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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 塔のあれこれ(その8)
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(6)逸脱した才能?

 管理層のくつろぎスペースの一角が、子供の声でにぎわっていた。

 休みの日を利用して、シルヴィアが子供二人を連れて管理層に来ているのだ。

 そのココロとルカが何をやっているかというと、考助が魔道具作成の合間に遊びで作ったパズルをやっているのだ。

「あー! また外れたー! どうしてルカは、そんなにすぐに分かるの?!」

「えーと、何でかな?」

 二人がやっているパズルは、所謂埋め込み式のパズルだ。

 考助が元いた世界では、同じ図形の物をはめるとぴったりと合わさる子供が遊ぶタイプのパズルでである。

 もっとも、考助はそのまま図形式のパズルを作ったわけではない。

 背景が魔法陣になっていて、その一部の文様の部分がくりぬかれてそこに正しい文様をはめ込むようになっている。

 いくつか空いている所に文様をはめ込んで確定のボタンを押すと、正しければ青色に光り、間違っていれば赤く光るようになっている。


 なぜこんな物を作ったのかと言うと、初めは考助自身の頭を柔らかくするために作ったのだ。

 そのために難しい物になる程、回答は一つと言うわけではなく複数あったりする。

 初めは一つの方向に囚われたりしないように自分用に作ったのだが、子供のおもちゃとして使えるのではないかと簡単な物を作ってみたのだ。

 ちなみに、コウヒとミツキが開発したゴーレム用の思考回路を利用して正誤の回答を出しているので、何気に高度な技術が使われていたりする。

 最初の簡単な物だと、はめ込むパズルに書かれているのが線だったり丸とかの図形だったりする。

 魔法陣の基礎の基礎で使われている図形が、そのパズルをはめることによって完成するようになっているのだ。

 初心者用に作ったパズルを見て何となく楽しい気分になった考助は、次々と魔法陣を学ぶためのパズルを作っていった。

 ただ、作ったのはいいのだが、興味の赴くままに作ったパズルだったので、シュレインに見せることもなかった。

 その結果、考助の研究室には使われることのないパズルたちが山積みになっていたのだ。

 それを知っていたシルヴィアが、管理層に来て暇を持て余していた二人に、遊び道具として引っ張り出して来たのだ。

 勿論、考助の許可を取った上で。

 すっかりそんな物を作ったこと自体を忘れていた考助だったのだが、シルヴィアに問われてようやく思い出して研究室から引っ張り出して来たというわけだ。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 最初は、初心者用のパズルをやっていた二人だったのだが、すぐにそれは卒業してしまった。

 シルヴィアの教育方針なのか、二人には魔法や聖法をしっかりと学んでいた。

 その中に、魔方陣の基礎の勉強もあったのである。

 初心者用の物は本当に簡単な物だったので、すぐに二人はクリアしてしまったというわけだ。

 といっても、ココロの快進撃はそこまでだった。

 中級者の初めあたりのパズルになると、今まで学んできた物から外れてしまったらしく間違いを出すようになってきたのだ。

 逆に、年下で学んでいる範囲が遅いはずのルカが、次々と正解を出していた。

 

 二人が楽しそうに遊んでいる最中に、二人に気付かれないように考助は視線をシルヴィアへと向けた。

 その視線を受けたシルヴィアは、そっと首を左右に振った。

 その表情には驚きが浮かんでいた。

「二人共、お父さん達は少し離れるからしばらくそれで遊んでいなさい」

「はーい」

「うん!」

 パズルに熱中している二人は、考助を見向きもせずに返事を返して来た。

 

