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塔の管理をしてみよう  作者: 早秋
第2部 大氾濫
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(4)使天童子

 今回の大氾濫で管理者のチームが動くという情報は、すぐに参加者たちに流された。

 フローリアがあの場で伝えたことをそのまま話として流した形になる。

 当初は、攻撃を止められて不満が溜まっていた討伐チームだったが、その話で雰囲気が一変した。

 何しろ管理者チームというのは、このアマミヤの塔を攻略した者達がいるのだ。

 その者達がどのような強さがあるのか、この場に居る者で興味を持たない者はいないだろう。

 大氾濫という大量のモンスターを相手にしたときに、どの程度の力を見せることになるのか、誰もが注目をしていた。

 

「どう攻めるのでしょうか?」

 ヘルマンが去った司令部の天幕で、アベラルドはフローリアにそう聞いた。

 アマミヤの塔が攻略されてから既に十年以上たっているが、管理者メンバーが表に出て来たのは最初の頃しかない。

 塔を攻略しているくらいなので、当然実力を疑う者はいないのだが、その戦闘を目前で見たことがある者はほとんどいないのだ。

「さて・・・・・・それは私も分からんが、少なくとも我々が参考にできる戦いにはならないだろうな」

「そうなんですか?」

 首を傾げたアベラルドに、フローリアは驚いた。

 仮にも討伐軍のトップにいるアベラルドが読めていないとは思わなかったのだ。

「いや、普通に考えてリーダー種のすぐ傍に、転移門を設置して直接対決を挑むことくらいは読めるだろう?」

 フローリアがそう言うと、アベラルドは盲点を突かれたという表情になった。

 それを見たフローリアは、内心で頭を抱えた。


「いや、いくら管理側の情報が少ないとは言え、せめてそれくらいは予想してほしかったぞ?」

 転移門については、既に表に出ている情報だけでも予想が出来るはずだ。

 何しろ数に関しては既に塔の外にいくつも設置している実績があるのだ。

 塔の外に設置できるのに、塔の中に自由に設置できないと考える方が難しいはずである。

 フローリアに突っ込まれたアベラルドは、神妙な顔をして頭を下げた。

「仰る通りです。認識不足でした」

 フローリアはそれを見て、一つだけため息を吐いた。

「軍全体でそのような認識であれば、問題があるな」

「・・・・・・はい。早急に改善いたします」

「まあ、管理側と敵対することは無いと思うが、情報を分析することは重要だからな」

 女王であるフローリアから、管理者側との敵対の可能性をにおわせる言葉に、アベラルドはギョッとした表情になった。

 そんなことは、欠片も考えていなかったというような表情だ。


 言葉が無いアベラルドに、フローリアは再度苦笑する。

「そんな顔をするな。そもそも塔の管理者側を敵に回した時点で、こちらに勝ち目はないんだからあくまでも情報の精査をするだけだ」

 フローリアとて、ラゼクアマミヤが塔の管理者、即ち考助と敵対しようなどとは欠片も考えていない。

 だが、今は良いとして世代が進めばどうなるかは答えることが出来ないのだ。

 フローリアとしても、いつまでも直接政治に関わるつもりはない。

 ハイヒューマンになったことで、寿命が延びている自分がいつまでも関わると碌なことにならないと考えているのだ。

「・・・・・・はっ!!」

 フローリアの言葉に、一応の納得を見せたアベラルドは短く返事を返すのであった。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 第四十一層にある一角。

 森林地帯が広がるその場所に、今回の大氾濫の中心となっているリーダー種がいた。

 元になっている種族は、オーガ種の一つでオーガキングが元になっている。

 そもそもオーガキングは、オーガ達を率いて戦うことが出来る種なのだが、リーダー種となって他種族も率いることが出来るようになっていた。

 ちなみに、オーガキングが変化をしてリーダー種となっていることは、今までも多数確認されている。

 そのリーダー種の周りには、元の仲間たちなのだろうか、オーガ種が多数配置されている。

 他にも違う種はいるのだが、見るものが見ればそれぞれの種を率いていることがわかるような連携(?)を見せていた。

 あるいは、この現場を見ていれば、モンスター達がここまで高い連携を見せることに、驚いていただろう。

 これが、数千のモンスター達を率いることができるリーダー種の実力なのか、と。

 もっとも、彼らにはこの後災難としか言いようがない現実が待っていた。

 そんなことを知らずに、リーダー種は先に展開している人間たちの部隊をどのように排除するのかを考えているのであった。

 

 その様子を遥か高みから見つめる者がいた。

 しっかりと隠ぺいの魔法を使った上で、上空から確認をしていたのは、考助の指示を受けて確認に来ていたミツキである。

 モンスター達の様子を神力念話を使って、逐一報告しているのだ。

『そうね。今なら油断しきっていると思うわよ?』

『そう。じゃあ、こっちも準備できたからそろそろ設置するね。予定通りフォローよろしく』

『了解したわ』

 ミツキがそう返事をすると、予定されていた場所に転移門が一つ出現した。

 リーダー種も周りにいるモンスター達も、警戒しているのは天幕を張っている混成軍の方なので、転移門には全く気付いていない様子だった。

「いくら何でも、油断しすぎよね」

 ミツキはそう呟いたが、それに気付くモンスターは当然ながら一体もいなかったのである。

 

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 

 今回考助は、リーダー種の討伐にコウヒやミツキを充てるつもりはなかった。

 二人共戦闘には参加するのだが、あくまでも露払いをお願いしている。

 では、誰がリーダー種を倒すことをになっているかというと、元ゴブリンのソルだった。

 ソルは既に現在の種族が<使天童子>となっている。

 そこからの進化が起きていなかったので、リーダー種を倒すことで更なる進化をすることを期待したのである。

 指名されたソルは当初は緊張でガチガチになっていた。

 もっとも、それは戦闘に緊張しているというよりも、考助に指名されて気負いすぎていたのだが。

 ガチガチになっていたソルを見て、ミツキが「私が倒してもいいのよ」と一言いうと、意識を切り替えてすぐに立ち直っていたので、これなら大丈夫だろうと考助も安心していた。

 その後ミツキはその場を離れたので、どういう状態になったのかは見ていないのだが、考助が何も言ってこないのでそのまま計画通りにソルが討伐するのだろう。

 そんなことを考えながら、ミツキは転移門を見ていたのだが、予定通りのメンバーが転移門から現れて来た。

 それを確認したミツキも、すぐにリーダー種がいるモンスター達の所へと駆けつけるのであった。

 

 今回考助は、コウヒとミツキ、ソル以外にもナナたちの狼達にも出撃してもらっていた。

 彼らに頼んでいるのは、雑魚モンスターの露払いである。

 まあ、雑魚と言ってもリーダー種に近づくほどモンスターの強さも上がっているのだが、そこは個々の判断に任せている。

 ナナに指示は任せているのだが、一応死なないようにすることを第一の目標にしていた。

 問題はどこまでそれが守られるか、という事なのだが、折角の機会なのでそこも見極めるつもりでいた。

 

 転移門からは最初にソルとコウヒが現れた。

 彼らはすぐにリーダー種の元へと向かう。

 二人がリーダー種の元へ着くころには、上空にいたミツキもすぐ傍へと駆けつけていた。

 三人がリーダー種とその周りにいるモンスターを攻撃して混乱している間に、次は狼達の出番である。

 転移門から現れた彼らは、すぐに二千体以上いるモンスターの元へと向かうのであった。

ソル再び登場!

進化を期待してリーダー種討伐に抜擢された彼女ですが、必ずしも進化するわけではないです。

考助も進化したらいいなあ、程度で指名しています。

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