(7)色々な違い
百個の討伐証明部位を集めるのに、実質一週間の期間がかかった。
それでも一日十四、五個の計算になる。
リンクスの討伐になれていないとこうは行かないだろう。
何より斥候役がしっかりと役目をはたして、次々にリンクスの群れを見つけて来たからこそその数をこなせたのだ。
もっとも斥候役に言わせれば、アマミヤの塔の中ではこうも簡単には見つからないと言っていた。
百という討伐依頼が出ていることから分かる通り、やはりこの辺りでリンクスの数が多くなっていたようである。
実際、狩りを進めて後半になるにつれて群れが見つかる頻度が下がって行っていた。
ロマン達が数日かけて狩ったおかげで、ある程度抑えられたという事だ。
拠点の村で一日休養日を作り、その翌日には王都へと戻るのであった。
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「あら? 中間報告ですか?」
初日にお世話になった受付嬢が、支部に入って来たロマン達を見つけてそう声を掛けて来た。
ちょうどすいている時間を使って、依頼の張替えを行っていたのだ。
その受付嬢は、ロマン達が何の依頼を受けたのかをしっかりと把握していた。
何しろ、処理をしたのが自分自身で、ロマン達が選んでくれたのが支部でもどう処理するか問題に上がりかけていた依頼だったからだ。
彼らがその依頼を選んだのを知って、内心で驚いていたのだ。
その彼女は、次のロマンの言葉にさらに驚くことになる。
「いや。依頼分の討伐が終わった結果報告だ」
ロマンがそう言った後、しばらくその受付嬢は営業スマイルのまま固まっていた。
「え?! えーっ・・・・・・!? もう終わられたのですか?」
その驚き様に、逆にロマンが若干引いてしまった。
ついでに周りにいた仲間たちも少しだけ引いている。
「そんなに驚くことか?」
ロマンにしてみれば、大したことはしていないつもりなのだ。
実際、今回の成果を塔にいる他の冒険者達に話しても、リンクスの出現が多くて驚くことはあっても、討伐自体には驚かないだろう。
塔の中で活動している冒険者にとっては、ごく当たり前のレベルなのだ。
「そんなに驚くのかって・・・・・・」
受付嬢は、そう呟いた後自分の言葉で周囲の視線を集めていることに気付き、すぐに声のトーンを落とした。
「と、とにかく受付に来てください。すぐに確認いたしますから」
「あ、ああ」
受付嬢の反応から対応をまずったかと心の中で舌打ちしたくなったロマンだったが、こればかりはどうしようもない。
何しろロマン達がこの支部で討伐を行うのは初めてのことなのだ。
実際のランクが違っているという話は聞いていたが、ようやく実感を伴ったと言える。
迂闊と言えば迂闊だったが、これはアリサも同じことが言える。
現に、アリサもパーティの後ろで、まずったと思っていた。
勿論、表情には出していないのだが。
一方で、そんなロマン達やアリサを見て、リクは内心で首を傾げていた。
彼らが何かを問題にしているのは分かるのだが、それが何か思い当たっていないのである。
もっとも、そんな疑問を顔には出していない所がリクを非凡な子供だと思わせる所なのである。
そんな一同の内心を余所に、受付嬢はロマンが出した討伐部位を一つ一つチェックしていた。
とはいえ、数が数なので今すぐにチェックできるわけではない。
適当に抜粋して数個調べて、それらがきちんとした物であることを確認してからロマンへと視線を向けた。
「どれも本物のようですね。・・・・・・申し訳ありませんが、全てをチェックするのにはお時間を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、それは構わない」
流石にロマンもすぐに結果が出るとは考えてはいなかった。
場合によっては翌日になることもあるのだが、ここではそんなことは無いようだ。
「ああ、それと途中で遭遇したモンスターの依頼を今受けても大丈夫なのか?」
「途中で、ですか・・・・・・? 勿論、依頼品が揃っていれば大丈夫ですが・・・・・・まさか、持っていらっしゃるのですか?」
受付嬢の表情に、こんどこそロマンは驚きの表情を隠せなかった。
「まさかと思うが、ここでは受けた依頼の分しか持ってこないのか?」
今回もそうだが、依頼の討伐をしている最中に他のモンスターと遭遇することはごく普通にあることだ。
その中に、依頼に上がっている物があれば持ち帰ってくるのは当然のことなのだ。
少なくとも塔で、というよりもセントラル大陸内で活動している冒険者たちはそうしている。
だからこそ今回も事前に貼られている依頼をチェックしていたのだ。
「は、はい。何しろ余計な物を持って帰れば、それだけ荷物になりますから・・・・・・」
理由になっていない、とロマンは思ったがそれを言葉にするのは止めた。
場合によっては、聞き耳を立てている冒険者たちを刺激する可能性がある。
「そうか。まあ、今回は村で馬車が借りられたからな。その分多くの荷物を持ち帰られたんだ」
内心で頭を抱えつつ、そう無難に返事をしておいた。
「そうでしたか」
受付嬢もそれに気づきつつ、営業スマイルを返して来た。
既に彼女もロマン達が、ここの冒険者達とは違った行動をとっていることが理解できて来たのだ。
「それじゃあ、俺たちは依頼を探してくる」
「かしこまりました」
自分が接して来た当たり前の冒険者とは違う行動をとるロマンに何かを感じたのか、受付嬢はそう言って丁寧に頭を下げるのであった。
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「適当な依頼は見つけたか?」
ロマン達が、持ち帰った討伐部位と合う依頼を探していると、何故だか支部長がわざわざ話しかけて来た。
その様子に周囲の冒険者たちがさらに騒めいた。
支部長がわざわざ一冒険者に話しかけることなど滅多にないのだ。
「ええ。いくつか見つけました」
そんな周囲の様子に気づきつつ、ロマンはそれを無視してタマーラに返事を返した。
「ほう。どれだ?」
「いまあるのは、これとこれ、それにこれくらいでしょうか」
他にも討伐部位は持ってきているのだが、残念ながらそれらの依頼は貼られていなかった。
既に誰かが依頼を受けたのか、期限が来て取り下げられたのだろう。
そういう事はよくあることなので、ロマン達も気にしていない。
依頼が早い者勝ちなのは、冒険者たちの暗黙の了解なのだ。
「・・・・・・ふむ」
ロマンが差した依頼を見つけたタマーラは、おもむろにそれらを剥がした。
「今、これらの素材も持っているのだろう? 別室で処理することにしよう」
「わかりました」
何か含みを感じたロマンだったが、何も言わずに頷いた。
処理する素材が多い場合は、別室で対応することも良くあることなのだ。
ただし、セントラル大陸内では、という注釈がつきそうだ。
どうにもこの支部では、依頼で受けた討伐部位以外を持ち帰ることなどほとんどしていないようだった。
これが支部だけなのか、それともこの国全体でそうなのか、ロマン達には判断が付かない。
ここは素直に支部長の言う通りにした方が良いだろうとロマンは考えたのだ。
ロマンは、チラリとアリサを見てみたが、既に呆れたような表情が隠せなくなっている。
流石のアリサもこの状況は予想できなかったらしい。
一体どうなっているんだ、とロマンもすぐにでも問いかけたいが、その問いに答えてくれそうな相手は、さっさと先を歩いて行ってしまっていた。
こうしてロマン達は、タマーラに連行されるが如く、その後をついて行くのであった。
違いにしてはひどすぎますね。
何故このような状態になっているのか、は次話で語りたいと思います。