 くつろぎスペースから一つ扉を隔てた部屋に来た考助は、すぐにシルヴィアに確認した。

「教えてないんだよね?」

「ええ。そもそもココロが解けない問題をルカが解けているのが不思議ですわ」

 中級者用のパズルを次々と解いているルカは、二人にとっても驚きだった。

 二人が今やっているパズルは、算数で言えば足し算を習ったばかりの子供が二桁掛ける一桁の掛け算を解いているようなレベルになる。

「確かに、今やっているのは基礎が出来ていれば出来なくはない、と思うけど・・・・・・」

 普通に考えれば、ココロの正解率もかなり高いのだが、ルカの正解率は驚異的だった。

「当てずっぽうという事は?」

「だとしたら、それはそれですごいけどね」

 初心者用の物ならともかくとして、中級者用のパズルは組み合わせがかなりの数になる。

 その中からしっかりと正解を見つけるというのは、かなりの確率になるのだ。

 現に、ココロは正解数が落ちている。

 あのパズルで答えを出せるという事は、答えを知っているかあるいは自分で考えて正解を当てはめている確率の方が高い。

 

「親ばかと言われても仕方ないけど・・・・・・ルカ、才能あるかもな」

「意外な才能・・・・・・というわけでもなさそうですね」

 考助が若干呆れたように言うと、シルヴィアが頷きかけてジッと考助を見た。

「いやいや。流石にそれは遺伝しないでしょう? 僕は関係ないよ?!」

 心の中で、タブン、と付け加えつつ考助は焦ったように手を振った。

「そうですか? そんなことは無いと思いますけれど?」

「うっ・・・・・・・」

 真面目な顔で問い詰めてくるシルヴィアに、考助は言葉に詰まってしまった。

 自分が現人神という存在である以上は、そういった可能性も考えられなくはない。

 

「・・・・・・女神様に確認してみるよ」

 考助がそう言うと、今度はシルヴィアが若干焦ったような表情になった。

「あ、いえ。そこまでするほどのことでも・・・・・・」

 シルヴィアにしてみれば、この子のこういう所は○○の血を引いているよねえ、というごく普通の夫婦の会話のつもりだったのだ。

 わざわざ神に確認するようなことでもない、と思ったのだが、何よりルカは現人神である考助の血を引いているのだ。

 そのせいで、余計な気苦労を背負うことになりそうであるなら、事前に知っておいた方が良いかもしれない。

 そう思いなおしたシルヴィアは、結局一旦言葉を止めて言い直した。

「そうですね。出来るのであれば、そうしてもらってもいい?」

「うん。まあ、考え過ぎだろうけどね」

 考え過ぎなら考え過ぎで、別に悪いことではない。

 自分の子供に関しては、アスラの筆頭とした神様達に頼りすぎている気がしなくもないが、そもそもアスラも考助の子達には注目している。

 早速、連絡を取ってみる考助なのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

『考え過ぎよ』

 アスラに問い合わせた時の第一声がこれだった。

『あ、やっぱりですか』

『勘違いしないでね? ルカは間違いなく貴方の才能を受け継いでいるわよ。でもその受け継ぎ方は特殊な物じゃなく、ごく普通の範囲内ってこと』

『え、えー?! ごく普通って、あれで?』

『別に珍しいことでもないでしょう? 子供の時に天才肌の才能を持っている子供なんて』

 神にしてみれば、天才肌の子供もごく普通の範囲に入るという事だろう。

 そう考えるとその範囲から逸脱している子供とはどういう存在なんだろう、と思わずそんなことを考助は考えてしまった。

『この世界で現人神になってしまうような存在の事よ』

 声には出さなかったのに、しっかりと考えていた答えがアスラから返って来た。

『うっ。なんか、ひどい』

『仕方ないじゃない? だって<ステータス>なんてこの世界に無かった物を創りだしてしまうのだから。私達にとって、逸脱しているというのはそういう事よ』

『そうですか。まあ、僕のことは置いておくとして、ルカは逸脱した存在ではないという事だね?』

『そういう事ね。もっとも、貴方に育てられたルカがどういうふうに成長するかは、誰にも分からないけれどね』

『それは、まあ、僕にも分からないね』

 開き直った考助の返事に、アスラは笑い声を返してくるのであった。

今回はルカに焦点を当てました。

ハクの追っかけだけをしているわけではないのですw

これで今いる子供たち全員に焦点が当たりました。

大人になったらただの人・・・・・・になるかは、神のみぞ知ると言った所です。

(一部の子達は、既に未来が語られているじゃないか、という突込みは無しでw)

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