(10) 転移門の増設
本日2話更新の1話目になります
ナナとワンリの要望で、狼と狐を増やすことになったので、召喚陣を設置することにした。
第七層に<灰色狼召喚陣(10体)>を三つ、<ネロウサギ召喚陣>を一つ、<御神岩>を一つ設置する。
第八層には<妖狐召喚陣(10体)>を二つ、<ネロウサギ召喚陣>を一つ、<御神岩>を一つ設置した。
それぞれの<ネロウサギ召喚陣>は、念のため拠点から少し離れた場所へ設置している。
一応彼らが狩りを行っている範囲内には、入っているはずだ。
<御神岩>に関しては、新たに追加された神力を発生する設置物だ。
神力は一日100ptしか発生しないが、大きさもサッカーボールくらいなので、後々数多く置ければ、設置費用はすぐ回収できる・・・はず。
ついでに村から行ける動線の変更もしておいた。
第一層(外部閉鎖)~第五層(村予定)⇔第六層⇔第四十一層~第四十五層⇔第五十一層~第六十層⇔第七十一層⇔第七十二層⇔第六十一層~第七十層⇔第七層~第四十層⇔第四十六層~第五十層⇔第七十三層~第百層
※「~」は一層ごとに⇔(往復)で繋がっている。
村から初級層→中級層→初級/中級ダンジョン→上級層→中級/上級ダンジョンと行けるように設定した。
冒険者たちの階層攻略は、上位者でようやく中級に向かっているという感じなので、タイミング的にも丁度いいことになる。
ダンジョンの階層には、メニューから宝箱を配置できるようなので、いずれは配置したい。
中に入れるアイテムも生産できるようにしたいが、今はそこまで手が出ないので、後回しでいいだろう。
ここまで管理室で作業をして、ナナとワンリを引き連れて、それぞれの階層へ向かった。
他に付いてきてるのは、コウヒとシルヴィアである。
シルヴィアに関しては、後ほど村に行く予定なので、顔見せも兼ねている。
第七層と第八層に関しては、特に変わったことは無かった。
設置したそれぞれの召喚陣から狼と狐を召喚して名前を付けて(名前を考えるのが大変だった)、一応ネロウサギを討伐をする様子を見た。
流石に、余裕で倒せるというわけには行かないようだったが、倒せないわけでもなさそうだったので、召喚陣はそのまま残しておくことにした。
<御神岩>に関しては、見た目は普通の岩だった。
神力に関しても、注視してみれば、わずかに神力を発している気がする、といった程度であった。
それ以外は特に変わったこともなく、それぞれの階層にナナとワンリを置いていき、考助たち三人は第五層へ向かった。
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塔の転移門は、設置している場所同士で通信ができるようになっている。
そうでないと、それぞれの場所から転移させようとして、かち合ってしまう可能性があるからだ。
第五層の神殿へ繋がる転移門は、往来が激しいので通信は必須になっている。
ただし、通信で対応しているのは、外へつながる門で職員が対応している。
元々の階層を移動するための門は、使用している者がいれば色が変わるので、冒険者たちはそこで判断しているようだ。
現在の村では、常時約百二十名ほどが活動している。
ギルドの職員として動いている者が合わせて二十名程で、残りは冒険者、商人、建物を建てている職人達だ。
現在建っている最中の建物が、完成すればさらに安定して冒険者たちが増えていくだろう。
冒険者たちは、リュウセンだけでなくその周辺の村からも集まってきているようだった。
商売に関しては、特に出入りを制限しているわけではないが、ほとんどクラウンで独占している状況であった。
ちなみにクラウン名は、今のところ名付けずに見送っている。
いい名前が思いつかなかったのもあるし、クラウンという名前自体を広めるために、敢えて個別名を付けるのを止めたのだ。
考助たちは、転移門からすぐにワーヒドのいる執務室へ向かった。
ワーヒドは、現在はクラウンの代表者となって活動している。
といっても、経済的な活動はほとんどシュミットに任せっきりなので、ワーヒドが直接管轄しているのは、冒険者と職人に関わる部分だ。
考助たちが転移門を通ってきた時点で、職員がシュミットを呼びに行っているので、すぐに彼もやってくることになっている。
一度ワーヒドの執務室へ顔を出してから、すぐに応接室で二人を待つことにした。
しばらく待っていると、ワーヒドがシュミットと一緒に部屋に入ってきた。
わざわざシュミットが来るのを待ってから、一緒に部屋にやってきたのだ。
まずは初顔合わせのシルヴィアを紹介することにした。
シルヴィアに、ワーヒドとシュミットを紹介して、それぞれ名前を名乗って握手を交わした。
その上で考助がシルヴィアに、ワーヒドとシュミットのそれぞれの立場を紹介する。
「・・・ということは、シルヴィア殿はエリサミール神の巫女というわけですか」
考助の説明に、シュミットが頷いた。
