というわけで、アイリカ王国の現状報告でした。
ここからまた一歩一歩動いていきます。
もどかしいと思うかもしれませんが、一気にドバっと変えると、ただの革命になってしまいますからね。
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