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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第4章 塔の外で色々やろう
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(13) 交神具

 シルヴィアから借りた法具から、力の波長を感じ取る。

 感じ取る力は、そのペンダントがもともと持っているものではなく、シルヴィアが祈りをささげ続けてきたからこそ、存在するはずの力である。

 これは考助が、クラウンカードを作る装置を作る際に、必要だった技術だ。

 道具が持つ力を感じ取るのは、魔道具や聖道具を作る職人であれば、ある程度の者ができるようになる。

 ただ、それはあくまでも感じ取れる、といったものだ。

 魔道具や聖道具を作る際には、そこからさらに魔力や聖力を使って様々な仕掛けを作る。

 ただし、これから考助が作ろうとしているのは、魔力や聖力を使ったものではない。

 神力を使って、[常春の庭]のエリスとの"道"をつなごうとしている。

 これまでは、そのための"道"が無かったため作ることが出来なかった。

 だが、先程考助が[常春の庭]と繋がることができたため、現在のこの場所ならその条件はクリアしている。

 とはいえ、その"道"もいつまでも繋がっているわけではないので、考助は先にその神具の作成を急いだ。

 

 今度は短時間で立ち上がった考助は、右手に法具を載せてシルヴィアの方へ差し出した。

「シルヴィア、手を乗せて」

「え? は、はい。・・・これで、いいのかしら?」

 言われるがままにシルヴィアは、考助の右手に自身の右手を重ね合わせた。

 二人の手の間に挟まれている法具に、シルヴィア自身の神力が通るように調整する。

 そしてそのまま法具を中継地点になるように、シルヴィアの神力が、先ほど作った"道"を通るようにした。

 一度道をつないだせいなのか、今回はさほど時間はかからなかった。

「・・・・・・あっ!?」

 いきなり神力を持っていかれたシルヴィアが、一瞬よろめいた。

 それを予想していた考助が、すぐに彼女を支えた。

「大丈夫?」

「だだだ、大丈夫ですわ!」

 突然考助に支えられたシルヴィアが、赤くなる。

「? そう?」

 赤くなっているシルヴィアに首を傾げながら、考助が続けた。

「じゃあ、はじめのうちは目をつぶっていた方がわかりやすいから、目を閉じて?」

「は、はい。わかりましたわ」

 考助の言われるままに素直に目を閉じたシルヴィアは、そのまま考助の言葉に導かれるように"道"をたどっていくことになる。

 そしてその"道"の先には、先程の考助の時と同じように、エリスがいた。

 

『これで繋がったかな?』

『ええ。きちんと繋がっています』

『よかった。・・・シルヴィアも聞こえてる?』

『・・・・・・』

『シルヴィア?』

『は、はい!? き、聞こえておりますわ!』

『そんなに驚かなくても』

『むむむ、無理ですわ! なぜ貴方は、そんなに気軽に神と話せるんですの!?』

『いや、なぜと言われても・・・慣れ?』

『そんなことよりも、すぐに本題に入ったほうがよろしいのでは?』

『あっと、そうだった。シルヴィア、とりあえずこれで、いつでもエリスと繋がることが出来るようになったから』

『当然、私が忙しいときは応えられない時もありますが、基本的には応えます』

『そ・・・そうなんですの?』

『ええ。もちろん、質問などは、答えられるものと答えられないものがありますよ?』

『そりゃそうだ。というか、答えられないものの方が多いんじゃない?』

『貴方と違って、彼女は、遠慮というものを知っていますから大丈夫だと思いますよ?』

『うわ、ひどい』

『事実です。あと、その神具は、もちろん塔でも使えますから』

『え? そうなの?』

『作った本人が、何を言っているんですか』

『いやてっきり、外だけかと思った』

『それだと、神具として意味をなさないでしょう』

『はー。そうなんだ。なるほどねー』

『全く・・・。さて、これ以上は彼女が持ちませんからそろそろ接続を切ったほうがいいでしょう』

『そうだね。了解』


 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 エリスとの会話を終えた考助は、頭を抱えているシルヴィアを見つけて首を傾げた。

「どうかした? 力使いすぎたとか?」

「そうではありませんわ! 切れたのが唐突すぎて、挨拶もできませんでしたわ、どうしましょう!?」

 シルヴィアが、軽くパニックになっていた。

 シルヴィアにとっては、エリサミール神(エリス)は信仰の対象である。あのような唐突な別れ方は、自身の中ではあり得ないものなのだろう。

「いや、大丈夫だから。とりあえず、落ち着いて」

「・・・・・・本当ですの?」

 恐る恐るといった感じで、シルヴィアが聞いてくる。

「本当だって。向こうだってちゃんと事情は分かっているから」

「・・・・・・わかりましたわ」

 考助の慰め(?)によって、無理やり納得することにしたシルヴィアであった。

「それで、その法具の使い方は、わかった?」

「・・・何となくですが、わかりましたわ」

「それはよかった。こればっかりは、感覚でしか教えられないから。あとは何回も使って覚えるしかないよ」

「わかりましたわ」

 なにやら気合を入れて頷くシルヴィアに、考助は苦笑を返した。

「いや、そこまで気合入れなくても」

「そうはいきませんわ。せっかく作ってもらった神具ですのに、私が使いこなせなければ、意味がありませんわ」

「あー、うん。まあ、ほどほどに、ね」

 諌めるのを諦めた考助は、そう言って頷くしかなかった。

 

「さて、そろそろ紹介してもらってもいいかしら、シルヴィア?」

 考助とシルヴィアのやり取りに、傍で様子を見ていた神殿長が口を挟んできた。

 その言葉に、シルヴィアが思い出したように、慌てて神殿長の方を見る。

「申し訳ありませんでしたわ、神殿長。こちらが今、私がお世話になっているコウスケさんとコウヒさんですわ」

「初めまして、考助と申します」

「初めまして、コウヒです」

「そして、コウスケさん、コウヒさん。こちらが、この神殿の神殿長であるローレル・アルファイド様ですわ」

「よろしくね。これでも一応、神殿長などやらせてもらっています」

 考助と神殿長ローレルが、お互いに頭を下げる。

「さて、お手数ですが、色々聞きたいことがありますので、場所を変えて話しませんか? お茶ぐらいはご用意できますよ?」

 ローレルの突然の申し出だったが、考助も頷いた。

「そうですね。そうさせてもらいます。・・・コウヒとシルヴィアもそれでいい?」

「ええ。勿論ですわ」

 神殿長という立場にある者が、わざわざ別の部屋に誘ってまで聞きたいことがある、ということは、一般の者にも話を聞かれる可能性があるこの場所では、不都合なことがある、ということくらいは、考助にも当然予想できている。

 神殿長のその申し出は、周囲の者に宣伝する気のない考助たちにとっても渡りに船なので、その提案に乗ることにした。

「わかりました。では、一緒に来ていただくようにお願いします」

 ローレルはそう言って、先だって歩き出した。

 そして、考助たちも、その後に付いていくことになったのだった。

2014/5/24 誤字修正

2014/6/9 誤字訂正

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