「まあ、正確には、姫巫女予定って感じかな?」
「・・・なんと!?」
考助の追加の説明に、シュミットが驚きの表情を見せた。
姫巫女とは、直接神の意志を受けることが出来る存在として、一般にも知られている存在である。
しかもシルヴィアの交神相手は、三大神の一柱として名高いエリサミール神である。
シュミットが驚くのも当然である。
「いえ。私の力などまだまだですわ。降神できたと言っても一回のみ。しかも、コウスケさんの力を借りなければ、出来ないことでしたから」
「やれやれ・・・やはり、コウスケ殿に付いていくと決めたのは、間違いではありませんでしたな。日々、驚きの連続ですよ」
シュミットがそう言って、首を左右に振っている。
それを聞いたシルヴィアも深く頷いている。
なんとなく矛先がこちらに向きそうだと感じた考助は、少々強引に話題を変えることにした。
「それはともかく、ナンセンに転移門を設置するのは問題ないと思います。ただ、リュウセンと同じように、街の外側に設置することにした方がいいでしょう」
「かしこまりました。では、すぐに手配を取ります」
考助の言葉を受けてすぐに動こうとしたワーヒドを、考助は一旦止めた。
「あ、ちょっと待って。今度はナンセンだけでなく、せっかくだから北西と南東の街にも一緒に作ったほうがいいかも・・・名前なんだっけ?」
「ケネルセンとミクセンですね・・・って、一緒にですか? ほかにも門を増やすと・・・!?」
「あれ? 言ってませんでしたっけ?」
考助のあっさりとした返答に、シュミットは頭を抱えた。
確かにあの時は、一つしか増やさないとは言ってなかったと、ようやく思い当たったのだ。
「いえ・・・確かに増やすと言ってましたね・・・」
「ああ、よかった。・・・それで、せっかくなんでいっその事、一気に転移門を増やして、それぞれの街への依存度をできるだけ減らそうと思います」
考助の遠回しの言い方に、ワーヒドが何か引っかかる物があったのか、問いかけてきた。
「・・・ナンセンで何かありましたか?」
「まあ・・・ちょっと、ね」
特に隠すつもりもないので、ナンセンで起こった出来事を二人に話した。
「なるほど、そういうことですか・・・」
「確かにそういうことなら、リスクを分散するという意味で、一気に設置する意味があるでしょうね。しかし、全部の街が敵対してきたら意味がありませんが」
「そんなこと、あり得る?」
「・・・ほとんどないでしょうね。塔から得られる利益の方が大きいですから」
そもそも塔自体をどうにかできない限りは、街の力で物品の流通を止めることなど不可能であるとシュミットは考えている。
別に街の中まで入って取引する必要はないのだから。
門が設置している拠点は、張ってある強力な結界のおかげで、そこから攻め入ることはほぼ不可能といえる。そもそも軍隊と呼べるほどの大軍を送り込むことも不可能だ。
「まあ、今からそんな心配してもしょうがないか。とりあえず、頭の片隅に入れておくということで」
「そうですね」
考助の提案に、ワーヒドもシュミットも同意した。
「ところで、物品の流通に関しては、やはり以前お話し頂いたとおりになるのですかな?」
以前に、クラウンに所属するものは、転移門の使用は自由で、それ以外の者は制限を掛けると話していた。
特に商人(の商品)の移動に関しては、クラウンに属さない者は、一つの街とのやり取りのみを許可するということだった。
例えばリュウセンからやってきた商人は、リュウセン側にしか出ることが出来ないということだ。
冒険者も外から大量の品物を持って入ることは、できないように制限するということにする。
「そうですね。そもそも転移門自体が、出入りする者を個別で波紋を認識して設定しているので、制限を掛けること自体は特に問題ありませんから」
「現在も臨時で発行している通行証がありますから、特に問題はないでしょう。今後は通行証に波紋を登録する予定でしたから」
考助の説明に、ワーヒドも付け足した。
「制度を導入した時に説明が発生するくらい、ですか」
「そうですね。それに、そもそもクラウン登録さえしてしまえば、関係なくなりますしね」
クラウン登録さえすれば、そのクラウンカードで塔に自由に出入りできるようになる。
通行証の発行を待つ手間もなくなるのだ。
「クラウン結成の準備もほぼ完了しています。あとはカード次第です」
「ああ、そうか。後で様子を見てくるよ」
「お願いします」
クラウンに関しての細かい規定は、ほとんど決まっている。
あとは考助の決裁待ちなので、特に問題は起きないだろう。
その他にも今後の話を詰めていき、今回の会合(?)はそれで終了となり、考助たち三人は管理層へと戻って行ったのであった。
2話目の更新は20時になります
ちなみにこの話で第4章の10話になりましたが、予定通り(?)第4章はまだ続きます。
2014/5/24 誤字修正
2014/5/27 クラウン名に関して修正




